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Imager マニア

デジカメ / デジタルビデオカメラ / スマホ用の撮像素子(イメージセンサ/imager/CMOSセンサ)について、マニアな情報や私見を徒然なるままに述べるBlogです(^^;)

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Nikon V1 と ソニーα99 搭載センサの像面位相差AFの遮光について

 去る6月中旬、米国はユタで開催されていた2013 IISW(International Image Sensor Workshop)で、chipworksが発表した資料の中に、今回のタイトルのニコン V1 と sony α99 搭載撮像素子の像面位相差AF画素の平面及び断面写真が掲載されていました。

 像面位相差AF搭載撮像素子としては、富士フイルムのコンパクトが最初、次いでNikonV1とキヤノンの一眼レフ機、更にソニーのα99と続いています。(最近キヤノンは今後発売するEOS 70Dで新たな像面位相差AF画素センサを発表したばかり)

 以前、キヤノンとニコンの像面位相差AF画素の配置比較していた際には、双方とも上面からの顕微鏡写真のみで、詳細な画素の写真は(チップワークスが)出していなかったのですが、今回はそろそろ商品価値無しと見て(?)出してきてくれていましたので、以下転載。
 今回は、”そもそも像面位相差AF画素とはどうなっているのか?”という興味からのエントリです。

aptina.PNG←NikonV1搭載、Aptina製CMOSセンサの像面位相差AF画素平面拡大写真
 

拍手[4回]

 上図ニコンV1搭載のアプティナ製1インチセンサの像面位相差AF画素近辺の平面図、脚色に”Phase Detection Pixels (M1)”となっています。
このM1とは”1層目のMetal”という意味なはずです。
普通、半導体チップは、撮像素子に限らず大概配線層が複数の金属配線層(多くの場合アルミ(Al)かカッパー(銅=Cu))から成り立っており、今回の場合、”1層目のMetalって何?”というと
シリコン層に近い側(≒光入射する側とは反対側)から数えて、”1番目の金属配線層”という意味です。

 つまり、フォトダイオードに一番近い側で、位相差AF用の画素を半分遮光している訳です。
※上の写真では、ひし形が一つの画素(フォトダイオード)であろうと思います。このAptina製のセンサは、横一列ずっと位相差用のAF画素ですので、となりの遮光とくっついてチョウチョ型の遮光形状に見えるものと思います。
何故、遮光する側が左右交互に繰り替えされるのか?というと・・・・・・これは位相差AFの原理をどこかでお勉強下さい(←説明できるほど私に知識が無いため)(^^;)q

 originalの方のテキストを見ると、このAptinaのセンサの位相差検出画素について
”implemented in nine rows of green pixels extending horisontally nearly the entire width of the active pixel array”
(有効画素領域の水平方向のほぼ全ての幅に渡って延長されたグリーン画素の9行に存在している)
 有効画素領域のほぼ全幅に渡って位相差検出画素が存在していることは以前の写真から既に予想されたことですが、ここで気になったことは、
 1) グリーン画素を延伸している ←カラーフィルタがベイヤ配列のままではない
 2) 全画面でたったの9行しか位相差検出画素行が存在しない

 上記1)については、ベイヤ配列のままだと、同じ行には青-緑-青-緑・・・の繰り返し ←上図顕微鏡写真を見ると、どうも本来ブルー画素が存在する方に位相差検出画素を並べている
もし、このまま青と緑画素のまま位相差検出画素を作りこんでしまうと、位相差を検出するペアの画素で同じ光入射があっても検出感度に差が出てしまって恐らく位相差検出画素として機能しなくなってしまいます(少なくとも精度は落ちると思われます)。
なので、少なくとも位相差検出画素は同じカラーフィルタ画素に作らなければならないはずです。
ですので、位相差検出画素行はブルー画素配置をやめて全て1行グリーン画素にしてしまっていると思われます。

 上記2)については、個人的には
”9行しかない位相差検出画素行の間と間にAFしたい対象が入ってたらAF出来ないのじゃないの?”
という疑問が湧いてきました。最初に顕微鏡写真を見た時には”結構な密度で位相差AF行があるのだろう”と私は無意識に考えていたのです。
実際どう考えても、位相差を検出する画素に対象の光が届くことが無い訳ですから、そういう小さいAF対象の被写体があった場合、NikonV1では原理的に撮像素子でのAFは出来ないはずです。(←このカメラを私は持っていませんので検証した訳ではありません)
 しかし、よく考えると、カメラの背面モニタでタッチAFをする際、大概のカメラにおいてAF枠が出てくると思うのですが、そのAF枠の縦方向の大きさたるや、フレームの縦方向9分割したものより大きいことが多いように思います。
ですので、仮にこのAptinaのセンサの位相差検出画素行が9行均等に配置されていれば、カメラのAF枠の中に必ず1行は含まれることになるので、実際の使用上は問題にならないのかもしれません。


 遮光がメタルの1層目で行っているのはソニーのα99も同様な様で、以下同じくチップワークスより
sony.PNG←ソニーα99搭載ソニー製撮像素子
像面位相差AF画素断面図

写真のGreen画素のmasked pixelの”M1 Shield”が、像面位相差AF画素の遮光の様です。
※この断面だとあたかも画素一つ全てが遮光されてしまっているように見えますが、恐らく切った断面の方向の問題で、手前から奥に向かって切る断面であれば恐らく画素一部分しか遮光されていないものと思われます。

 この”各社センサの遮光が1層目のメタルで行われている”というのは恐らく偶然では無く必然です。
仮に3層目の配線層でのみ遮光した場合、斜め光などによる隣の画素等からの漏れ光が、位相差AFで遮光しているフォトダイオードにじゃんじゃん入ってしまうことになり(←フォトダイオード表面と遮光との間の距離が大きくなるため)、AFの精度に悪影響を与えてしまうからです。
ですので、各社もしコストに響かないのであれば、位相差AF画素専用の遮光層をフォトダイオード直上に設けたいと思っているのではないでしょうか?
 逆に言うと、”位相差AF用画素にはMETALの1層と同じ断面位置での遮光層で十分(使い物になる分離性能になる)”という同じ結論に各社至った ということも言えると思いますが。

 更に、このソニーとアプティナの位相差画素の配置で共通しているのが以下。

 3) 列では無く行方向にペアとしている位相差画素を配列している
  ※ソニーセンサの方もoriginalテキストに”phase detection pixel pairs have been incorporated within rows of active pixels.”とあり。

 4) 位相差検出画素のカラーフィルタはグリーン(緑)
  ※ソニーセンサの方も上記写真及びoriginalテキストに”incorporated only within green pixels

 3)の方については、必ずしも行で位相差検出しなければならない訳では無いはずです。何故ならば、発売されているキヤノンの像面位相差AFセンサの画素配置は、ペアとなっているであろう位相差画素が同じ行では無く、斜め方向でペアになっている様に見えるからです(リンク先二枚目の顕微鏡写真参照。←コの字と逆コの字のパタンに見え、このコの字と逆コの字がペアになるはずなので)
 しかし、上記2社のセンサが揃って列ではなく行方向に位相差検出画素を固めたのは、CMOSセンサが行順次露光及び読み出しという特徴を有しているためだと予想します。
特にニコンの方は動画でも撮像面位相差AFを使う機会があるため、この時はカメラのメカのシャッターを使用しない完全にセンサのローリングシャッターでの撮像となります。この場合厳密いは行ごとに被写体の露光のタイミングがズレるため、特に動き物に対してAFする際に列方向のペアの位相差画素配置だと位相差の検出タイミングに微妙なずれが生じてしまうはずです。
 まあ相当に微妙なズレであるはずなので、気にしなくても良い差である気もしますが、ズレは無い方が良いので深く考えなければ列では無く同じ行に配置するというのは納得のいくところです。
 または単純に、高速AFのために”AFの際には位相差AFが存在する行だけ”飛び飛びで読み出している可能性もあります。
この場合は、列方向に位相差検出画素を配置してしまうと、結局全行をAF時にも読み出さなければならなくなってしまうために、”列ではなく行に固めて配置”という結論に至るのかもしれません。


 上記4)については、"位相差検出画素のペアが同一色であれば、別にグリーンでなくても良いのでは?”
という疑問が湧きます。
 これについては恐らく両社とも、”普通に写真を撮る自然光で考えた場合3色の中であればグリーンが最も感度が高くなる可能性が高い”と踏んだのではないでしょうか?
AFするための画素(≒カラー画像を作るための画素では無い)なので、本来”色”という概念は不要のはずの画素です。
暗時でのAF限界を考えても感度は高ければ高いほど良い(←飽和さえしなければ)はずで、何ならW(ホワイト)画素でも良かったのではないでしょうか?
ただホワイトだと材料が一つ増えるし製造工程も増えるし・・・という訳でグリーンに落ち着いた・・・みたいな流れでは?と予想します。


 最後に、富士の位相差AF画素の構造は未だわかりませんが、これらのチップワークスの解析写真を見るとhmbさんおっしゃる様に「これまでAL配線での遮光を使ったAF画素ばかり」であることは非常に確率高そうです。

 とすると、最近発表されたキヤノンのEOS 70D搭載撮像素子の”一つの同一マイクロレンズ下のフォトダイオードを二つに分けて”AFを行う位相差AF画素の構造が、特許出願の通り”遮光層を用いずにPN分離でフォトダイオードを分割しているとすると、やはり今までとは異なった(性能はともかく、少なくともその取った方法と構造は)画期的な構造だったのだなと改めて思いました。


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屈折から回折へ

Imagerマニア さん

個人的には、同じレポートに掲載されたRX100センサーの断面に興味を持ちました。ソニーは、直ぐにでも垂直色分離センサーを造れそうですね。
また、ピクセルピッチが可視光の波長に近づいていますので、今後は回折の制御が重要になりそうです。

Re:屈折から回折へ

>hi-lowさん
お久しぶりでございます(笑)

>ソニーは、直ぐにでも垂直色分離センサーを造れそうですね。
 私にはこれが読み取れませんでした。どこが他社と比べて異なって上記推測が導けるのでしょうか?是非教えてください。

 またoriginalのテキストにソニーのRX100はadbancedなdual microlens構造だ みたいな記述があったのですが、どこが進んだdualマイクロレンズ構造なのかも良く理解できません。割と普通に見えるのですが・・・

 その他結構疑問は尽きないのですが・・・
①東芝の6T-SRAM搭載はAPS-C初とのことですが、これは何に使っているのか?←やはり何かの補正でしょうか?

②samsungとソニーのマイクロレンズ上の"oxide coating" 恐らく目的はマイクロレンズ上での反射防止だと思うのですが、目的は同じなのに厚さが全く異なるように見えます。明示はされていませんが、キヤノンにも同じものがある様に見えますが、こちらはソニーよりの厚さのよう。単にサムソンには厚く乗せる技術しか無いのか?はたまた何か別の狙いがあるのか?

③ソニーのWX100の方の"vertical transfer gate" こいつはどんな構造になっているのか?
この写真の断面だけでは確証が得られません。ホッチキスの針みたいなコの字型のものが垂直に刺さっているような全体形状をしているのでしょうか?

④originalのテキストにはAptinaセンサには”高感度モードの時にFD容量をboostするdual conversion gainが採用されている”とあるように思えるが、これは逆ではないか?highダイナミックレンジを狙う時にboost(←容量を大きく)するのでは?

⑤パナのセンサは図面にのみ、マイクロレンズ中心とフォトダイオード中心がシフトされていることがわかる注釈が入っているが、これは何故中心をずらしている?単にセンサ周辺部の断面図なだけ?

⑥Aptinaの位相差検出画素は1行緑画素だが、ソニーα99の方は同様に1行全てgreenなのか?それともベイヤ配列のまま、飛び飛びでgreen画素のみ位相差検出画素なのか?←文面と写真からでは私にはどちらか判別つかず


>ピクセルピッチが可視光の波長に近づいていますので、今後は回折の制御が重要になりそう
その通りの様ですね。この辺イメージ的にはパナが強そうに感じています。以前”回折を利用したマイクロレンズ”やちょっと前には同じ様に回折(あれは屈折?)カラーフィルタみたいなのを検討していた記事がありましたので。

  • imagerマニア
  • 2013/08/16(Fri.)

Re:Re: 屈折から回折へ

Imagerマニア さん

RX100センサーの回路スタックの断面を見て、この技術で垂直色分離センサーをつくってほしいとの願望でつい書いてしまいました。混乱させて申し訳ありません。

Advanced microlens technologyはソニーのマイクロレンズ関連技術の総称で、特に他と比べて優れているという意味ではないと思います。

疑問(2)に関して、Samsungの酸化物コートが分厚く見えるのは、観察断面がレンズの湾曲面になっているためでしょう。

回折を使った技術では、キヤノンが位相差検出AF素子に関する特許を出願しています。
http://egami.blog.so-net.ne.jp/2012-08-12

他のセンサーメーカーや光学素子メーカーも、回折と干渉の制御技術の研究をしていないはずはないので、今のマイクロレンズとは異なった原理の集光系が突然現れるかもしれません。

Re:Re:Re: 屈折から回折へ

>RX100センサーの回路スタックの断面を見て、この技術で垂直色分離センサーをつくってほしいとの願望でつい書いてしまいました。混乱させて申し訳ありません。
 いや問い詰めているつもりはなかったのですが、すみませんつい熱くなってしまい・・・恐縮です。
 最後のstack構造の方を見ておっしゃっていたのですね。まだそこまで読んでいなかったので(^^;)ついさっき読み終わりました。
ちなみにsonyの回路stack写真は画素ピッチ1.2um□とのことなのでRX100ではなさそうで、文中の[2]の注釈と合わせて考えると以下のISSCCの時の試作チップの写真の様ですね。
http://imager.no-mania.com/%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%9B%E6%90%AD%E8%BC%89%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B5/%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%80%80%E7%A9%8D%E5%B1%A4%E5%9E%8B%E8%A3%8F%E9%9D%A2%E7%85%A7%E5%B0%84%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B5-exmorrs-%E3%80%80%EF%BD%9Ei
 ↑この時のchipworksの解析によるとTSVのピッチは6umとのことで、これをこのまま画素一つずつに適用するのは(現在の画素ピッチのセンサでは)難しそうです。ただFOVEONと同じ構造であればソニーがすぐに垂直分離方式のセンサを製造可能であろうということに関して異論なしで、その通りなのだろうと思います。

>Advanced microlens technologyはソニーのマイクロレンズ関連技術の総称で、特に他と比べて優れているという意味ではないと思います。
了解です。ありがとうございます。知りませんでした。やっとoriginalテキストに納得です(^^)。

 キヤノンの特許もこってますね、一つの画素の中に導波路二つですか。画素ピッチ小さくなればなるほど厳しそうですね。まあdual pixel CMOS AF自体が画素ピッチ小さくなると厳しい方式の様に思えますが(^^;)

http://www.semicon.panasonic.co.jp/jp/products/imagesensors/mobile/
↑ここなんかのパナソニックの主張を読むと、裏面照射方式よりも表面照射+徹底的な光導波路構造の方が斜め入射光に対する特性は良さそうに思えてしまうのですが、パナソニックのセンサがほとんど採用されないのが何故なのか興味深いです。

>今のマイクロレンズとは異なった原理の集光系が突然現れるかもしれません。
 こういうのおもしろいですね~。期待したいです(^^)

ps しかしいくら自分達で解析したからといって、公式な場で他社のチップのネタを使って恐らくその他社の人間がいる前で報告発表する(←chipworks)というのは新鮮です。そういうことって許されているのですね・・・

  • imagerマニア
  • 2013/08/18(Sun.)

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