今回は、
”撮像素子メーカーが発表はしているが、まだ世の中のどのカメラにも搭載されていない”(と思われる)※センサ特集です。
============ ’13/05/28追記 ===================================
※コメント欄でhmbさんが教えてくださいました。ありがとうございました。
この
AproLinkという会社、私は知りませんでしたが、HPを見ると・・・
”
株式会社アプロリンクは、画像処理分野を中心とした国内外の最先端製品の紹介・アドバイス・販売を行う会社として、2006年5月に設立。"One Stop Buying" をモットーとし、世界の先端企業と密接な関係を持ち、最新製品のマーケティング及び販売をいたしております。”
とのことです。
←以下のフルサイズ撮像素子搭載の、マシンビジョン、軍事、科学用途、更に書画カメラ(←図書館の貴重な蔵書などを電子化して残す用途?)。
開発中の様です。
これで私の
「このセンサを採用するカメラメーカーはないだろう」
という予想は当たりそうですが、この
フルサイズ素子を搭載したカメラとその写真を観てみたいという希望は叶えられなくなりそうです(^^;)
業務用ビデオ機、シネマカメラ以外の業務、及び産業用カメラは私の全くの守備範囲外(^^;)
しかし、何故この用途でフルサイズ35mmフォーマットでなければならなかったのだろう?もっと小さい素子で安く小さくした方が受けるのでは? この世界ではこういうカメラが望まれるのでしょうか?
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↑ 以前エントリした
Blackmagic Design Production Camera 4K 搭載撮像素子の設計メーカー”CMOSIS社”の
フルサイズ7000万画素センサ(CMOSセンサ/撮像素子)
[1回]
上記CMOSIS社の7000万画素センサの
特徴は、何と言ってもその画素数でしょう。
10000(H)×7096(V) ・・・ 何という多画素数(^^;)
動画の世界で現在普及が始まった4K×2K(←フルハイビジョンの4倍)の高画素数が、4面入ってまだ上下左右に画素が余る多さです。
CMOSIS社のHPには想定アプリは記載されていないように見えますが、
その
35mmという光学フォーマット
及び
概略3:2のアスペクト比
から、
一眼レフカメラ搭載を想定していることは間違いないと思われます。
ちなみに、私の知る限り、現在35mmフォーマットの一眼レフカメラで最も多画素なのが、nikonのD800及び800E。
それでも36Mpixなので、ほぼ倍の画素数になります。
上記HPから画素数及びセンササイズ以外の主要なspecを拾ってみると・・・
■画素ピッチ:3.1um
■Frame rate:3fps
■アナログ8チャンネル出力
■飽和電子数:13000電子
■供給電圧:3.3V
■消費電力:300mW
■PKG:65pin PGA
■グローバルシャッタ
非搭載
やはり当たり前ですが、いくらフルサイズの大きさといえども、7000万画素となってしまうと画素ピッチは一眼レフカメラとしては極小の3.1um。
これは、東芝やニコン(ルネサス)のAPS-Cの2400万画素センサはもちろん、4/3rdsの1600万画素センサよりも小さい値となります。
そのせいもあってか、
飽和電子数は13000電子。
例えば、以前このblogで紹介した
オリンパスが2013年のISSCCで発表した積層型のグローバルシャッタ搭載の4.3um画素ピッチセンサの飽和ホール数が30000ホール。
画素ピッチが4.3umと3.1umと異なり面積はこれの2乗比になる上に、画素の中に詰め込む飽和に寄与しないトランジスタの面積は大して変わらないと仮定すると、この減少幅は納得は出来るのですが、
私が納得しても、フルサイズの一眼レフを作るシステム側の人間が納得するかはまた別だと思われます(^^;)
更に
画素数が多いことの弊害の一つにフレームレートの低さ(3fps)。
まあ、ただこちらは想定エンドユーザーを風景撮りの人とすれば、許容してもらえる範囲かもしれません。
ただ、スタジオでモデルさんを撮る様な人にとっては、マイナス点とみられてしまうスペックではないでしょうか。
ただ、上記弊害と引き換えか、
フルサイズ7000万画素センサとしては破格の300mWという低消費電力。
これは、以前このblogで取り上げた
小型アクションカム”Gopro HERO3”搭載のソニー製センサの417mWをも下回っています(←フレームレートは全く異なるとはいえ・・・)。
更に、エンドユーザーには無関係ではありますが、
供給電源が3.3V一つで良いという点とPKGのpin数が今日日65pinというのもそれぞれ、システム側の人間と工場で実際モノを作る人間から見れば、ありがたい点ではないでしょうか。
上記pin数の少なさと低消費電力に一役買っている可能性があるのが、
アナログ出力の8チャンネル出力。
CMOSIS社の他のセンサラインナップを見ると、他は軒並みLVDS出力センサです。
つまり、このセンサは何等かの意図か制約を受けてのアナログ出力になっている様です。
私が考えられるのは、
チップサイズ(コスト) か
消費電力
信号のデジタル化に必要な回路をチップ上から削減し、フルサイズという半導体としては化け物の様なチップサイズの周辺回路の増大を少しでも抑えようとしたのか、
同じく、信号のデジタル化に必要な回路をチップ上から削減し、その回路が必要とする消費電力を削減したのか、
はたまたその両方か。
そして、CMOSIS社のラインナップを見ると、やはり多くのセンサが搭載している
グローバルシャッタ機能の本センサへの非搭載。
これも、本来技術を持っているのであれば(他にネガティヴな要素が無いならば)、当然搭載した方が良い機能なはずです。
が、搭載しないのは、恐らくただでさえ狭い画素の中に余計な機能を載せると、ただでさえ少ない飽和電子数が減ってしまうというネガティヴ要素のせいではないでしょうか(←というか、3.1umともなると、そもそも飽和が減る以前に物理的に入らなかった可能性もありますが)。
それと、一眼レフ用途を想定すれば、カメラ側にメカニカルなシャッターがつきますので、センサの機能としてmustでは無いというのも合わせてでしょうか。
で、最後に気なる命題
”このセンサを採用する一眼レフカメラが、今後登場するのか?”
ですが、
私個人の答えは
否
と予想します。
(全く無名のメーカが搭載して発売したというパタンは除外させてもらうとして・・・ですが)
■まず、以下のメーカーは確実に自社センサを採用するでしょう。
キヤノン、ソニー、サムスン ・・・なので、このセンサの採用の目ほぼなし(←超多画素センサが欲しければ、自分達で作る)
■以下のメーカーは採用センサメーカーが(固定的に)既に存在し、やはり多画素センサが欲しければ、それらのメーカに製造を無難にお願いするはず
ニコン、富士フイルム
■以下のメーカーは、そもそもフルサイズの一眼レフ、もしくはミラーレスカメラを(遠い将来は除き)発売すること自体が無い
オリンパス、パナソニック、カシオ
残るはペンタックス(リコー)、ライカ、コダック、ハッセルブラッド等ですが、
ハッセルブラッドはCP+で、中身がソニーNEXというハリボテ(失礼)カメラを発表するくらいですから、最早自社で開発する能力はほとんど無いのでしょう。
コダックは最近一眼レフ自体を作っている気配がありません。
残るはペンタとライカですが・・・
ペンタは基本ソニー製のセンサ採用メーカーであることは有名ですが、以前サムスンのセンサを一度採用したという前科(!?)があり、一見可能性がある様にも思えます。
また、ライカはつい最近の”ライカM”というカメラで、まさにこの
CMOSIS社のセンサを採用した実績があり、最も可能性あるように思えます。
が、両社とも、画質は疎かにはしないメーカーの様に私は思います。
そもそも、フルサイズ撮像素子搭載の一眼レフカメラを買う層というのは、画質に最もうるさく、そして画質を求めるからフルサイズ素子搭載のカメラを買うという感じだと思います。
画質の代表格として、解像感、感度、飽和(≒ダイナミックレンジ)という特性があると思いますが、
このCMOSIS社製のセンサは、あまりに解像度に振り過ぎていて、上記購買層に対しては、特に飽和に難ありではないかと思います。
これだけの画素数のカメラであれば、三脚必須として、露光時間を調節すれば感度はある程度カバーできたとしても、やはりダイナミックレンジの狭さは、風景撮りをする人にとって致命的弱点ではないかと思います(まあ露光時間も水の流れとかを止めたい人にとっては問題ですが)。
そういうエンドユーザーの要望を考慮した時に、上記2社がそれでも(7000万画素という)宣伝文句獲りに走ってこのセンサを採用するという向きにはいかないように感じるからです。
まあ、
私の予想が外れても良いので、このセンサを搭載したカメラと写真を実際見てみたいという、興味深々な自分がまたいるのも事実なのですが(^^;)
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