上記1)の特許の出願日が
2010年11月24日
上記2)~4)の特許の出願日が全く一緒で
2011年2月28日
2)~4)の特許は元は同一の1件の特許だったものが、”何か長すぎね?分けた方がわかりやすくて通りやすいんじゃね?”的なことで、もしかしたら分割されたのでしょうか。
上記出願以前には、ソニーの糸長さんが湾曲センサの特許を出願されている気配はざっとみる限りありません。上記出願以降は(特許の出願から公開までは通常最低1年は要しますので)出願されている可能性もありますが、現状わかりません。が、2012年中の公開件にはなさそうです。
つまり、
重要そうな特許なのに、随分と短期間にまとめて出願し、そして以後はまた静観というような状態の様です(←ソニー内の他の方が書かれている可能性は大いにあるとしても)。
出願から今年のVLSIシンポジウムの発表までの期間が3年少々。
この期間に量産技術を立ち上げた(=確立した)という可能性は十分あり得る時間かもしれません。つまり、VLSIシンポジウムの発表と前後してカメラ製品の発表があってもおかしくないかもしれません。
で、実際の特許の方ですが、ざっと見るに、
上記1)と2)が私個人的にはおもしろそうだと興味を惹かれました。
今回はミーハーに反響の大きそうな2)
特開2012-182194の方を採りあげてみたいと思います(^^;)。
※ちなみに最初に本特許を読んでいて私が興味を魅かれたことをまとめて書いておくと、
1.冒頭の図面の様に、現在ソニーが想定している湾曲センサは、文字通り(なのか?)3次元にお椀形状をしていそう。
つまり二次元に?1方向のみロールしている形状(例えばセンサ長辺方向のみ湾曲していて短辺方向断面のみ見れば平面のまま)では無いよう。
2.(大きいサイズのセンサの方が湾曲させやすく、また商品としての訴求効果も大きいのでは?と考えていましたが、)特許内の明細で”例えば”的に引用されているセンサチップサイズは4×4mm□だった。
つまり、オーダーとしては1/3インチ型程度の大きさのチップを湾曲させることをまず念頭に置いているよう
3.以下複数の実施の形態のいずれかの方法により、撮像部の曲率を所要の範囲内で任意に可変させることが出来る
この素子は、ズームレンズを備えたカメラなどに適用するのが好適
(レンズが広角ズーム位置の時に以下複数の実施の形態のいずれかの方法により、曲率を大きくする)
[第一実施の形態]
↑チップ4と台座21を断面で見た図
・上側が光入射側
・台座21は、光入射側と反対側は閉じてなく開口(23)している
・33が磁性膜。31-1がマグネット
・マグネットを撮像領域中心部を通る”a”の線上を上下させる
・マグネットが近づくと引っ張り力大きくなり曲率大。離すと製造時の素の曲率に戻る
[第二実施の形態]
↑見方は以後も第一実施の形態と同様
・第一実施の形態と異なるのは、31が磁性コアにコイルが巻かれた電磁石31-2となっている点
・マグネットの様に上下させるのでは無く、コイルに流す電流を制御することによって引っ張り力を調節
・電流量⇒大で、磁力⇒大 = 曲率⇒大
[第三及び第四実施の形態]
↑図8が第三実施の形態、図9が第四実施の形態
・第一実施の形態及び第二実施の形態に対して、それぞれとも台座21の開口がなくなり、底板39が追加されている
・狙いは、底板39をする際に台座21の開口23内のガスを吸引し、内部を負圧とすることにより、センサチップの曲率をより精度良く設定すること。底板39はこの負圧を維持するため
・その後の曲率の制御の仕方は第一及び第二実施の形態と同様
[第五実施の形態]
・初めて磁力による曲率制御ではなくなる実施の形態
・開口部23内の気圧を吸引装置31-5によって、吸引制御する方式
・開口23内の負圧を大きくすると曲率が大きくなる
[第六実施の形態]
・熱的に体積収縮する接着剤43を開口部23内に重鎮し、温度制御部44を具備
・常温時、製造時の曲率。44で冷却時、接着剤43が収縮し、センサ曲率⇒大
[第十実施の形態]
※第七~九実施の形態は、本特許において本質的なものでないと思われるため割愛
・第二実施の形態の可変制御用の制御部の電磁石がコイル単体に変わったもの
・更にそのコイルの巻き方の形状や密度、センサとの距離を、所望の湾曲形状になるように調節してあるもの
・上図23~25は、コイルをそれぞれ巻き方や形状、配置を変更した例
・具体的な制御方法は、第二実施の形態同様、コイルに流す電流を調節することによる
・この方法を用いると、一律の曲率ではなく例えば中央部の曲率を大きく周辺部は小さく・・・といった制御も可能らしい。またメリットは不明だが、楕円に湾曲・・・等も可能なのだとか・・・
・上図26は、第十実施の形態の最後の例
・コイルは平面形状だが、巻く密度を調節したもの
・やはり、所望の湾曲形状になるように密度を変更している
(上図はセンサ中央部の湾曲率が大きくなるようにしたものだそう)
★で、結局ソニーはどの方法を用いるのか?
⇒いきなりこれを製品化するのは勇気がいるし難しそう。
最初の湾曲センサ搭載のカメラは、やはり単焦点レンズ機で、撮像素子の湾曲のみ(ズームレンズ用の可変制御不要なもの)できそう
当たり前過ぎる結論ですね(^^;)
しかし、これでは芸が無いですね。
ソニーのことなので、きっと何製品目かには本当にズームレンズ用にこの湾曲可変制御可能な撮像素子を実用化してくるのでしょう。
ということで、じゃあ・・・
★実際製品化する時にはどの方法をソニーは用いるのか?
この特許を見ていると
”他社が簡単に追随出来ないように、自社で使う予定は無いんだけど、同様の機構を実現出来そうな方法は思いつく限り全て書いておこう”
という匂いが凄くします。
私の予想する結論を先に書くと以下どちらかでは無いか?と思います。
ⅰ)最後の第十実施形態のコイルの形状や密度を弄ったもののどれか
ⅱ)図9の第四実施の形態の底板付きで負圧した上での電磁石制御
まず、他の実施の形態の方法と比較して、コイルに電流を流す方法が最も電気的で、制御性が良さそうに思うからです。
加えて、第一実施の形態等の”マグネットを上下させる”方法は、”上下させる機構及びそのスペースが必要”な点が、スマホやコンデジ等コンパクトなモバイル機器には特にデメリットに感じます。
また、第五実施の形態の”吸引方式”は、”吸引によってセンサの曲率を変えるなんて、一体どんだけの勢いでバキュームすればいいのよ?”という疑問があります。
感覚的には何か凄い大掛かりな馬力あるものがなければ無理な気が素人感覚ではするからです。下手すると動画撮影してズームすると”きゅいぃ~ん”みたいな音が録音されてるみたいな・・・(^^;)
一見すると、個人的に最も筋が良さそうに思えるのが、第六実施の形態の”熱収縮接着剤方式”。
しかし”温度制御部44”なるものが必要で、温度制御するのに電気(バッテリー)食いそうですし、そもそもこんなものが導入出来るのであれば、現状でもライブビュー時の発熱冷却用に導入されていてもおかしくなさそうです。
(つまり、現状コストやスペース等何等かの理由で導入出来ていないものを新たに導入するデメリットを上回るメリットをこの曲率可変制御センサが持たなければなりません ←逆に言うとメリットが上回れば、最も採用しそうな方式な様に個人的には思います。以前のエントリで”曲率を制御することによってバンドギャップが広がり暗電流が1/5になる”というソニーの発表内容はにわかには信じられないと書きましたが、それが実際はこの方式で曲率を上げる際に温度を下げるから暗電流が減るというのであれば納得できます。)
電磁石やコイルの方式も正直難がありそうに思います。
磁界が変化することによってセンサの中の電界に変化が起きて、センサ出力に(実際の絵には無い)ノイズが出そうに思うからです。
しかし、この方式が中でも最も採用されそうだと感じたのは、最初に書いた制御性の問題以外に、一つ上の写真の図27の様に、”撮像チップの裏面及び側面を金属膜68で覆う”という構成が実施例で述べられていたからです。
そしてその目的が、正に”コイルやマグネット、電磁石からの磁界が伝わらず、撮像チップの誤動作を防ぐことが出来る”とありました。
実際に物を作って動かした時の弊害を確認したかの様な記述になっており、リアリティを感じたから、という理由からでした。
ちなみに具体的な金属の例として、アルミ、銅、タングステン、チタンが挙げられています。
次回その気が起きましたら、もう一つの方の特許の方もエントリしてみようと思います。
その他、細かいことですが、私が気になったことを備忘録として以下に。
順不同
4.目的の曲率にするために、チップの厚さを調節しても良い。この際、チップが小さいほど薄くするのが好ましい
5..開口部23の上縁にテーパーを設けたのは、そうでない時に開口23のエッジ部分に位置するチップ箇所に応力を集中するのを避けるため
6.台座21は、撮像チップよりも膨張係数の大きい材料を用いる。
例えば、ステンレス鋼、アルミニウム
7.チップの外周部に平坦部25を設けることは、クラックなどでチップが損傷することを防ぐ上で重要
8. 上記外周部25が、台座21に4辺ともきっちり固着させれていることが(湾底部にしわを作らないために)重要
9.わざと曲率を可変調整して、画面中央にピントが合い、周辺部をボカす撮像も可能
10. 21の台座をそのままパッケージ(の一部)として用いても良い
↑この辺の記述に実用性を意識したリアリティを感じる
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