2週更新サボってしまいました(^^;)
NHK技研公開がまだ途中ですが、今週はタイトルの方を。
IISW2017のプログラムが発表されたことは既にエントリ済みですが、
ワークショップも無事終了した様子で、恐らく8 or 9月に発表Paperが無料公開されるはずです。
それに先立ち、(毎回のことですが)
TechInsights(旧チップワークス)が先行して発表内容をblogで公開しています。
今回は上記blogから。
二本立ての様子で、リンク先は1本目ですが、いわゆる”像面位相差AFの進化の歴史”という様な内容になっているようです。
ちなみに、過去のIISWでもTechInsightsはコンシューマーカメラ(スマホ含)の時々の進化を解析して報告しており、それぞれ主に以下の様な内容を報告していました。
2015年:
(光学混色を抑えるために)カラーフィルタを遮光層間に埋める
裏面照射型でも像面位相差AF & 非ベイヤ配列センサへ
これからは
積層型CMOSイメージセンサ
2013年:
各社の画素断面構造 主に低背化にフィーチャー
VTG (Vertical Transfer Gate)
像面位相差AF
積層型センサ
では以下より、今年のIISWでのTechinsightsの発表が元になっているblogの内容へ
導入部の章が、近年のコンシューマーカメラの様子を良く表している様に感じましたので、全意訳で。
()内は私の補足や感想などです。
[2回]
Ⅰ.Introcuction
CMOSイメージセンサ画素のスケーリング(≒画素微細化)はほぼ終わりつつある
むしろいくつかのスマホカメラの開発チームは、飽和の増加を求めて画素を大きくしている
(iPhoneやGalaxyのことですね)
それにも関わらず(?)、イメージセンサの技術開発のペースは増している様に見える
現在チップ積層の時代が進行中で、製造やシステムのパーティショニングの柔軟性を提供している
(↑topとBottomのウェハの製造Fabや使用プロセスを別にしたり、topとbottomでセンサ部と信号処理部を分けたりしていることを指していると思われます)
最新のスマホカメラチップでは、画素ピッチは1.0umまで小さくなり、23Mpixまで画素数は増えている。Dualカメラはポピュラーになり、中にはフロントとリアカメラ共にDualカメラというものも出てきている。
PDAF(Phase Detection AF=像面位相差AF)システムは、現在コントラストAF、位相差AF、レーザーアシストレンジング(ToFによる補助AF)と別のものとして、そして他と相補的にAF機能を補うものとして採用されている。
チップレベルにおいては、最近の積層イメージングチップにより実現した性能アップのために、DBI(Direct Bond Interconnect)とDTI(Deep Trench Isolation)の進化が促されている。
いや~「客観的事実に近いことを書いてるからそんなの当たり前だろ?」と言われてしまいそうですが(^^;)、
上記導入部分(の特に、画素ピッチの微細化が止まっているところとイメージセンサの技術開発ペースがアップしている様に感じているところ)は、私も全く同感です。
以下からは箇条書き等で抜粋 (一部私の解釈というか補足も含みます)
Ⅱ.PDAF
・従来はコントラストAFだけだったが、現在ではコントラストAF、通常の位相差AF、ToFを用いたレーザーAFと共に、PDAFも上記を補い、補われながらAFとして採用されている
・PDAFは、従来の半導体製造プロセスを大きく変更することなく(ある意味メタルで画素を遮光するだけで?)作れるのが幸運だった
・PDAFは、大きくはペア画素の
片側半分が遮光されているタイプ
画素によって遮光されるサイズが異なる(≒変化させている)タイプ
の2種がある
・初期のPDAF画素は
有効画素領域の中央の狭い領域
もしくは
周期的にとある行にのみ一直線
に配置されているだけだったが、今日では有効画素領域の90%以上の領域に配置されるようになってきている
PDAFの概要を示す段落の様ですが、
冒頭の複数のAFが併用されるハイブリッドAFのくだりと、最後のPDAF画素の配置領域が有効画素の90%を超える領域に配置されるようになってきているところ以外は、
二年前のチップワークスの報告にも既にあった内容ですね。
以下の章からは、本格的なPDAFの歴史の話になるようです。
A.Masked PDAF in Front-Illuminated CCDs
・PDAFセンサ搭載カメラが市場に初投入されたのは2010年7月
・富士フイルムのFinePix Z800EXRで、AF速度は0.158秒を謳っていた
・上記センサは東芝製の表面照射型CCD
・PDAFのタイプは、32画素の内の2画素の、画素の半分がメタルで覆われるタイプ
・中央の7%に満たない領域にしか配置されていなかった
世界初の像面位相差AF搭載センサが出てきたのが、上記富士フイルムのカメラであったことは知っていたのですが、、それが東芝製CCDだと言うのは今回初めて私は知りました。
しかし、CCDでわざわざ”Front-illuminated”と表現するのも初めて見る様な気がするのですが、
恐らくCCDに”裏面照射型”というものは存在しないし、存在させる効果もそれほど無い(少なくともメタルが複数層存在するCMOSイメージャーほどには無い)と思うのですが、
現在業界では”FI CCD”という風に表現するのが普通なのでしょうか?
それとも私が知らないだけで、現在では裏面照射型CCDというものが流通したりしているのでしょうか?
B. Masked PDAF in Front-Illuminated CMOS
・画素の半分がメタルで覆われたPDAF画素で最初に注目されたのは、NikonV1搭載センサで、2011年発表
・Aptina製センサで、PDAF画素は、有効画素領域に均等に9行分配置されていた
・PDAF画素は、すべてGreen画素に配置されており、Cuのメタル一層で遮光されていた
・Variable開口遮光が初めて出現するのは、2012年のキヤノンのEOS650D
・このセンサで初めて見られたのは、PDAF画素のカラーフィルタがclear(透明?)に置き換えられていたこと
・クリアPDAF画素は、
元々がREDかBlueであった画素位置に配置
Al(アルミ)のメタル2層によって、規則的な垂直方向の開口が設けられていた
↑これは恐らくクリア画素の開口率を抑制するため
・少なくとも3種の異なるALメタル1層での水平方向の開口が見られ、少なくとも計6種のそれらのPDAF画素ペアの組み合わせが存在した
・PDAF画素配置は、有効画素領域中に”+”の字型の領域で配置され、それは全体の7%弱の領域に相当した
・表面照射型CMOSイメージセンサでのPDAF画素搭載センサは、以下の会社が量産した実績がある
Aptina (ON Semiconductor)
Canon
Panasonic
Samsung
Sony
・それらは基本はみなback-end-of-line (BEOL)(≒配線メタル層)でPDAF画素の遮光を作っていたが、つい最近、オリンパスのOM-D E-M1 Mark2搭載のSony製センサにおいて、
フォトダイオード領域直上にW(タングステン)によって遮光されている例が見られた
最後の太文字青字の発表内容は、恐らくTechInsightsの有料版でしかレポートされていない内容ではないかと思います。
つまり無料で手に入る公開情報としては、今回のIISWでのTechInsightsの発表が初めてではないかと思います。
この後出てくる裏面照射型センサではタングステン遮光は割と当たり前に現在使われているのではないかと思いますが、
表面照射型センサにおいては、通常配線層で用いられるのはALかCu(≒通常のCMOSプロセスで用いられる配線層)であるので、それをPDAF画素の遮光層としても転用していたのが、
最後のソニーセンサのタングステン遮光というのは、
本来光線を遮るのはPD直上の方が理想的(PDから距離が離れたメタル層で遮光しても、斜め光線等で想定外の光線を受光してしまったりするので)だということから、
コストよりもPDAF性能優先の思想で、通常最近の微細CMOSプロセス(の配線層)には存在しない(Viaは別)タングステンを導入したということだと思われます。
TechInsightsのオリジナルのblogはまだ続きますが、今週はこの辺で(^^;)
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