時間が経ってしまいましたが、
前回、
前々回に引き続き、
NHK技研公開2013ネタで。
前回と同じ
”次世代撮像デバイスに向けた要素技術”のブースから”有機撮像デバイス”の要素技術開発について。
↑前回の立体構造CMOSインバータと合わせて一つのブースとして出展。
マニアックな内容ながら、結構人気があって、
そこそこの人だかりでした。
実は、昨年度は双方の要素技術開発とも”ポスター展示”の扱いで、”壁面にポスター一枚に展示説明員一人”の扱いだったので、(今年のブースへの昇格は、相席とはいえ)
NHK技研の中でも双方ともこの一年で研究成果が徐々に認められてきた証なのではないかと、私が勝手に憶測し、ほくそ笑んでました(^^;)
[3回]
さて、有機撮像デバイスの要素開発についても、写真でサラッと昨年からの流れを以下で簡単に。
↑このパネルは今年のものですが、
NHKがやろうとしている有機撮像デバイスは本格的なもので、RGB3層とも有機膜を用いて、シリコンのフォトダイオードはもちろん、
カラーフィルタも一切用いない方式を狙っています。
で、パネル中央部の断面の簡易図を見るとわかるのですが、3層有機膜が入るので、
それぞれの有機膜の間に(有機膜から光電荷を引き抜いたりする)
TFT回路が必要になります。
ここで「あれ?」となるのですが、
この構造だと、一番上の青色光を吸収する有機膜層は良いのですが、
青色用のTFT回路が入ってしまった下のグリーンとレッドの層に光が遮断されて届かなくなってしまうじゃないか??
そこで
昨年、NHK技研では、この有機撮像デバイス用に
ほぼ透明なTFT回路をトランジスタの電極などをITOにすることによって作製して展示していました。
それが以下の写真です。
↑左が従来電極のもの、右のうっすらパタンが見える方がITOによって電極などが作製されたもの。
透過率は8割だとか。
「
ん?8割で十分なのか?一番下の
赤だと2回TFT回路を通り抜けてこなければならないから0.8×0.8で都合
64%程度に減衰してしまうじゃないか?」
と思いましたが、ベイヤ配列のカラーフィルタの撮像素子を比較対象として良ければ、レッドは4つに1つの画素しかなく、この有機撮像素子で
最も効率の悪い最下層のレッドでも、全ての画素でレッドの情報が取れると思えばまだベイヤ配列カラーフィルタセンサに対しては利用効率が高いとも考えられるので、十分実用なのかもしれません。
また、「
そもそもTFT回路を途中で挟まずに、有機膜3層の下に全部置けばいいじゃないか?」
と思い、説明員に聞いてみましたが、
「
原理的には可能だが、光を集めている有機膜を突き抜けて電極を通すというのはあまり現実的なやり方じゃない」
というようなニュアンスの返事が返ってきました。
具体的にはどの程度現実的でないかは、私にはわかりませんが、言われてみれば確かにあまりそれも賢い方法じゃないのかなと納得はしました。
その他、去年の技研公開までで・・・
①有機膜の材料自体はRGBとも揃っている(←分光、量子効率共問題なしとの説明員の見解)
②従来100umの画素ピッチだったものを50umに縮め、それで12000画素(128×96)のセンサを試作した
また、去年時点での今後の課題は
③有機膜は高温に弱いため、低温(~150℃)での透明回路や層間絶縁膜の形成
④RGB3層合わせて10um以下の厚さに収まるように形成すること('12年の時点ではmmのオーダーの厚みだった)
⑤電極などからの暗電流
といった背景を受けて、今年は・・・
・
直接積層技術(←具体的にはどんな技術か不明)
を確立し、150℃以下で回路形成を可能にし、かつ150℃を数時間かけても、有機膜の光電流及び暗電流に問題となる経時変化が無いことを確認した ←ひとつ上の写真のボード
・
直接積層技術により、RとGの有機膜2層の積層まで実際に成功させた
↑これで厚みは数umになったと思われる
※実物は何故か写真撮影禁止であったため、写真は無し
上記までで、
昨年までの課題の③及び④の途中までは、この一年で解決できたことに。
説明の内容を信じる前提であれば、この手の研究的な内容のもので、1年でこれだけ進めば個人的には凄いのではないかと思います。
ただ、聞く限りまだ先は流そうで、
「来年までに何とか直接積層技術をもって、RGB3層を積めるようになっているようにがんばります」by説明員
また、電極からの暗電流が曲者の様で、
「電極からの暗電流をシールドするシールド材に適した材料や、またそれを150℃以下で積むのも難しい。下手をすると、より温度に強い有機膜材料の選定に戻る必要があるかも」←説明員から言われたことのイメージ(ニュアンス)を表現
(つまり昨年からの課題⑤はまだ残存)
また、質問し忘れましたが、そもそも
この技術開発は、画素ピッチが小さくなってきた際の感度低下を補うための技術開発ということになっていました。
ところが(仕方無いのですが、)
昨年の発表では、まだ画素ピッチ50um□。
現在主流の撮像素子の数um□の画素ピッチとはまだまだ比べられるレベルではありません。
恐らくこちらの方は、(今年どこにも記載がなかったことを鑑みると)ほとんど手付かずなのでしょう。
この先はまた来年のお楽しみとすることにしたいと思います。
最後に、有機撮像素子で撮影された画像が、ブラウン管(?)に表示されていた写真が以下です。
少し滲みが見られるのも、実用レベルにする手前で課題になりそうな感じでしょうか。
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