↑ HTC oneを分解して出てきたメインカメラモジュール
上記リンク先のoriginal記事の最後の方”The Camera”の段落から主要なところを以下抜粋。
・HTC oneのメインカメラモジュールの撮像素子(CMOSイメージセンサ/CMOS imager)は1/3型
・他の多くのライバルが1.1umの画素ピッチで13Mpixelのカメラを搭載している中、HTConeは
2.0umの画素ピッチで4Mpixの画素数の撮像素子を選んでいる
・その撮像素子はSTMicroelectronics製で裏面照射型センサ
・(chipworksが解析したことがある中では)
ST社製としては初めての裏面照射型センサ
・このカメラは、invensense社製の手ぶれ補正のためのジャイロセンサを搭載
・サブカメラは2Mpixで1.4um画素ピッチのOmniVision製
↑ST製 裏面照射型センサ 上面写真
■ワイヤボンディングされているパッド数:(恐らく)75
↑写真で適当に数えましたので、間違っててもご愛嬌でお許しを(^^;)
その他、ボンディングされていないパッドも10パッド程度のオーダーで存在。
写真を拡大すると、
ボンディングされていない不使用のパッドにも、ウェハレベルの出荷テストで針が当てられた時に出来たのではと思われる痕があり。出荷テストの際には何かのモニタ等に使われているようです。
そして、パッドがあるのはセンサの3辺。
撮像領域外の周辺回路の面積が上下で異なるのはAPS-Cサイズ程度以上のセンサでは珍しいと思いますが、1インチ以下のサイズのセンサでは良く見かける感じですね。
また、どうても良いこと(=センサの性能には全く無関係なこと)ではありますが、右下の”逆L”字及び左上の”T字”マークは、パッケージへのセンサ実装時の組み付け方向ミスを防ぐためのマークではないかと思われます。
また、
撮像領域外にはブルーのフィルタが敷き詰められていることが多いと思うのですが、このST社製のセンサはグリーンのフィルタが敷き詰められているようです(←周辺部が緑に見えるので)。
これは
初期のフォビオンセンサでも見られましたね。受光部分とは関係の無い周辺回路部分への光の入射を多少でも和らげるためだと思いますが、まあこれも何色のフィルタであっても基本的なセンサ性能には大きな影響はないと思われます。
余談に逸れてしまいますが、上記フォビオンセンサは1つの画素でRGB全ての光を受光するカラーフィルタレスなセンサであることがマニアに受けて、またそれが特徴となっているセンサなのですが、
そんなセンサがわざわざ周辺回路部に色フィルタを配置するなんて、無駄でおもしろいな(^^;)と思っていました。
ところ、やはり
最近のmerrillになったフォビオンは周辺回路部にGフィルタを配置することはやめたようですね。
↑センサ上のST社のダイマーキングを証拠として確認
しかし、今回のST社のセンサは、スマホ搭載カメラとしてはユーザーに良心的な(?)感度重視の2um□画素ピッチのセンサです。
他社は私の知る限り、だいたい
1.4um□前後が表面照射型か裏面照射型かのセンサタイプの切り替えラインの様です。
これは参考までに
東芝の汎用CMOSイメージャー品のラインナップ表
一般的には「裏面照射型センサは表面照射型センサに比べて製造工程が複雑でコスト高。また、裏面照射型の一番のメリットである感度upについても、その画素ピッチが大きくなればなるほど表面照射型との差は少なくなってくる」と言われていると思います。
現に、スマホよりはコストupが許されると思われる一眼レフカメラでも、まだ裏面照射型センサ搭載品は出現していません。
4/3機のOMD-EM5センサで画素ピッチが3um台後半ですから、基本的にそのくらいの画素ピッチの大きさになってしまうと明らかにコスト高な裏面照射型センサ採用のメリットは消えてしまうものと、上記事実から現状は予想されます。
”では2.0um□画素ピッチでの裏面照射型センサ採用のメリットはどうなの?”
「裏面照射型センサの画質は嫌い!!」という人でなければ、我々エンドユーザーには裏面照射型を採用してもらうデメリットは(多分)無いので、ST社には賛辞を送って良いと思うのですが、世の中ビジネスが成り立ってこそそんな会社も存続してもらえるので、企業ビジネスの観点で考えると・・・
1)HTC社が”低照度画質”を強くアピールポイントにしたいスマホだったので、そのカメラ向けセンサをST社に依頼⇒ST社が2um画素ピッチ&裏面照射を採用することにした
2)ST社は、スマホ向けに純粋に低照度画質をウリにしてスマホ製造各社に売り込む方針のセンサを作製した
3)ST社は同じ画素ピッチ品では、競合他社に対して感度特性で劣り競争力が無いと判断し、コスト高だが仕方なく裏面照射型を採用することにした
上記三つくらいしか今回のセンサを作製した動機は私には思いつきません。
1)が理由なら、事前にHTC社と価格の折り合いはついているので問題はなさそうです。
が、2)もしくは3)が理由だとすると、コスト高な分薄利となり、企業としてはジリ貧の負のスパイラルに入りそうです。
以前、同じくchipworks社の解析記事の中で
chipworks社は2012年のスマホ及びタブレットのプライマリカメラのサプライヤーの勝者5社を挙げていますが、その中にST社は入っていません。
今回は、こんな状況の打破に向けてST社が上記2)か3)の経緯で作製したセンサではないかと個人的に予想しますが、だとしたら苦しい戦いがST社には待っていそうですね。
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