ISSCC2012において、ソニーがグローバルシャッタ搭載センサについて報告を行った(←SESSION22のトップ)ことを知り、そして
同じ年内のinterBee前に、PMW-F55とF5というデジタルシネマカメラを発表したことを知りました。更には
F55の方にはフレームイメージスキャンという名のグローバルシャッタ機能が搭載された撮像素子(CMOSイメージセンサ/imager)を採用したことも・・・。
”きっとISSCCで発表されたのと同じ方法でセンサ作ってF55に載せたんだろうな”
と思っていました。何故ならソニーはその前年、同じく
ISSCCで発表された超高速デジタル出力センサを、その後PMW-F65というフラグシップのデジタルシネマカメラ搭載の撮像素子に反映させたように思ったからです。
↑この時は、ソニーの公式HPにも発表した技術の内容を具体的に示す資料がupされていました(←しかし、今はリンクを切られてしまったようです(T_T))し、デジカメwatchにも超具体的な内容が報告されていましたから、ISSCCに参加していなくても、ある程度その内容を一般人も知ることが出来ました。
が、
昨年2012年のISSCCのソニーの発表内容が探せど探せどネット上で見つけることが出来ずにいました。
これは今も変わりません。
前々回のエントリで、CMOSIS社のセンサのグローバルシャッタ方式をupした際、”同じシネマカメラのグローバルシャッタ方式がどうなっているのかやっぱり知りたいな”と思ったのが今回のエントリの動機です。
[4回]
そこで考えました。
”
特許はどうだろうか?”
普通、新しいことを世に発表する前に、特許出願は済ませておくものです。
何故なら発表した瞬間に”公知”となってしまい、その時点で特許を少なくとも申請していなければ、”誰でも使える技術”とされてしまうからです。
出願人:ソニー
内容:グローバルシャッタ機能
上記二つのアンドで検索を掛けた結果、引っかかってきたのが以下9件でした。
特開2013-021471 固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、及び電子機器
特開2013-005397 電子機器、電子機器の駆動方法
特開2013-005396 固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、及び電子機器
特開2011-166171 固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、及び電子機器
特開2011-166170 固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、及び電子機器
特開2010-219974 固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法および電子機器
特開2010-219339 固体撮像装置、固体撮像装置の製造方法、固体撮像装置の駆動方法、及び電子機器
特開2010-213140 固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法および電子機器
特開2010-182887 固体撮像装置、固体撮像装置の製造方法、固体撮像装置の駆動方法、電子機器
※上記特許は、”公開特許”であり、”登録特許”ではありません。つまり、その後どうなったかはともかく、上記申請時点ではまだ日本の特許庁が”ソニーの権利技術”と認めたものではありません。
実は、検索内容を”グローバルシャッタ機能”ではなく、単なる”グローバルシャッタ”だけにすると30数件ひっかかったのですが、ちょっと30数件も目を通す気は起きなかったので、ひとまず上記で妥協しました(^^;)。
で、例えば古い方からいくと、
特開2010-219974などは(特開2010-213140なんかもほとんど同じ様に見える。何故かこちらはSFがPMOSだけど)・・・
↑ 従来の一般的なCMOSセンサの画素部にキャパシタを一つ追加する簡素な構成
メリット:追加素子が少ないため、微細化に向く / (駆動方法を見ると)FDのリセットノイズもCDS可能
これは前々回のエントリでチラッと書いた
”一つのスイッチと容量を追加したような”タイプですね。
しかし、結論を言うと、恐らく
ソニーがこの方式を採用している可能性は限りなく低いと見ました。
何故なら、リセットノイズは除去可能ですが、もう一つの
一般的なCMOSセンサにおけるグローバルシャッタ機能の弱点を克服できていなさそうだからです。
それは
”FD部(28)に信号電荷を長時間保持し続けなければならない”
かなり凝った作りをしない限り、一般的なCMOSプロセスで製造されるFD部は
”フォトダイオードの様な良好な電荷蓄積部たりえ”ません。
シリコン表面からの暗電流の発生も大きいですし、容量値も大きくないのでリークに弱いです(後はフォトダイオードに劣るものではないですが、遮光するのも難易度高そうです)。
つまり
このソニー特許件では、画面の上下で最後に読み出す側になればなるほど画質劣化は避けられないと思います。
で、次に特許の申請順でいくと ”特開2010-219339”あたり(2011-166170と2011-166171などおほぼ同様に見える)。
↑ 駆動よりも構成よりも、どちらかと言うと”製造方法”に重きが置かれているように見える特許。
ストレートに言うと
”裏面照射型で構成されたグローバルシャッタ機能搭載センサ”の趣き。
フォトダイオードからの一括転送された信号電荷を保持する専用のキャパシタ61を用意していて、
かつ、それが
・
表面側に用意されているため、フォトダイオードと同じ程度の容量値を用意しても、フォトダイオード自体の面積を圧迫しないこと
・また、その
容量61は、自身を構成するメタル電極(27)によって遮光もキチンとされている良好な電荷蓄積部となっている
ことが特徴に見えます。
後、容量61の対向電極が転送MOSゲート電極というのも特徴的。何か意味あるんでしょうか?それとも単に、構造の勘弁さの都合上適当だったという程度の意味でしょうか?
この件は、表面照射型に対して(裏面照射型であるが故に)製造工程が複雑で(恐らくコストup)あるということ以外は、フォトダイオードの面積も確保出来るし、リセットノイズも除去できるし完璧な様に見えます・・・
が、
やはりソニーがこの方式を採用している可能性は低いと見ます。
理由は一つ上と同じで、
”良好な電荷蓄積部とは言えないN型拡散層16に長時間電荷を保持し続けなければならないことになっているから”です。
良く断面図を見ると、
信号電荷を蓄積するノード56の一部に、裏面側(光がガンガン当たる側)にあるN+拡散層16が含まれていることに気づきました。
これはある意味一つ上の件よりも遮光し辛いという意味では改悪されてしまっています。ここで保持期間中に光電変換されてしまった分が信号電荷扱いになってしまい、下手をすると先に読み出す行と後から読み出す行とで感度がズレてしまうことにもなりかねません。
「おいおい、じゃあ一体どれがソニーが採用してる方法だと思ってるんだよ!!」
すみませんm(__)m
ちょっと引っ張り過ぎて今回のエントリ長くなり過ぎたので、次回持ち越したいと思います(^^;)
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