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Imager マニア

デジカメ / デジタルビデオカメラ / スマホ用の撮像素子(イメージセンサ/imager/CMOSセンサ)について、マニアな情報や私見を徒然なるままに述べるBlogです(^^;)

脅威の赤外感度 InviSageとは? ~IISW2017より

どこぞの会社のスマホは遂にフロントカメラがダブルで、なんとリアはトリプルに・・・
流石にこれが今後すぐにスタンダードになるとは思えませんが、しばらく後にこれが普通になった暁には、撮像素子メーカーはウハウハですね(^^;)

 今年6月のIISW2017paperが早くもオープンに

そしてクロノカム。
この会社、最近名前を聞き出す様になった、ある閾値以上の電荷が蓄積された画素信号だけ読み出すという方式(?←まだよく調べていないのでもしかしたら間違っているかもしれません)イメージセンサを売りにしている会社。
所定のフレームレートでいつも読みだすという通常の撮像素子に対して、低消費電力でデータ帯域を圧迫しないことが特徴らしいのですが、ストレートに言うと車載センサ狙いだと思われます(もちろん他用途も狙っているでしょうけれど・・・)
今回遂に製品を世にリリースする運びの様子
いずれ弊blogでもフィーチャーしてみたいと思っています。


 しかし今週は、IISW2017から。
こちらも以前から私が気になっていた新興(?)企業の、これまた通常とは一風変わった撮像素子を取り上げてみたいと思います。
その会社の名前はInviSage。
どこが一風変わっているかというのはこちらのpaperからざっと本当に簡単に。


上表は、リンク先のpaperから引っ張ってきた、実際に発表された主要な特性一覧です。

後で他の適当なセンサと比較してみたいと思っていますが、
私の感覚(?)からすると結論として、

感度  :良い
赤外感度(量子効率):超優良
飽和  :良い
暗電流 :very poor (^^;)
Darkノイズ:poor

という風に感じました。

 その他、今回は
画素ピッチ      :1.5um□
光学フォーマットサイズ:1/7.5インチ
画素数        :1280×960
使用プロセス     :130nmCMOSプロセス
1画素のトランジスタ数  :3 (select、SF、Reset)
そしてグローバルシャッターセンサという特徴が。

今回の発表では、具体的には屋外での赤外カメラ用途を考えている様です。

 ではこのセンサは何が通常の撮像素子と異なるかというと、以下introductionより。

・従来のCMOSウェハ上にスピンコートで量子ドット材料の薄い膜を載せる
・その量子ドット膜自体が、入射光を直接電子-正孔対へと変換
・その量子ドット膜に十分な電界を掛けておくと、電子と正孔が膜の上下の電極にそれぞれ別れて集積される

 つまり、信号読み出し回路は通常のCMOSイメージセンサと同様、シリコン上に作りこまれた回路を利用し、
通常のシリコンベースの撮像素子と大きく異なるのは、このInviSageのセンサにはフォトダイオードが無く、
その代わりの光電変換するために、”量子ドットの膜”とやらを用いている・・・
ということの様です。

冒頭の特性表の様な特徴ある特性が出てくるのは、この量子ドット膜(と一部その読み出し方法)のためということですね、きっと。

ちなみにグローバルシャッタなのは、恐らくこの方式だとどうしても画素内に別途膜で光電変換された電荷を一時保存しておくためのメモリが必要になるため、
それだったら最初からメモリが画素内にあるならグローバルシャッタでいいよね
という思想だと思います。
(もしくは言い方を変えると、ローリングシャッタ動作にしてもノイズが減ったりはしないから、じゃあグローバルシャッタでいいよね となったという見方もできますか)


赤外感度が超優良・・・と冒頭書きましたが、実際のこのセンサの量子効率の波長依存性が、上左図。
具体的には、940nm(←赤外)で40%以上とのこと。

これは数字的にはシリコンベースの撮像素子と比較すると恐らく驚異的な数字のはずで、
データは古いですが、以前の弊blogで掲載したPOINTGREYという会社の産業用カメラ搭載撮像素子数字では、
950nm波長での量子効率はAptina(←当時)のセンサの15%が最高の数字です。
同様に850nm波長でも32%が最高ですので、850nm波長の赤外の量子効率においてもこのInviSage発表センサが同等以上の特性を持っていることが、上左表から読み取れます。

上右写真は(なんかピンボケしてますが(^^;)、
 ”1/7.5インチセンサ小さいでしょ”(≒機器小型化に向いてるよ)
ということでしょうか。


↑共に3um画素ピッチ同士の、 左:従来CMOSイメージセンサ 右:InviSageの量子膜センサ
同等強度の940nm光源下での画像比較

”InviSageの量子膜センサの方が感度高いでしょ”
のアピール。
因みにmaxSN比としては、従来センサが40dBに対してInviSageの今回のセンサは46dBとのこと。
(6dBは丁度2倍SN比が異なる=良好ということ
←しかしこれはmaxSN比なので、恐らくダークノイズの悪い値はショットノイズに埋もれて、基本的には飽和電子数の大きさが表れている特性)


↑こちらは”本文中のアピール文通りに言えば”

同様に940nmの同一光源下において、
3um□画素ピッチでVGA(約30万画素)の従来センサ(左)
 と
1.5um□画素ピッチで100万がその量子膜センサ(右)
 とで、
”画素面積比に合わせて露光時間を調節した場合に”(≒つまりは量子膜センサの方がトータルの光量は多い状況)で、
”量子膜センサの方が従来センサに対して解像感が良いでしょ”
の主張・・・

ですが、いやいや、そりゃ画素数違うセンサ同士で比較して”解像度が高いor低い”とか比較してはダメですよね?と思うのは私だけでしょうか?(^^;)



↑これは若干図だけではわかりにくいのですが、
最終的には、”弊社のセンサの方が従来センサに対して、赤外カメラで照射する赤外レーザーのpowerが小さくて済みますよ”のアピール
 オレンジライン:invisage
 青ライン   :従来CMOSセンサ
  縦軸はSN比
便宜上SN比が5以上(つまりセンサの出すノイズよりも信号量が5倍多ければ)”使える絵になる”前提で、SN比が5以上になるのに必要なレーザーパワー(横軸)を算出したもの

更にラインが2本ずつあるのは、屋内と屋外のもので、
屋外の方が環境光の中に外乱=ノイズとなる赤外光が多いため、双方のセンサとも屋外の方が同じレーザーパワーでもSNが悪くなっているという図の様です。


残り、最初の表の以下特性についての比較ですが、
感度   :16000e-/lux/sec
飽和電子数:12000e- (電子)
暗電流  :600e-/pix/sec
Darkノイズ:19e- (電子)

うまいこと、すべての特性が同時比較可能なので、2年前のIISW2015のONSemiconductor製センサとの比較にしますが、
上記リンク先のセンサは画素ピッチが1.1um□なので、飽和と感度に関しては不利になりますので、”それら二つの値は画素面積分(約1.86倍)分補正したとしても”
以下の値となります。

ONSemi製、1.1um□画素ピッチセンサ(感度と飽和は画素ピッチ1.5umに単純面積補正済み)
感度   :6882 e-/lux/sec
飽和電子数:7626 e- (電子)
暗電流  :5.3 e-/pix/sec @60℃ (InviSageセンサの暗電流測定温度は不明)
Darkノイズ:3.7 e- (電子)

 2年前のセンサとの比較とはいえ、
感度と飽和電子数は、赤外量子効率と共に画素ピッチの割にはとても良い値を叩きだしていることがわかります。
(私の感覚では、このOnsemiセンサの特性が特にpoorということも無いと思います)
半面、InviSageセンサの暗電流とDarkノイズの値は、poorだなと(^^;)

ただ、暗電流の値に関しては、このセンサが60fpsというフレームレートを示していて、具体的には動画用センサを想定している(更に具体的には監視カメラ用?)と思われるため、
その様なフレームレートでは暗電流の値は気にならない可能性があります(まあ桁が2つ違うので無視はできないかもしれませんが・・・)
残るは公表されている値でネガティブなのはDarkノイズのみ・・・
他のアドバンテージと天秤に掛けて、この公表された特性に嘘が無ければ、用途によっては採用を検討するカメラメーカーがありそうな気もします。お値段という超重要ファクターは不明なので考慮できていませんが・・・(^^;)
(↑※一眼レフとかコンパクトデジカメとかスマホの話では無く、監視カメラ用途や産業用カメラ向けとしてという意味です)



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black silicon

IRに関してはこんなものがあります。

http://image-sensors-world.blogspot.jp/2015/09/black-silicon-presentation.html

Re:black silicon

>bbbukさん

初めまして。imagerマニアです。

>IRに関してはこんなものがあります。

ブラックシリコンですか・・・
リンク先の図を信じれば、950nm波長光において、量子効率70%程度といったところでしょうか。
脅威的ですね。

https://www.ach2-tech.com/blank-8
↑実際に採用しているカメラ会社がある様なので有効なのでしょうが、
どうも頂いたリンク先のSonyCCDセンサとの比較条件等が不明で、本当にフェアに見て良い比較なのか?というのと、
吸収率が波長2.5um近くまでずっと9割越え・・・
↑これってシリコンの物性を超越している様に思うのは、私の”abroptance”(吸収率?)の理解が誤っているからなのでしょうか?
(≒シリコンが吸収できる電磁波波長ってせいぜい1300nm程度までと思っているのは誤りでしょうか?)


というところから、今一つ個人的には疑念を抱いてしまっていて・・・(^^;)

資料からすれば、暗電流及びノイズもInVisage超え (←良い方向に)
他にデメリットが無ければ、InVisageセンサは用無しですね(^^;)
その割にはあまりブラックシリコンって話題に登らないのも何でなのか気になります。
何か学会とかで発表した実績とか無いのでしょうか?そういった資料が見てみたいです。

  • imagerマニア
  • 2017/08/16(Wed.)

解像度

ここでの解像度はいわゆるTV本などのような画面全体で定義されるものではなく、lp/pixelのような単位で表される画素あたりの性能かと思います。SFRやMTFと書いたほうが適切だとは思います。

回折により画素の小さなInVisageの方が不利なのに、シリコンよりも高い吸収係数のお陰で、画素と画素の間のクロストークが極めて少ないため、940nmなどの近赤外光を使うセンシング用途では従来のイメージセンサよりもMTFが良いと言うのがここでのメッセージではないかと思います。
比較対象は入手しやすいけど設計が少し古い某社のGSなので各種クロストークが悪いんだろうなぁとは思います。

Re:解像度

>Anonymousさん

以前一度コメント頂いた方と同じ方でしょうか?
コメントありがとうございます。

>lp/pixelのような単位で表される画素あたりの性能かと思います。
>
>回折により画素の小さなInVisageの方が不利なのに、シリコンよりも高い吸収係数のお陰で、画素と画素の間のクロストークが極めて少ないため、940nmなどの近赤外光を使うセンシング用途では従来のイメージセンサよりもMTFが良いと言うのがここでのメッセージではないかと思います。

そうでしたか。
読み違えておりました。
ご教示ありがとうございます。


>比較対象は入手しやすいけど設計が少し古い某社のGSなので各種クロストークが悪いんだろうなぁとは思います。

純粋に「どっちの絵が綺麗ですか?」と問われれば、迷わずInVisageの方と答えるだろうほど差があるのはわかるので、
やはり疑念を抱く必要が無い様に(画素ピッチの方を揃えて)同じくらいの画素数のセンサを比較対象に持ち出して欲しいな~というのが素直な感想です。
学会に発表するならそのくらいの労力は掛けてもいいような気がするのですが・・・(^^;)
それともやっぱり画素数大きめのものを比較対象にするの方が適切なのでしょうか、今回の場合・・・?

  • imagerマニア
  • 2017/08/16(Wed.)

無題

すいません。ごあいさつがまだでした。
はじめまして。
以前から、参考にさせていただいておりました。
今回、NIRの話題ということで、コメントさせていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。
先ほどのセンサは、おそらく、このカメラに使われているセンサと思います。(Artray XQE130)
http://www.artray.co.jp/download/catlog/130XQE-WOM.pdf
性能はいいとは思いますが、あまり盛り上がっていませんね。なにか理由がありそうです。学会資料は見つけられませんでした...

無題

比較対象のGSセンサーって、おそらく現O(元Mであり、A)のヤツだとすると、設計が10年以上昔のセンサーなので、比較するのはどうかな?という気もします。(それよりSのGSと比較すりゃ良いのに。)

あと、Chronocamはいろんな記事で新原理のイメージセンサーと書かれているようですが、その原理そのものは古いので、「新原理」とは言い切れないことと、車市場は実績のあるものを優先的に使うのが常なので、車市場向けで世に出るとしたら今から10年は先の話だろうと思います。
(人柱でどっかが手を出したら別ですが、自動運転市場を狙っているのであれば、誰も手を出さないかと。)

Re:無題

>みさおさん

初めまして。imagerマニアです。
自分が奇妙なハンドルネーム?にしているのに何なのですが、やっぱり(本名かどうかはともかく)普通の日本人的なお名前の方を呼ぶと違和感無くて落ち着きますね(^^;)
コメントありがとうございます。


>比較対象のGSセンサーって、おそらく現O(元Mであり、A)のヤツだとすると、設計が10年以上昔のセンサーなので、

 比較対象のセンサはそんな古いものだったんですね。

>比較するのはどうかな?という気もします。(それよりSのGSと比較すりゃ良いのに。)

 少しでも自社センサの良さをアピールするためにそこはあえて・・・(^^;)


>車市場は実績のあるものを優先的に使うのが常なので、車市場向けで世に出るとしたら今から10年は先の話だろうと思います。
>(人柱でどっかが手を出したら別ですが、自動運転市場を狙っているのであれば、誰も手を出さないかと。)

↑個人的に興味深い話です。
車会社が実績のあるものしか採用しないという話はよく耳にするのですが、そこまでなんですか?
なんとなく感覚的に、そうは言っても3年もあればどうにかなる時はどうにかなるものかと思っていました。
何をもって”実績”と呼ぶのか曖昧なところがありますが、10年掛かるとすると、”今ADASに採用されているセンサも相当古いもの”(≒最新のセンサに対して性能の劣るもの?)となってしまいそうな気がしますが・・・

 私の知る限り、まだ車載センサに積層型センサが採用されたという話は聞かないので、
積層型センサがいつ車載センサに初採用されるのかウォッチングしておこうと思います。
ちなみに積層型センサが初量産されたのは、ソニーが確か2013年くらいだったと思います。目安として。

 クロノカムに関しては、性能的に未知数な部分あるんじゃないかと思いますので、そもそも実績以前の段階で採用会社が今後も無いという可能性も確かにあるとは思います。

 ところで全然別件ですが、上でbbbukさんが教えてくださったブラックシリコンについて何か感触をお持ちであったりしませんでしょうか?
使える or 使えない、今後の伸びしろ? みたいなところを感触だけで良いので知りたいと思っているのですが・・・

  • imagerマニア
  • 2017/08/17(Thu.)

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