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Imager マニア

デジカメ / デジタルビデオカメラ / スマホ用の撮像素子(イメージセンサ/imager/CMOSセンサ)について、マニアな情報や私見を徒然なるままに述べるBlogです(^^;)

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iPhone7搭載フロントカメラ側近接センサ=ToFセンサについて ~チップワークス的にはSTMicroelectronics製で間違い無し

一週blog更新をお休みすると、その間に書きたいネタが頻出するような気がするのは気のせいでしょうか(^^;)

 ・日立がレンズレスで撮像可能なフィルム?と画処理の開発
  (デジカメライフさんに、わかりやすい説明動画がリンクされています)
  ↑なんとなく映っている動画を見る限りは、すぐに現在の一眼レフやミラーレスカメラを置き換えることはなさそうに見えますが・・・まあこういう画処理系の技術進歩はデジタルの分野なので侮れませんかね(^^;)

 ・来年二月のISSCCの発表プログラムが一部発表
  撮像素子関連の日本勢の好調は持続している様子
  ソニー / パナソニック / キヤノン / 静岡大学 と、お馴染みの(?)顔ぶれが並んでいます。

 ソニーはこれで'16年6月のVLSIシンポジウム12月のIEDM、そして'17年2月のISSCCと、三大国際学会(?)でイメージセンサ件を連続発表することになりますね。
パナソニックも、タワージャズセミコンダクターをパナソニックにカウントすれば、ソニー同様に3連続。
 これはいずれ全プログラムが発表され次第、別エントリとして取り上げたいと思います。

 ・CMOSISが8K30pのフルサイズ(より縦が大きい)かつグローバルシャッタセンサ発表
  これは正直びっくり。
  多画素とグローバルシャッターには強いメーカーだという認識はしていましたが、
製品レベル、もしくはサンプル出荷可能レベルの8K動画用センサというと、私の知る限り、
NHK系(静岡大学、Forza、ブルックマンテクノロジ)、及びREDのHELIUM8Kセンサに次いで3番目ではないでしょうか。
(Canonもキヤノンエクスポで8K動画用センサ搭載のカメラを展示してあったようですが、どの程度の完成度か外部の人間には不明)
 CMOSIS自体は主にはマシンビジョン用を想定している様ではありますが、もしかしたら数年後には、BMD(ブラックマジックデザイン)やAJAあたりの8Kカメラに搭載されて出てくる可能性はあるのでは?

 そして、今年もなんとか駆け足でしたがinterBEE(国際放送機器展)に行ってきました。
大した内容は書けなさそうですが、これも後年の備忘録のために来週末以降にblogエントリしたいと思っています。



 さて、今週エントリの本題は、ちょっと時間が経ってしまいましたが、以前チラッと書いた
”iPhone7にSTMicroelectronics製のToFセンサが載っていた”というchipworksブログよりいこうかと思います。

拍手[2回]

以下、私の意訳で私の解釈も一部入っています。
また章立てやそのタイトルも私がわかりやすいと思う(≒私が理解しやすい)章立てに変更してあります。ご了承ください。


◆何故iPhone7にToF(Time of Flight)センサが(特にFaceTimeカメラ側に)採用されたのか?

【背景 ~問題点~】
バッテリーをsaveするために、iPhone(≒スマホ)を”電話”として使う時≒スマホを耳に持っていった時には、タッチスクリーン機能も含め液晶はOFFにしたい

以前のiPhoneでは、その機能を単純なフォトダイオードで”明るさ”を検知して行っていた。
(つまり、スクリーン側にあるフォトダイオードを備えたセンサ~恐らくFaceTimeカメラ自体~が、”暗い”と検知したならばスクリーン機能をOFFにするというアルゴリズムを採用していた)

しかしそうすると、例えば白鬚のおじいさんなどで、スマホを耳元に持っていっても明るく判定したままになってしまい、スクリーン機能がOFFにされないことがあった。
そのため、電話中にスクリーンに(顔のどこかなどが)タッチしてしまったりして、通話が切れてしまったりといった誤動作(?)が起こるという問題があった。


【背景2 ~アクティブシステムの導入~】
そこで次のステップとして、上記の様な誤動作を避けるために、近接センサにアクティブシステムを採用することにした。

LEDとセンサをセットにして、LEDを発光させ、顔からの反射光をセンサが受け、その明るさが所定の設定値以上になったらスクリーンをOFFするという方式に変更した。
iPhoneに顔を近づけていった時に、”近接した表面の反射率に依らず”、近接センサはほぼ100%動作するように、この”所定の明るさレベル”は設定されなければならない(≒それは非常に難しいことだ)


【Time of Flightセンサの採用】
 iPhone6sと7の間で、この件に関して次のステップへの進化が見られた。
それがToFセンサの採用だ。
ToFセンサのメリットは、表面の反射光のレベルに依存しないことだ。
代わりに、レーザーダイオードの発光光子の飛行時間を実際に計測して距離を算出しており、そしてこの飛行時間は近接表面の反射率に依らない (≒だから正確に近接表面との距離を算出することが出来る)。


↑ここで、チップワークスblogの中で、STの資料が貼り付けられています
上の資料で述べられている程度の測定原理であれば、以前の弊blogエントリでも取り上げています。
ですが、今まで真面目に一度も計算していなかった

◆光速が1cmの距離を往復してくる時間=66pSec

ということがわかったことが良かったです。
凄いですね。ToFセンサというのは、もし仮に1cmの測距分解能を得ようとした場合、66pSec=66×10^-12乗秒という途方もなく短い時間を検出し分けなければならないということがわかります。


【過去のToFセンサ導入事例】
チップワークスの解析グループが初めてToFセンサを見たのは、
ブラックベリーPassportに、STMicroの”VL6180”が導入されていた時だ。
それらは、近接センサ、環境光センサ、レーザー光源の3つが、一つの小さな光学モジュールの中に収められていた。
その後、いくつかのLGのスマホにも搭載されているのが確認された。

↑STMicroelectronics製VL6180が搭載されたスマホリスト


【(今回紹介する)ToFセンサはSPADアレイで出来ている】
近接センサは、実際にはシングルフォトンアバランシェダイオード(Single Photon Avalanche Diode)のアレイで構成されている。
そしてそれらは通常のCMOSプロセスで集積可能だ。


↑ここで、またSTの資料が引用されています。
 文字だけ訳すと、

SPADのデジタル出力は、
 ・到達した単一光子のカウント
 ・単一光子の到達時間
の計測に用いられており、

それぞれの光子は、価値ある時間と距離情報を提供する
そしてすべてCMOSプロセスで製造可能

という様なことが書かれていますが、正直これだと”何故そういう価値ある情報が取れるのか?”というところが一切書かれていない様に感じますので、
いずれ弊blogで(書く書くと言って結局書いていない^^;)ToFセンサ第二弾のエントリで、勉強して書いてみたいと思います。


【STMicroelectronics製”VL6180”と”VL53L0”について】
VL6180には、実際には2つのSPADアレイが同一チップ上に搭載されている。
レーザー光源は別のチップで、しかし同一のパッケージユニットに収められている。

1月に、STMicroから””VL53L0”という第二世代センサが発表されており、我々の調査の範囲では、今年だけで6機種ほどからそのセンサが載っている機器があることがわかっている。
そしてそれらはすべてアジア太平洋地域の会社製機器に搭載されていた(忘れてはならない。モトローラは今やLenovo傘下だ)

↑STMicroelectronics製”VL6180”ダイの恐らく上面顕微鏡写真
環境光センサと2つのSPADアレイが並んでいるのがわかる
片方が”リファレンス”SPADアレイ とわざわざ書かれているところを見ると、
リファレンス側のSPADは、発光したレーザー光を、恐らく受光するタイミングをずらすか何かして受光しないようにして、
通常SPAD信号からリファレンスSPAD信号を差分することにより、発光したレーザー光以外の外乱光を除外するために用いられているのではないかと個人的に予想します。


↑VL53L0センサが搭載されていたスマホ機器リスト


 (しかし、)過去のこれら事例は、いずれもスマホのメインカメラの測距(range-finding)のための素子であり、近接センサとしてスマホ制御のためには用いられていなかった。
(ちなみに、)VL53L0は、環境光センサは別チップになっており、またSPADアレイは改修されている。

↑STMicro製VL53L0の恐らく顕微鏡上面写真


【で、iPhone7搭載ToFセンサモジュールは?】
話は元に戻って、iPhone7では、Face-Timeカメラ側の環境光センサとLED/センサモジュールが、”6s”のそれとは異なっていた。

↑iPhone7の、Face-Timeカメラモジュール一式

 チップワークスの解析陣が、iPhone7から上記モジュールを取り出した時、STMicroelectronics製っぽく彼らには見えた。
ダイ(≒チップ)を見ると、以前のST製と同じでは無かった。しかし、極めて似ており、
(S2L012ACという)ダイナンバリングも、VL53L0/S3L012BA という過去のSTのダイナンバリングと似ており、SPADアレイも同一ダイ上に2つという点も同じであった。
ただ、今回はレーザー光源は、ToFセンサと同一のダイ上に、非常にコンパクトなモジュールとなって接続されているところだけは異なっていた。


【チップワークス的結論】
これらを元に、我々は以下の様に結論した。
iPhone7の近接センサは、今やToFセンサであり、そしてそれは同時にセルフィーカメラ(フロントカメラ=FaceTimeカメラ)の測距センサも兼ねている。
そしてそれは”7 Plus”でも同様で、STMicroelectronics製のものが採用されている。
今のところ、アップルからもSTからも、ToFセンサがST製であるというアナウンスは無いが、しかし他メーカー製のものとは思えない。



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レーザーオートフォーカス

ToFセンサーを使った測距を、スマホではレーザーオートフォーカスと呼ぶようですね。レーザーを単なる補助光と思っていたのですが、LG 3Gはレーザーの位相検出で測距するとの解説を読んで気が付きました。

Re:レーザーオートフォーカス

>hi-lowさん

>ToFセンサーを使った測距を、スマホではレーザーオートフォーカスと呼ぶようですね。

イメージ優先のネーミングなのかな?という気がしますが、
私の受けるイメージは、鋭そうで、AFされた被写体側の目がやられそうな恐怖を覚えますね(笑)

  • imagerマニア
  • 2016/11/26(Sat.)

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