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Imager マニア

デジカメ / デジタルビデオカメラ / スマホ用の撮像素子(イメージセンサ/imager/CMOSセンサ)について、マニアな情報や私見を徒然なるままに述べるBlogです(^^;)

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Aptina(アプティナ)のDR-Pixテクノロジーって? ~いやそんな名前つけるほどの・・・(^^;)

 以前、ニコンの一眼レフカメラD5200搭載撮像素子が東芝製であることがわかった時のchipworksの記事の中で、「みんなだって、もしソニーとルネサス以外の新しいベンダーを探すならaptinaを選ぶだろう?」の下りの中で

Aptinaの技術として DR-Pix テクノロジー

というのが出てきました。(冒頭リンクの前半1/3くらいの箇所)

この時私は
恐らくダイナミックレンジが自慢の回路方式を指すと思われる表現
と書いたのですが、実際何を指すのか知らなかったので調べてみました。
そうしたら、上記の表現は誤りではなかったのですが、私が想像していたイメージとは異なるものでした。
今回はそんなお話です。

5e50eb33.png
 

拍手[1回]

↑Aptina(アプティナ)のHPの”technology”の欄に貼ってある”DR-Pix”技術アピール画像
つまり、左が通常センサで、右がAptinaセンサのハイダイナミックレンジ機能を用いて撮影された画像
上の画像が、暗いシーンのもので、下が明るいシーンのもの。

で、どうやって実現しているかというのがコレ
↑さきほどのAptinaオリジナルのHPからyouTube動画で、恐らくAptinaの偉い技術者のおじさんが丁寧に解説してくれています。

 その動画の中から抜き出した画像がコレ↓
2716e3c3.png

















 恐らく、これを見ただけで、解説不要な方が多数出現してしまったのではないかと思うのですが(^^;)、
そうなんです、画素のFD部にスイッチとそれを解して対地で容量をつけただけ なんです。

 技術がわかりやすいのか、資料がわかりやすいのか・・・
私、英語はほとんどできませんが(特にリスニング(ヒヤリング?))、上記動画はわかりやすくて、英語は聞き取れなくても出てくる図面説明でほぼ理解可能です。
しかも、全体で5分少々ある動画なのですが、上記写真が出てくるのが2:20あたり。もうそれ以降の動画を見る必要は無さそうです、内容的に(^^;)

 多少補足しますと、資料文言の通りなのですが、
 左のスイッチONした状態が、最初の写真の明るい時に使用するモード
電荷⇒電圧(≒最終出力)変換係数が小さい。”しかし”FD部の容量が大きい”ので”明るい時の画質が素晴らしい(←つまりは白とびしにくいという意味ですね)。
↑この説明が正しいとすると、何か資料の三つ並列にドットを打って書いてある内容は、並列に並べるべき内容じゃない気がしますね。以下も同様ですが
 右のスイッチがOFFした状態が、最初の写真の暗いときに使用するモード
電荷⇒電圧(≒最終出力)変換係数が大きい。”そして(更に)”読み出しノイズが小さい。”だから”低照度の時の画質が素晴らしい。

 う~ん、これを最初に考え付いて実際行ったのがaptinaなのであれば本当に素晴らしいと思うのですが、今時分としては正直誰でも知っていそうですし、これに特別の技術名称をつけるというのもどうなのかな~
 などと思わず思ってしまいました(^^;)


以下は最早蛇足ですが・・・

 【何でFD部の容量が大きいと変換係数が小さくて白飛びしにくいの?】
 【何でFD部の容量が小さいと変換係数が大きくてノイズが小さいの?】

正しいかどうかはともかく、私の概念としては以下です。
上記動画の1:30あたりからも、図面で説明してくれています。

7ab0dbd2.png2.PNG

 Q=CV
Q:電荷[q:クーロン] / C:capacitance(容量)[F:ファラッド] / V:電圧[V:ボルト]

中学教科書で出てくる、今のところ不変の電気法則です。
上式を単純に変換すると、
 V=Q/C
フォトダイオード発生するのは、光が電子(場合によっては正孔)に変換されたものですが、電子は一つで1.602e-19の負の電荷を持っています。(正孔は逆に正の電荷を持っています)
それが容量Cを持つFD部に転送されてきます。
 これでFD部には、Q/Cで表される電圧がたつことになります。これが後々まで読みだされる電圧信号の元です。
仮に今、フォトダイオードから転送されてくる電荷Qが等しいとした場合、FD部の容量Cが大きいのと小さいのを比較すると・・・
 大きいC:立つ電圧Vは小さい
 小さいC:立つ電圧Vは大きい

 画素部以降の回路が全く一緒であれば、この時点でFD部の容量の大きいと変換係数小さく、容量が小さいと変換係数が大きくなる答えは出ました。
 
 ここで、回路の電源電圧は(当然センサによって異なりますが)例えば0~3.3Vという風に決まっています。
これ以上もしくは以下の電圧値を表現することは出来ません(実際には他の制約もあるため、0~3.3Vをフルに使えるわけでもないので、もう少し狭い範囲でしか信号電圧として使える幅はありません)。
 で、もし多量に電荷がフォトダイオードから転送されてきた場合、小さいCの方がより大きな電圧が立つのですが、大きいFD容量のセンサよりも先にFD部の電圧が0もしくは3.3Vの限界に達してしまいます。
そしてそれ以上の電荷が仮に転送されてきても、限界以上の電圧にはならないため信号としては変化がありません。
つまり、画像で言うと、ある一定の明るさ以上の箇所はそれ以上いくら信号電荷がフォトダイオードから転送されてきてもFD部で飽和してしまい、白飛びとなってしまうという訳です。
 容量Cが大きい方が、FD部の飽和限界が高いため・・・言い換えるとより多くの電荷を貯めることが出来るため、白飛びしにくい”素晴らしい品質の画像”ですと。

 今度は暗いとき、フォトダイオードから転送されてくる電荷はわずかです。
FD部で立つ電圧も僅かとなります。
ところで、読み出し回路には必ずノイズ(←電圧)が存在します。
画素の上記等価回路図内でもSF(ソースフォロワ)がRTSノイズというのを出すことが知られています。
信号電圧とこの読み出し回路のノイズの比が大きくなればなるほど、高S/Nとなり、いわゆる”画質が良い”状態となります。
 仮に、FD部以降でノイズが同じだけ発生する回路を使った場合、FD部の容量が大きい場合と小さい場合でどう違いが出るか?
 FD容量が大きいと信号電圧Vが小さく
 FD容量が小さいと信号電圧Vが大きい
というのは前述の通り。
また、暗い時を想定しているので、FD部が飽和する心配はどちらもありません。
 後は自明ですが、同じノイズ(電圧)がその後乗ってくるのですから、FD部でより高い信号電圧振幅を記録している方が、小さい信号電圧振幅のものよりもS/Nが良いのは当然です。
 よって、FD部の容量値が小さい方が高S/Nなため、低照度で素晴らしい画質です、と。
↑上記私の感覚が間違っていなければ、右側の”Low read noise”は正確には”High read S/N”になるのでは?と思います。が、一般的にこういうことをLow noiseと言うのは認めます(^^;)

 今後、わざわざこのblogエントリに載せるかどうかは別にして、AptinaのHPにある残りの”テクノロジ”も眺めてみようと思います。

 
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AptinaのHDR

管理人様

タイトルとは関係無いことから、話し始めるのも何ですが、NIKON J1のセンサ及びADCについて書かれた論文がありますので、貼っておきます。ISSCC 2013のAptinaの論文です。管理人さんがNo.69で説明されている内容と全く同じですので、No.69を読まれた方は読む必要は無いです。J4のADCについて書かれたものは、さすがに見つかりませんでした。

http://www.imagesensors.org/Past%20Workshops/2013%20Workshop/2013%20Papers/09-4_036-takayanagi_paper.pdf

本文中の

>う~ん、これを最初に考え付いて実際行ったのがaptinaなのであれば本当に素晴らしいと思うのですが、

ですが、追加容量によってFD容量の切り替えを行うHDRという観点で見ると、2005年にTIと東北大学の共同で、もっと複雑な方式が映像情報メディア学会で発表されています。
この論文を覚えていた理由は、当時、TIもイメージセンサに取り組んでいるのか、と驚いた記憶があるからです。ただ、当時の論文はウェブ上で見つかりませんでした。
図面が書かれた、代わりの物はこれです。(特許:多分、内容は論文と同じ)

http://pat.reserge.net/PatentDocument.php?pn=2006217410&dbid=JPP

結線の状態を誤解し易いですが、CfdとCSは直接、繋がっておらず、Sをon状態にした時のみ、容量がCfd+CSになります。
LOはPDからのオーバーフロー閾値を決める、コントロール電極です。

Aptinaの方式は、これより、更に単純な方式なので、2005年より、もっと以前にアイデアがあったと思います。気になるのは、このTIのメンバーが今もイメージセンサの開発をやっているのか、ですね。

AptinaもOn semiconductorに変わり、開発ターゲットが、車載や産業用に移行するようです。当然、何らかのHDR技術を進めて行くと思われますが、方式的に上記の延長で行くのか、注目ですね。

TIのイメージセンサー

> ロートル さん
2005年頃のTIは、超高感度のEMCCDを開発・生産していましたので、科学技術用イメージセンサ事業には力を入れていたと思います。
ブランド名はIMPACTRONで、数年前までは搭載したカメラヘッドが販売されていました。
TIはイメージセンサ事業そのものを止めてしまったようですね。

Re:TIのイメージセンサー

>2005年頃のTIは、超高感度のEMCCDを開発・生産していましたので、科学技術用イメージセンサ事業には力を入れていたと思います。
>ブランド名はIMPACTRONで、数年前までは搭載したカメラヘッドが販売されていました。
>TIはイメージセンサ事業そのものを止めてしまったようですね。

 私も上記TIのEMCCDは記憶にありましたので、撮った写真のメモを見返しました。
NHK技研公開時に、少なくとも2013年までは”宇宙用高感度カメラ”という展示ブースがありました。
2012年までは、使われていた撮像素子は、上記TI製のEMCCDでした。
2013年には、どこ製かは聞き忘れてしまいましたが、同カメラの撮像素子はCMOSセンサに変更になっていました。
展示員の方に聞いたところ「TIが撤退したため供給を受けられなくなったための変更」という風に明言されていました。
 TIがイメージセンサ事業をやめてしまったことは間違いなさそうですね。

  • imagerマニア
  • 2015/04/12(Sun.)

Re:TIのイメージセンサー

hi-low様

TI情報ありがとうございます。
カメラヘッドの件は知りませんでした。
TIがCCDを作っていた件は、聞いた記憶がかすかに、残っております。当時、CCDを作っていたメーカーはMOSセンサと両睨みになったメーカーが多かったですものね。
フォッサムがCCDの未来を恐竜の絶滅のように語っていましたが、最後まで残っていたコンデジ用のセンサでも、裏面照射型の出現以降、本当にアプリケーションが少なくなったものだと思います。

TIのみならず、CCDを開発していた技術者の最近は気になります。
うまく、転向できているのか、全然、センサとは関係のない仕事に変わったのか。
人の働いている期間って、短いようで長いのかな?

Re: Re:TIのイメージセンサー

> imagerマニア さん
> ロートル さん

TIがイメージセンサー事業を止めた理由が分かりました。

TIのイメージセンサー製造ラインは日本の東北にありましたが、2011年3月の震災で被害を受け、TI経営陣はそれを回復するよりも製造を止めることを選んだそうです。

Re:Re: Re:TIのイメージセンサー

>TIがイメージセンサー事業を止めた理由が分かりました。
>
>TIのイメージセンサー製造ラインは日本の東北にありましたが、2011年3月の震災で被害を受け、TI経営陣はそれを回復するよりも製造を止めることを選んだそうです。

 そうでしたか。情報ありがとうございます。

検索してみると
http://www.tij.co.jp/general/jp/docs/gencontent.tsp?contentId=116002
公式発表では一応”完全復旧した”とTI自身は宣言していたようですが・・・やはり顧客を安心させて顧客離れを防ぐための発表だったのでしょうね。
(もしくは本当に復旧はしたが、離れた顧客が戻ってこずに、結局採算が取れなくなって・・・ということなのか)

 あの震災では、ソニーのHDCAMのテープの工場も被災し、品不足が発生したせいで、その後放送業界でテープメディアからの脱却(?)が想定以上のペースで進んだという様な皮肉な事態も起こったと聞いていますし、
各方面で本当に影響が大きかった出来事でしたね。
http://www.j-cast.com/tv/2011/04/20093657.html

  • imagerマニア
  • 2015/04/16(Thu.)

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