新年おめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。
新年一発目のエントリが他人のふんどしなのが個人的に不本意なのですが(^^;)、
年末恒例(←本来は新年恒例のデジタルカメラマガジン企画なはずですが、)
デジカメwatchに”カメラ8メーカー'15年はどうなる?”インタビューが掲載されていますので、私の備忘録的にも気になったところ・感じた印象を記録に残しておきたいと思います。
(↑これ、デジカメマガジンに載る記事なのに、何でネットで無料で読めるんでしょう?とても不思議です)
(という訳で、エントリが途中になっている、
2月のISSCCのForzaとNHKの1.3億画素センサについてのエントリは一端中断させていただきます^^;)
このインタビュー、あまり踏み込んだ質問はしていない(載せていないだけ?)のですが、
各社にほぼ同様の内容の質問をぶつけているところに価値があるかなと私は感じてます。
ちなみに念のため、8メーカーとは以下。(順不同)
キヤノン/ニコン/ソニー/富士フイルム/オリンパス/パナソニック/リコー・ペンタックス/シグマ
ざっと読みまして、その中で私がいくつか気になったトピックを(私が読んだ解釈も含みますが)列挙させていただきます。(順不同。誤ってたらご容赦・ご指摘ください)
[7回]
1) 各社、中判カメラの具体的な予定は無し
(ペンタックスは既に一応の中判サイズカメラを持っているのでこの項の例外)
↑ミラーレス、レンズ固定式も含めて。
手を出すリソースが無いのと、中判カメラがビジネスになるか懐疑的な面と双方がその判断の元になっている空気
2) パナソニックとリコー(ペンタックス)以外は、今自社が展開している最大フォーマット以上の素子サイズ・イメージサークルのフォーマットを展開する予定無し
↑わかりにくい言い方になりましたが、つまり、キヤノン/ニコン/ソニーは1)の通り中判カメラの予定は無く、富士とシグマはフルサイズカメラの予定は無く、オリンパスはAPS-Cサイズ素子搭載カメラの予定等は無く。
で、
パナソニックは近日中の具体的な予定は無さそうですが、将来の8K動画の時代を見越して、フォーサーズサイズ以上の素子搭載カメラの含みを残し、
リコー・ペンタックスは(例年のことではあるのですが^^;)フルサイズカメラ発売の可能性を言及し、
しかし今回は「フルサイズ素子搭載カメラの事業判断のジャッジを本年中に行いたい」と、やや日程面で具体的な発言をされているのは個人的には注目です。
(ただ、余計なお世話ではあるのですが、リコー・ペンタックスのカメラとレンズの発売ペースを見ていると、”これでフルサイズラインナップを持っちゃうと、果たして他の素子フォーマットのカメラとレンズをちゃんと開発し続けられるのだろうか?”と心配になってしまいます^^;)
3) ミラーレスカメラの一眼レフカメラに対する優位性は、各社概略以下と考えている
ミラーショックが無い / 撮影前にEVFで撮影パラメータを反映させたプレビューが可能 / (同等性能であれば)小型軽量化が可能
対して、一眼レフの優位性は、光学ファインダーの遅延レス / AFはまだ有利 / レンズ資産等のシステムの完成度
↑正直ありきたりというか、開発者で無くても感じている通常の考えだと思うのですが、
面白いのは
ソニーが”圧倒的なスペースがあるので、何かミラーレスカメラに無い機構を積んで差別化出来れば”という様なニュアンスの回答をされているのと、
パナソニックが、”ミラーレスカメラはファインダーで動画が撮れる”と。←個人的に”なるほど”と思いました。液晶モニタでは外光の影響で見にくい等実用的な面から、撮影者の気分や趣向等の両面において、一部の動画メインユーザーの間では大きなアピールポイントになるかなと。
また、
キヤノンとシグマの回答内で、”将来はミラーレスが一眼レフにとってかわる可能性がある”と”共にレンズ交換式カメラは一眼レフが主力であるメーカーが”回答しているところが興味深いところです。
反論はあろうかと思いますが、個人的には(レンズ交換式カメラの市場が存続し続ける前提であれば)いつかは、プロ及びマニア以外の市場はミラーレスカメラが受け持つ世の中がくるだろうと思っていますので、一眼レフカメラメインのメーカーがどこで舵を本格的に切り始めるのかに興味を持っています。
(↑私個人はお手頃&高性能の一眼レフカメラの存続を希望する者ではありますが^^;)
4) 各社概略・総じて
・将来全く新しいタイプのカメラの出現は肯定するものの、具体像については言及無し
↑まあこんなものがあったとしてこの場で具体像を暴露する会社は無いと思いますが(^^;)
・画像処理は積極的に採用すべきか?との問いには多くのメーカーが否定はしないものの、”まずはレンズや撮像素子の素の性能を上げることが重要”という模範(?^^;)回答
パナソニックとリコー・ペンタックスは、画像処理を積極活用すべしのベクトルの回答
・カメラのモデルチェンジサイクルは今よりは長くなる傾向だろう
・動画機能は必須か?⇒ 必須 (除くシグマ←これは撮像素子の素性やシグマにつく顧客の独自性を考慮すると大変理解できる回答です^^;)
・レンズ性能の進化スピードは、アナログ技術(?)の結晶だけに(撮像素子等ほどには)急速に進歩することは無いだろう。地道な技術改良を積み上げ続けるしか無い。
・記録メディアとしてのカードは、なくなることは無いだろう(←cloud文化がいくら進もうとも)
↑例外はリコーが、クラウドが十分な社会基盤になったならば、”内蔵メモリ+クラウド保存というカメラ形態にはなるかも”という趣旨の回答。
・スマホは敵ではなく、今後もスマホとの親和性をカメラは高めていく必要あり
・一眼レフの販売量が減っているのは主にエントリー機種起因 (←いくつかのメーカーが同様の趣旨で回答)
・手振れ補正は光学式から電子式に移行したりするか?の問いに、(各社大枠)
”画質のことを考えるとすぐには光学式の手振れ補正が無くなるとは思えない”
5) メーカー個別の話
【シグマ】
・SD1の後継機はすぐでは無いがそう遠くでも無い将来出す
リソースの問題もあるので、SDの多ラインナップ化は考えていない
・DPシリーズのズームレンズモデルも(お客の画質要望が相当高いので)考えていない
【オリンパス】
・フォーサーズ素子搭載のレンズ固定式カメラは研究中
↑この回答からすると、個人的には意外なことに、
オリンパスは防塵・防滴、もしくは高倍率ズームのコンパクトデジカメには熱心ですが、
大判素子搭載のプレミアムハイエンドなコンパクトデジカメは当面出す予定は無いということになると思います。
で、以下からが、本blogの本道(?)、
撮像素子に直接関係する質問事項の箇所になります。
(本題を最初に持ってこないで、最後にしてしまうのは私の悪い癖です^^;)
5) 各社概略・総じて
”カメラの高画素化はゆるりと今後も続くだろう”
パナソニックは完全に静止画と動画の融合を視野に入れていて、近い将来の放送8K化を間違い無く考慮に入れたカメラ開発計画を組んでいるなとの個人的に強く感じました。
また、
キヤノンは近日中の高画素カメラの登場を明言。
富士は逆に(?)「APS-Cサイズでは2500万画素程度が限界と考える」との回答。
確かに富士フイルムは、他社よりも常に一歩引いた(?)画素数トレンド(現在はAPS-Cで1600万画素。多くの会社が2400万画素で、最高はSamsungの2800万画素)であることは気づいていたのですが、ここまで明確に限界を示すのは、個人的に完全に想定外でした。
独自のカラーフィルタ配列や、懐古趣味(?)デザインによる完全プレミアムイメージ戦略など、常に他社と差別化を図る会社らしく、
”常に競争軸を他社と異なるところにもってこよう”という思想を強く感じました。
6) 撮像素子の進化に望むことは?の問いに対し、各社色々回答はありましたが、
ほぼ共通している回答が一つ
(信号読み出しの)高速化
その理由は純粋に動画フレームレートや連写スピードを上げたいというものと、メーカーによっては、”(像面位相差AFの)高速化のため”というものも。
ここで面白いと思ったのが、
パナソニックの「イメージャーの読み出しが240fps以上になれば事実上ローリングシャッター歪みは問題無くなる。グローバルシャッターにするか速く読み出すのか、カメラの新たな転換点になってくると思う」という趣旨の回答。
以前
このエントリの冒頭で私が気にした論点と全く同様の趣旨。
”240fps以上であればローリングシャッター歪みは事実上問題無い”の根拠となる話は全く出てきませんでした。
が、上記以前のエントリの
Aptina自身は、Nikon1カメラの一部でメカシャッターをなくした機種に採用されたセンサを設計する際には、”センサフレームレートが80fps以上あればひとまずローリングシャッター歪は問題無かろう”というところからスタートしていますので、
今回のパナソニックの、240fpsをローリングシャッター歪が出ない基準とすることは(Aptina基準の更に3倍高速なフレームレートであることから)、一般的な動体被写体の範囲だと問題無いと考えても確かに良さそうに思います。
何が言いたかったかといいますと、
「シャッターはメカから電子シャッターに取って代わると思うか?」との質問に多少絡んでくるのですが、
富士フイルムを筆頭に”グローバルシャッターがセンサに欲しい”という趣旨の回答をしている会社は多く、
それらの会社は最終的にはグローバルシャッターを(メカシャッターの音やフィーリングといった官能的な要素を除いては)理想としているのに対し、
パナソニックだけは”同じ電子シャッターでもグローバルシャッターでは無く、センサのフレームレートを上げることで将来も対応する方が、センサ(カメラ)トータルの性能を考慮すると得策な可能性も大いにある”(むしろその可能性の方が高い)と考えているのでは?と私は感じて興味深かったという話です。
そういう目で見ると、
Aptinaや
ソニー、
CMOSISが着々とグローバルシャッタ搭載センサのラインナップを増やしている中、パナソニック(のCMOSイメージセンサ)においてはその気配が感じられないのは、まだグローバルシャッタをデジカメにおいてはまだ本命視していないからなのかなと思い始めました。
7) 将来全く新たな方式or構造のイメージセンサが出てくる可能性は?
この質問の項の回答で興味深かったのは以下。
ソニー「まだ学会レベルを見渡しても存在しないようだ」
富士フイルム「有機撮像素子の話もあるが、まだ当面先の話」
有機撮像素子で個人的にtopを走っているだろうと予想していた、ソニー、富士、パナソニックにおいても、この回答のニュアンスでは、今後まず2~3年は難しそうな空気と私は読みました。
実際にこの手の撮像素子が搭載されたカメラが発売されて私が購入するかどうかはともかく、そういった素子搭載カメラの登場は期待していただけに、”最近富士のXPro2の噂で頻繁に有機撮像素子採用の話があったけど、やっぱりまだ時間がかかるんだなー”という素直に残念な感想です(--;)。
8) パナソニックあてのみの質問で興味深かった件
Q.”動画を搭載することで一番大変なことは何でしょうか?”
⇒A.”開発陣が最も苦労するのは熱対策ですね”
これは主に4K動画を意識してのコメントになると思っていますが、やはりなとの印象です。
オリンパスのOM-D EM1がファームアップで4K動画に対応するという様な噂がありましたが(商売上も)当然のことながら結局実現しませんでしたし、その他にも”搭載センサは4K30pを吐き出せる能力はあるはずなのにカメラでは4K動画非対応”というカメラも散見されます(例えば
GoProHEROはセンサは35pまで対応ですが、カメラは15pまで)。
実際、バッファメモリ量やデータ転送のバスの帯域、メモリ自体の書き込み速度、画像処理のスピード等もネックにはなるのでしょうが、もし本当に4K動画が必要な製品なのであれば、それらはお金を掛ければある程度除去できる障壁の様に感じます。
が、熱対策とバッテリーの持ちだけは筐体の大きさ等の制約がある限り、お金を掛けても工夫しない限りある所で頭打ちになってしまいそうに素人目にも感じます。
逆に言うと、ここがメーカーの腕の見せ所で、GH4、LZ1000等での他社に先駆けたいち早い4K動画対応を見ても、(以前も何かのエントリで書きましたが)パナソニックがこの熱対策の分野で現状頭一つ抜けていて、かつ4K、8Kへの動画対応への意識が最も高いメーカーなのだろうなと、今回の横並びインタビューを読んでその意を強くしました。
他人のふんどしで長くなりましたが(^^;)、新年一発目のエントリはこんなところで終わろうと思います。
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