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Imager マニア

デジカメ / デジタルビデオカメラ / スマホ用の撮像素子(イメージセンサ/imager/CMOSセンサ)について、マニアな情報や私見を徒然なるままに述べるBlogです(^^;)

Single Exposure で116dBのHDR ~IISW2017より 電子だけでなく正孔も活用!? その双方とも収集し、そして同じ回路で信号を読み出すアイデアに感心しました

  Nikon D850が発表

来週以降にイメージセンサの外観を並べたいので、センサスペックの内容もまたその時に。
掲示板(?)にコメントされている内容を読むと、そのカメラスペックも去ることながら、お値段が一番のサプライズだったという声が一番多かった印象が。

確かに。
ひと昔前ならそんな感想にならなかったんじゃないかと個人的に思うのですが、最近のデジカメ価格高騰の中においてであれば、バーゲンプライスというのも頷けます。

昨日今日、ニコンファンミーティングが行われていて、”行こうかな”と思ったのですが、
一番のお目当ての”開発者トークショー”的なものが、私が動き出そうとした時には朝一で既に終わってしまっていて、一番の行く動機が無くなってしまったので、結局行きませんでしたf(^^;)



 さて、今回も前回前々回に引き続きIISW2017よりハイダイナミックレンジ(HDR)ネタを。
STMicroelectronicsの116dBのHDRセンサ

↑諸特性一覧
前回のbrillnicsのImagerが、Single Exposure (一回露光?)で87dB
 「ということは、今回のセンサの方が断然特性上じゃない?」
と思われると思うのですが、
そこは公平に比べられない状況でありまして、前回brillnics社のセンサは既に製品化済みのもの。
こちらのSTMicroelectronics社のものは、まだ開発中のものです。
なので今回は画素数も
 ◆画素数:600×650=39万画素
と、明らかに試作品という様相を呈しています。

しかし、個人的にはそのHDR化の方法が、私は見たこと無い方法で、”最近のイメージセンサプロセスの進化に則したアイデアで新鮮だなぁ”と感心させてもらったので取り上げたいと思います。
(前回のbrillnicsのセンサは、blog中にも書きましたが、そのHDR化の方式自体は以前からあるものだったと認識しています)


 では冒頭の表に戻って主要なところと、その他の情報を。
◆画素ピッチ:3.2um□
◆裏面照射型センサ
ダイナミックレンジ:116dB
◆コンバージョンゲイン
 電子:163 uV/e-
 正孔:1.33 uV/h+
◆飽和
 電子:33000e-
 正孔:75万h+
◆ノイズ (読み出しノイズ相当のものと思われる) :1.2e-
◆暗電流
 電子側:45 e-/Sec
 正孔側:2300 h+/Sec


 画素ピッチは、奇しくも前回のbrillnics社のセンサ(3.0um□)と同程度。
なので(?)STMicroelectronicsのこのセンサも電子側の飽和は3.3万電子と大まかに言って同程度。
しかし、正孔の飽和量が物凄くて75万ホール(゜Д゜)
ノイズの方も前回brillnics社のセンサとやはり同程度で1.2e-と優秀。
よって、それらの比で決まるダイナミックレンジが116dBと凄いことになっています。

しかし、正孔側の暗電流が極めて大きく、2300ホール/秒。
これは彼らも気にしていて、
”今後プロセスの改善等で直していって、その他の改善も含めてゆくゆくは120dBのダイナミックレンジの達成は見えている”というニュアンスで締めくくっています。

 STMicroelectronicsは、スマホ用途などの通常の(?)イメージセンサからは手を引いているはずですが、最近注目される(?)ToFセンサでは絶好調
そして、このセンサの狙う120dBというダイナミックレンジの数字は、巷で聞くことがある車載用センサに要求されるダイナミックレンジの数字の様な気がします。
Single Exposureにこだわっているあたりを含めて考えても、
つまり、STMicroelectronics社は車載用のImagerをこのセンサ(など)で狙っているのではないかなと思いました。
(Paper本文中にもSingleExposureにこだわる理由を、フリッカーと動体歪みへの耐性と記しており、これは車載用イメージャーには需要が高い仕様の様に感じますし・・・)



 さて、上記までは、このSTMicroelectronics社のSingle Exposure でのHDRなどの特性値など。
で、ここからが、その数字を実現するための、そして私がかっこいいアイデアだなと感心した方法などです。


↑画素部の断面イメージ図

裏面照射型センサで、光は図の下側から入射してきます。
右上の方の薄いオレンジのN+がFD部(このPaperでは”Sense Node”)
光電変換された電子は、通常imager通り、中央丈夫の黄色い”N”に収集されます。
で、タイトル通り、このセンサの特徴は、電子だけでなく正孔も集めてしまおうというところなのですが、
その正孔を収集する場所はどこかというと、(露光期間中電気的にフローティングになる)PWELです。
(通常イメージセンサは、このPWELがGND等に電位固定されています。
従って、光入射し、光子が光電変換されて電子-正孔対になるのですが、
通常はその電子のみを収集し、生成した他方正孔の方はPWELのGND端子に流れて行ってしまって電気信号としては有効には活用されていません)


上記を実現するために、まずこのセンサの構造上のポイントは、

 ①シリコン中貫通しているDTI (Deep Trench Isolation:図中赤の縦に走っているところ)で各画素のWELが(電気的にも)完全に独立している 


 ②赤のCDTIというところは、中身はpolyシリコンが埋められていて、かつ負電圧が付与されている(≒電位が取られている=絶縁物質やフローティング状態では無い)

 ③中央最上部のピンク色のMetal1が、WELと容量カップリングする様に配置されている

ということです。
 
上記3点を是非記憶しておいてください。

ちなみに、①と②は、表面照射型センサでも可能ですが、③は基本的には表面照射型センサでは無理な施策ですね(←光線を遮ってしまうので。無理矢理レイアウトを工夫すればどうにかなるのかもしれませんが・・・)
また、②で負電圧を付与している理由の一つは、STIとWELのシリコン界面での暗電流発生を抑制するためだそうです。←今回HDRとはこれは無関係なので、これで暗電流が減る理由は割愛します


↑画素等価回路図

基本的に、ピンクとオレンジの枠外のところは、通常の4トランジスタ画素とほぼ同様です。
異なるのは、”SWRST”というスイッチが一つ追加されているだけ。
それに左下のRST_PSUBというスイッチの合わせて二つが通常センサに対して余分に付加されただけの構成です。
このRST_PSUBスイッチというのが、正孔を収集するPWELを露光期間中に電気的にフローティングにするためのスイッチです(≒初期値にリセットするためのスイッチという言い方の方が適切でしょうか)
容量C1とC2は、それぞれ寄生容量で、画素に容量素子をわざわざ追加で配置したりしていません(≒基本的に余分なスペースを使っていません)

 ちなみに上図オレンジ枠内の”Hnode”と書かれたところが、画素断面図でのWELになります。
C1が、上記②の電位が取られたCDTIとWELとの間の容量
C2が、上記③のMetal1とWELとの間の寄生容量で、
本paper中に画素部の平面レイアウトやその記載はありませんが、等価回路図からすると、Metal1が等価回路図のRSTとSWRSTスイッチの間のノードと電気的に接続されているものと思われます。


この図の中に書かれているトランジスタは全てnMOSトランジスタ
つまり、”正孔を集めてHDR”というアイデアを実現するための重要な点として、画素はnMOSだけで構成され、pMOSは使われていないということです。

 通常、電子も正孔も読み出そうとすると、凡人が何も工夫しないと、
・電子を読み出すためにnMOSトランジスタで構成された画素回路
・正孔を読み出すために、PMOSトランジスタで構成された画素回路
 の二つを、1画素に具備させなければならないのではと思います。
しかし、それではトランジスタ数も増えるし、何よりn/pトランジスタを配置するためにpWEL/nWELもそれぞれ配置しなければならず、3.2umなどという画素ピッチの中にはとても収まりません。


 では、なぜ正孔も電子と同じ画素回路で読み出せるのかというと・・・

↑画素回路駆動タイミング(下側)と各ノードの電位遷移状況(上側)
※一番上の緑線”SN”は、SenseNodeの略と思われ、いわゆるFDノード=最終信号値の遷移

動作の概略としては、PD/FDリセットを済ませ蓄積開始
この蓄積開始時には、PSUBはフローティングになります。そしてこのPSUBには正孔が蓄積されていき、PSUB電位も徐々に上昇していきます
蓄積終了後
①まず普通に電子をPDから転送して読み出す
②SWRSTとRSTをONしてFDノードの電子で遷移していた電位をリセット。その後SWRSTのみオフし、FDノードはフローティングに
③その後、RST_PSUBをオンして、PSUBを0Vにリセット
 その際PSUB電位が溜まっていた正孔電位分振り下がる
④C2とFDノードがカップリングしているため、容量結合でFDノードが正孔電位に応じて振り下がる
⑤その正孔に応じた信号をまた読み出す

※RSTスイッチの動作については図に示されていないため、”こうでなければうまく信号読み出し出来ないはず”という私の推測で記載しています


 そうなのです!(どうなのです?f^^;)
何等かの方法で、電子と正孔を同時に収集できたとしても、
そして何等かの方法で電子と正孔を双方別々にSenseNodeに転送できたとしても、
電子と正孔では電荷の正負が異なるため、電圧振幅の正負が真逆になってしまいます。
すると、どうしても動作レンジ的に同じ回路では読み出すことが難しくなってしまってできないはずです(←凄く電源電圧が高いとか、SenseNodeのリセット電圧値を電子と正孔の時で変えるとかすれば可能かもしれませんが・・・)

それを、このセンサでは、
 1) PWELをフローティングにし、DTIをpolyシリコンで埋めて電位を取り、それらの間で形成される容量に正孔を蓄積し
 2) (上記③と④の通り)PWELとFDノードメタルの間の寄生容量C2を使って、PWELに貯まった正孔電位分(を容量カップリングによって)FDノードを”振り下げることによって”

通常画素と大きく変わらない画素構造と回路によって、電子と正孔の蓄積と読み出しを実現しているのです。
意味通じたでしょうか??f(^^;)

※ちなみにFDノードを振り下げる方向は、PDからFDノードに電子が転送されてきた際の動きと同じ方向になります

※ちなみに、正孔読み出し時にRST_PSUBスイッチをオフする際、PWELの正孔信号?にKTCノイズが乗ってそれがCDS出来ないのですが、
C1容量が75fFあり、ラフにまとめると(^^;)”問題無いノイズ量だ”という風に言っています
(本当に問題無いのかどうか、私にはわかりません)

※ちなみに正孔の飽和信号75万ホールは尋常な量では無いため、もしC2容量を大きくし過ぎてしまうと、FDノードの振幅値が大きくなりすぎて飽和信号を読み出せなくなるのですが、
逆に言うとC2の容量を調節すれば振幅値を制御可能というのもこの方式のメリットだと主張されています



 私が感銘を受けた(?)アイデアは上記までで、かつここまでで力尽きてしまったのでf(^^;)、後の評価結果は流しますが、


↑横軸:光量、縦軸:読み出し電子数 or 正孔数の光電変換特性
実はこのセンサの読み出し方法で、電子を先に読み出すか、正孔を先に読み出すかで、2種類検討されており、そのため上図では電子と正孔で2種ずつ計4本のプロットあり。
※左縦軸と右縦軸のオーダーが一桁(20倍)異なることに注意してください
この図の縦軸の書き方が正しいかはともかく、端的に言って電子の方が感度が高く、正孔の方が感度が低くなってます ←ホールの方は例の容量カップリングで間接的に読みだしているため
↑冒頭の表で、電子に対して正孔のコンバージョンゲインが2桁落ちだったのはこのためです
最終的には電子を先、ホールを後に読み出しすることにしています。
しかし、その際、電子側のリニアリティが3%程度狂うと。
しかし「3%程度なら許容されるでしょ」というのがSTMicroelectronics社のスタンスに読み取れます。
フローティングのPSUBで、正孔が蓄積されてPSUB電位も上昇する中で、フォトダイオードに貯める電子信号ってなんかおかしなことにならないのでしょうか?
という疑問が出てくるのですが、上図を見ると大きな問題は無い様子
STMicroelectronicsはその点について、C1の容量が大きいから、正孔が溜まっても、さほどPSUBの電位は動かないから、大きな問題は出ないという主張をしています。



↑縦軸Logに変更し、電子先読み/正孔後読みのみのプロットに
「ほら、電子と正孔でいい感じに線が重なるから、これだったらこれらの信号でHDR合成しても問題起きないでしょ」
という主張
果たしてこのセンサはモノになるのか?
paperの感じだと、STMicroelectronicsは本気なじゃないかと個人的には思いました。
(いや、「みんな誰だって本気でしょ」という突っ込みもあるかもしれませんが、研究所とかに寄っていけば寄っていくほど、”自分の研究テーマがつぶされないためにとか予算を確保するために発表件数を稼がなければならない”という立場の方もいらっしゃる世の中だと思うので^^;、やってるご本人は本気かもしれませんが、中には実現可能性がかなり厳しいものも含まれることはあるのかなと^^;)

なんか色々実際には問題出そうな気がしますが、STMicroelectronicsは最近上り調子な気がしますのでうまくいかせちゃうんでしょうか
とにかく個人的にはアイデアに大変感心しました(^^)

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