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Imager マニア

デジカメ / デジタルビデオカメラ / スマホ用の撮像素子(イメージセンサ/imager/CMOSセンサ)について、マニアな情報や私見を徒然なるままに述べるBlogです(^^;)

NHK技研公開2014 ~有機撮像デバイスの直接積層技術

技研公開に行ってきたエントリの第二弾です。
(第一弾はこちら)

 平日エントリなのと、時間が無くて当日あまりこのテーマのお話が聞けなかったので軽めに。

今回は、マニアな皆さんが一般的に興味をお持ちだと思われる(マニアにとっては)メジャーテーマ(笑)”有機撮像素子”です。

 今回読まれる前に、個人的には、昨年の技研公開時の拙blogのエントリを是非お読みなってから、本エントリを読まれることを希望します。
(別にアクセス数を増やすとかそういう話では無く、技研のこのテーマの流れを知ってから読む方が面白いと思うからです。)


↑断面模式モデル?

 前提ですが、上の写真の様に、NHK技研の有機撮像素子は、富士とパナソニックが開発中の有機撮像素子と異なり、カラーフィルタも用いない、1画素で3色とも有機膜で光電変換を行う、いわばFOVEONタイプのセンサを目指しています
昨年は相席とはいえ、ブース展示でしたが、今年はポスター展示に逆戻りしていました。

↑圧縮されてしまって字が潰れてあまり見えないですね。ご容赦ください(__)

展示のサブタイトルは ~小型で高画質な単板カラーカメラの実現を目指して~
そうです、目的は一つ前のエントリの結晶セレンを用いた光電変換膜を積層した固体撮像素子と同じです。

スーパーハイビジョンは画素数が多くてフレームレートが速いものが求められる
 ⇒小型カメラのために単板カラーセンサを作ろうとすると、画素ピッチが小さくなってSNの悪いものになってしまう
  ⇒高感度(≒高SN)で、斜め光入射にも強い撮像素子が必要
そして⇒1画素で3色感光出来たら、フルスペック8Kを単板で狙うのに1.3億画素なんて不要で画素ピッチも有利だよね
    ⇒有機撮像素子だったら出来るんじゃない?

 
 上の写真の上段及び左下の説明が、上記背景と昨年までの進捗(≒成果)です。
かいつまむと、

 ①直積積層技術で、下から赤と緑の2層まで積層する試作を成功させた
  その際の有機膜と絶縁膜を合わせた厚さは約10um
  ↑何umの画素ピッチのセンサを狙うかによるのですが、本研究の目的からすれば、最低でも5um□以下の画素ピッチのセンサを狙いたいはず。
(何故なら、フルサイズ画角で8Kセンサを作成すると、約5um□だから。本当はもっと小さいセンサにしたい)
  狙いたい画素ピッチに対して、厚さ(フォトダイオード的に言うと深さ?)が10umというのは、まだ少々厚過ぎる感がありました。

 ②有機膜は温度に弱い。他方TFT(←有機膜などの通電をON/OFFしたりする用の薄膜トランジスタ)の形成には高温が欲しい。
  だから、TFTを低温(150℃)にて形成する技術を確立しました(上図左下部)。

以下TFT形成方法部拡大写真。

↑ただ、昨年は文字で「150℃の低温でTFT作製に成功しました」と書かれていただけで、ここまで詳細な内容は無かったです。
写真右上のIg-Vg特性で、”オゾンアニール”(??詳細わかりません。オゾン雰囲気中でアニールする??)なるものを150℃60分加えると、スイッチング特性が良くなっているという様なアピール図になっています。
もしかしたら、今年一年の成果なのかもしれません。



 で、以下からが今年の成果(=この一年の進捗)の様です。

1) (右下写真) 赤/緑/青の3色を直接積層技術によって積層することに成功しました
 また、積層totalの厚さ(一番下のREDの表面から一番上のBlueの表面まで)を5.8umに抑えることが出来ました。

 薄く積層可能になった理由が”適切な層間絶縁膜材料の探索に成功したから”ということの様です。(上写真左の、薄青くハッチされたところが新規に探索した材料。上の白いエポキシ樹脂というのが従来のものだと思われます)

 上の写真の右の積層断面を見ると、元々積層のtotalの厚さを決めていたのがどうやら層間絶縁膜。有機光電変換膜の厚さは元々微々たるもの。
なので、層間絶縁膜の厚さを薄く出来れば必然全体の厚さを抑えることが可能になったということの様です。

従来のエポキシ樹脂と新たに探索成功した”バッファー層+窒化シリコン膜”の○×のメリット/デメリットを比較すると、
 今回適切な層間膜となった後者の膜は、前者のエポキシ樹脂に対して
●膜厚を薄くすることが可能となり
 そして
●成膜時の(有機膜への)ダメージが低減された
 といういいこと尽くめ(ただし、何故上記の様なメリットが出たのか聞き忘れました--;)


 やっと3色積層出来たことは喜ばしいことですね。
ただ「今3色積層したデバイス(センサ)を試作中です」展示員
とのことだったので(上記までは、ガラス基板上に膜形成できたという意味で、実際センサを作った訳ではなさそう)、
私「画素ピッチと画素数はいくらぐらいですか?
展示員「100umピッチで1万画素前後です
私「そうですか」(--;)テンションダウン
展示員「画素数や画素ピッチよりも、早く高感度なセンサが可能だと原理的に証明することを優先したいです。」


 まだまだですね~。
本来の目的からすれば、1um□画素ピッチ&8Kとかを最終的には狙いたいはずです。
一つ前のエントリの、結晶セレンの低電圧増倍膜センサは、既に3um□&60万画素で動画撮影デモが可能な試作までは出来ています。
難易度が異なるのかもしれませんが、同様な目的の研究で進捗の差異は(私的には)明白と言わざるを得ません。

 また
私「今後の課題は何ですか?」
展示員「暗電流(電極部分のブロッキング層の材料や積層法)と各色有機膜材料自体です(≒より効率の良い膜はないか?)。」

 前者の課題は2年前から同じことを話されていました
また、後者は終わりの無い課題なのかもしれませんが、素人目にはこのテーマの最も根本的な課題の様にも聞こえます。

 ここからも先の長さを感じました。
途中でブレークスルーがあったり、技研がよりリソースを掛けて研究のペースアップをする時が来るのかもしれませんが、
このままのペースで研究が進んだ場合、私個人の感覚では後10年ではカメラに載るレベルには到達不能に思えます。

 製品の量産化が遅れ、液晶パネルの低価格化、低消費電力化、高画質化の進展の加速に負けて、TVの主役の座を取り損ねそうになっている有機ELパネルをふと思い出しました。

 そうこうしている内に、低電圧増倍膜などの既存(化合物を含)シリコンベースの撮像素子が、一段ブレークスルーして延命するかもしれません。または、富士&パナが単層有機膜センサの量産に近年中にこじつけ、ノウハウを蓄積して先に有機3層センサを製品化するかもしれません・・・

いずれにしても、第三者として研究内容のお話を聞いている分には毎年非常に楽しいのですが、当事者の立場になった気になると、非常に進捗的には先行き厳しい感を抱いてしまいます。
まあ、この手の高度な研究テーマで先行き道筋明瞭なものなどそうそう無いとは思いますが・・・


 最後におまけ。

↑まだ、今後優秀な役者に主役の座を奪われる可能性が高い、かりそめの主役、各色有機膜材料たち(^^;)



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無題

TVの主役というと、すでに主役になれなかったことが確定しているFED/SEDやPDPのこともたまには……

確か画素数は128×96と聞いたような覚えがありますが(うろ覚え)、まだそんな調子ですからわたしも正直なところ実用化は遠い未来の話という印象を受けました。

Re:無題

>TVの主役というと、すでに主役になれなかったことが確定しているFED/SEDやPDPのこともたまには……

 あれ?私の中ではPDPは一度は”大型TVの主役の座を奪った”認識なのですが、
あれでは王座陥落が早すぎて認められませんかね?(笑)

実際この調子だと、(中小型パネルや車載用はともかく、)TV用としては有機ELはPDPほどの輝きすら見せないまま終わる危機に瀕し始めている気がします。

  • imagerマニア
  • 2014/06/03(Tue.)

有機材料

有機材料は絶縁だけでなく酸化対策(酸素の遮断)も必要になりますので、オゾンアニールで有機膜が大丈夫かちょっと心配です。
受光の仕組みが全く異なるので良い比較ではありませんが、網膜の光受容細胞は、光受容タンパク質分子を常に更新することで性能を維持しています。1個の光受容タンパク質の寿命は、10日ほどしかありません。

分光についても、富士フイルムとパナソニックの共同発表のようにカラーフィルターを利用する方が、積層よりも現実的だと思います。
積層分光でもRGBを合計すると1億画素になりますので、実質的にデモザイク演算の必要ないベイヤー配列1.3億画素センサーに対する明らかな利点が見つけられない限り、積層分光センサーは製品化に至らないように感じます。

Re:有機材料

>有機材料は絶縁だけでなく酸化対策(酸素の遮断)も必要になりますので、

 そうなのですか。
絶縁膜があって、先にTFT作製の層がきて”オゾンアニールが終わってから”有機膜積層という順番なら大丈夫だということなのでしょうか?
(アニール終わった後からわずか酸素が湧き出てくるようなイメージのこともなくは無いと思いますが)


>分光についても、富士フイルムとパナソニックの共同発表のようにカラーフィルターを利用する方が、積層よりも現実的だと思います。

 あ、勝手なイメージで私、hi-lowさんは有機撮像素子推進派かと思っていました。
何ででしょうね?(^^;)

確かにBはともかくGとRは、それぞれ上の層と間のTFT回路の層で光量が減衰してしまい(?)ますので、感度的にも不利な方向に転びそうな気がしますしね。


>積層分光でもRGBを合計すると1億画素になりますので、

 私の言いたかったことはどちらかと言えば、”積層することによって各色8Kを持ちながらも、ベイヤに対して1画素面積が4倍稼げて感度などに有利”という方を強調したかったのですが、

>実質的にデモザイク演算の必要ないベイヤー配列1.3億画素センサーに対する明らかな利点が見つけられない限り、積層分光センサーは製品化に至らないように感じます。

 確かにデータの重さは仰る通りですし、何より現行技術に明らかに優る点が無ければ世代交代は起こらないことも仰るとおりと思います。

ひつこくTVの例を引けば、ブラウン管TV ⇒ 液晶TV への世代交代が起きえたのは、液晶の画質的性能がまずまず許せる範囲に入り、コストがギリギリ一般人が購入可能なレベルに入り、そして何よりブラウン管よりも”大型”にし易く”薄い”(=体積はさほど取らない)という、一番最後の圧倒的利点のお陰だと思っています。

 そう考えると、液晶TVの様な圧倒的な飛び道具を有機膜センサに期待するのは辛そうに思いますので、王道で、”圧倒的高感度”、”圧倒的飽和(ダイナミックレンジ)”、圧倒的斜め光特性”あたりの二つ以上に該当しないと、世代交代は厳しそうでしょうか・・・

  • imagerマニア
  • 2014/06/03(Tue.)

Re: Re: 有機材料

> 絶縁膜があって、先にTFT作製の層がきて”オゾンアニールが終わってから”有機膜積層という順番なら大丈夫だということなのでしょうか?

重要なのは大気の20%を占める酸素の遮断です。光電変換が起こって電子を抱えた有機分子は高エネルギー状態なので、周辺に酸素があると直ぐに酸化物になってしまいます。有機ELの長寿命化でも、酸素の遮断が最も大きなテーマだと思います。

> あ、勝手なイメージで私、hi-lowさんは有機撮像素子推進派かと思っていました。
何ででしょうね?(^^;)

Foveon好きだからではないでしょうか。有機膜センサーは、積層構造と同時に語られることが多いですから。
個人的には、有機光電変換分子を使ったセンサーは寿命の点で実用化は難しいと思っています。無機素材の方が安定性は高いですね。

> そう考えると、液晶TVの様な圧倒的な飛び道具を有機膜センサに期待するのは辛そうに思いますので、王道で、”圧倒的高感度”、”圧倒的飽和(ダイナミックレンジ)”、圧倒的斜め光特性”あたりの二つ以上に該当しないと、世代交代は厳しそうでしょうか・・・

CMOSよりも"圧倒的低消費電力"になれば、機器組み込み用カメラでの世代交代の可能性はあると思います。

Re:Re: Re: 有機材料

>個人的には、有機光電変換分子を使ったセンサーは寿命の点で実用化は難しいと思っています。無機素材の方が安定性は高いですね。

 デジタルカメラの黎明期から少し前くらいの右肩上がりの時代だと、実際には1~2年寿命が持てば(買い替えサイクルが早いので)実用上の問題は無かったのだと思うのですが、業務用とか今後の成熟期ではそんな程度の寿命では厳しいでしょうしね。

 無機材料と比べられると厳しいですよね。今でもカラーフィルタなんかは何年か経つと色褪せるみたいなことが言われているのをwebで散見したこともありますし。(←ことの真偽はともかく)


>CMOSよりも"圧倒的低消費電力"になれば、機器組み込み用カメラでの世代交代の可能性はあると思います。

 なるほど!
確かにそこも現状固体撮像素子よりも有利になりえる点ですね。

 ただ、有機撮像素子は成功しても当面は読み出し回路は現状のシリコンベースのままなので、4Kとか8Kとか高フレームレートとか、NHKが推進したい方向になればなるほど、信号読み出し回路の消費電力が支配的になっていって、画素がフォトダイオードから有機膜に置き換わった際の消費電力の低減効果は限定的なものになってしまいそうですね(--;)。

後は同様に8Kとかになった場合、カメラ全体での消費電力という観点でも、
確か技研が昨年初めて公開したAstroと共同の8Kカメラヘッドは、(処理回路がFPGAでまだIC化されていないので最適化前ですが)確かセンサの消費電力の占める割合は1/10以下でした。(つまり、言いたいことはセンサががんばって低消費電力化を達成しても、8Kとかだと周囲ががんばらないとシステムとしての低消費電力化にはつながらない)

 う~ん、考えれば考えるほど、有機膜センサが主流になるまでの道のりは厳しいですね(^^;)

(消費電力の観点は私抜けていました。スマホ機器とか向けとかなら少し電力削るだけでもアピール度大きいでしょうし、もし私が有機撮像素子の技術or営業担当者とかだったら、電力何とか削ってアピールポイントにしようとすると思います)

  • imagerマニア
  • 2014/06/08(Sun.)

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