少し前の情報になってしまいますが、本年2月のISSCCでのソニーの発表センサ2件の内の2件目。
日経の記事に詳細が載っていましたので(ほぼ記事のままですが)ここにも残しておきたいと思います。
ちなみに1件目のソニー発表センサは
こちら。
今回ここに残しておくソニー発表センサは、
・通常時は、超低消費電力で(その分解像度やbit分解能はかなり落として)駆動しており
・撮影対象物(動体)を検知したらば、持っているフル解像度で撮像を行う
という、言ってみれば”高効率電力消費の監視カメラ用”という様なものです。
こういうの動作を行うセンサを一般に(?)”Event-Driven型センサ”と呼びます。
↑冒頭の日経記事のリンク先より 注釈を見ると、ISSCCのソニーの発表資料ままの様子
以後同様
[6回]
タイトル通り、
裏面積層型センサ。積層数は2レイヤー
”Row Drivers”(画素スイッチを駆動するための素子)までbottom層に位置していますので、
top層には表記通り、本当に画素しか存在しない様です。
(↑最近はこういうタイプの方が多そうですね、少なくともソニーセンサにおいては見ている限り)
そして上記資料にもありますが、
画素の電源が1.8V
記事中にも記載がありますが、通常スマホ用素子等では2.7V(他社も含めてこの手の発表の際にチェックしている限り、2.7~2.9Vというのが多い気がします)程度とのことなので、
明らかに画質よりも消費電力を重視して、画素を低電圧化している様です。
そういう意味では、bottomレイヤーのデジタル回路向けの電源と思われる”1.0V”というのも、
先に紹介したソニーの全画素ADセンサも消費電力に神経を使っているものと予想しますが、
それでも1.1Vであったことを思えば、
このセンサは更に消費電力優先で設計を行ったことが伺えます。
(↑先に紹介した全画素ADソニーセンサのbottom基板の使用プロセスが65nm、
一方このセンサのbottom基板使用プロセスが40nmという違いがあり、
一世代少々このセンサの方が進んでいるため、電源電圧を落としやすかったというのもあるのかもしれません・・・
であれば、先に紹介した「全画素ADセンサも、bottom基板をこちらのプロセスを使えば良かったじゃないか?」という気もしますが、
全画素ADセンサの方は、bottom基板にも2.9V用の素子を使用しなければならなかったことと関係があるのでしょうか?(こちらのセンサは1.8V用の素子があればOK))
↑発表したチップの諸特性一覧
画素数 :390万画素
画素ピッチ:1.5um□
消費電力 :
フル解像度時 95mW @60fps @10bit
センシングモード時 1.1mW @10fps @8bit
飽和電子数:7800電子 @60℃
感度 :8033電子/lx・sec @G画素
ランダムノイズ:1.8電子rms @アナログゲイン18dB
ダイナミックレンジ:
フル解像度時 67dB @10bit
センシングモード時:96dB (1~64000lux)
コンバージョンゲイン:55.8uV/e-
画素数は390万画素と、
ホームセキュリティーカメラ狙いという前提で、必要最低限に抑えて消費電力の増大を抑えているという仕様でしょうか。
画素ピッチ1.5umで飽和電子数が7800電子というのはパッと見ると「あれ?小さいな」と思うかもしれませんが、
画素電源電圧=1.8Vと下げていることを考慮すると妥当な線な気がします。←何となくです(^^;)
で、感度の8033e-/lx・secという有効数字がやたら厳密そうな(笑)数字ですが、
これについては良い数字なのか悪い数字なのか私にはピンときません。
というのは、普段ソニーはHP等で販売しているセンサの感度のスペックを表記する際、
”〇〇mV”
という単位で表現するため、それらの中で似た様な画素ピッチのセンサと直接比較が不能で、
かつ記憶にある限り、最近のソニーが学会等でこのくらいの画素ピッチのセンサを発表していないからです(^^;)
まあ他社のセンサスペックと比較すればなんとなくはわかるはずですが
ランダムノイズの1.8電子というのは、これもこれだけ見れば「ふ~ん」という感じですが、
後で出てくる、画素を2x4の8画素で回路を共有している構成で、FD容量がその分大きくなってしまうことを考えると、頑張っている数字な気がします。
ダイナミックレンジが、高画質なはずのフル解像度時よりも、低解像度時であるセンシングモード時の方が遥かに大きいという謎な?数字。
これは恐らくですが、以下の様な理由からではないでしょうか。
1) (後に出てきますが、)センシングモード(≒低消費電力モード)時は、徹底的に画素加算や平均を行っていることにより、ノイズが平滑化?されて減っているだろうこと
2) センシングモード時は、低消費電力化のために8bit分解能での駆動になっているので、ノイズが8bitの分解能の粗さで丸められて(?8bitの粗い分解能にノイズがある程度埋もれて)ノイズがかき消されて(?)いるのではないか
あとはこれがダイナミックレンジの計算にどう反映されるのかされないのかわからないのですが、(これも後に出てくる)センシングモード時は、行ごとに露光時間の長短を変更して、
後段の処理でHDR処理をされていること
(↑ちなみにこの駆動処理が、センシングモード時の64000luxという高照度下までのハイダイナミックレンジにつながっているのだと思います)
などのいずれかが、
このセンサのセンシングモード時の96dBという異様なダイナミックレンジの広さにつながっているのではないでしょうか。
で、当然このセンサの売りである低消費電力。
元記事中にもありますが、一般的なFHD(1920x1080)解像度で60fpsの監視カメラ用素子の消費電力はISPも含めて1.34Wだとか。
↑この時引き合いに出されている監視カメラ用素子の分解能が10bitなのか12bitなのか気になりますが、
とにかくそれと比べると1/10以下(95mW)で、
センシングモード時は更にその約1/100(1.1mW)という小ささです
・・・
・・・なのですが、少し気になることがありまして、
実は同じ
ISSCCという舞台で、数年前(=2015年)にも
主目的はともかく、センサの駆動方法(つまり動体を検知するまでは省電力モードで動いていて、動体検知するとフル解像度モードで動くという)が基本的には同じセンサがSamsungから発表されていました。
上記Samsungの休眠モード?となっている、今回のソニーセンサで言うところのセンシングモード時の消費電力がなんと
45.5uW ←単位がmWでないところにご留意
この休眠モード時の消費電力の小ささは半端無い数字になっています。
フル解像度時の消費電力の方も23mW程度の計算。
休眠モード時のAD分解能は同じく8bitで、フレームレートは15fpsと少々上回っている状態(今回のソニーセンサは10fps)。
'15年のSamsungセンサの画素数が不明なので、今回のソニーセンサと消費電力を公平に比較できないのですが、モバイル、ウェアラブル向けということなので100万画素のオーダーではあったのでは?と推測するのですが・・・
更に、私の様な第三者やギミック好きが興味を惹かれるのは、この時のSamsungのセンサ、
休眠モード時の低消費電力手法が、解像度や分解能を落とすのみに留まらず、
通常時に列アンプとして使われている素子が、休眠モード時には逐次比較型ADにトランスフォームしてADの低消費電力化を進めていたり、
休眠モード時の画素電源が0.9Vという理解できないほどの低電圧駆動かつ転送トランジスタがONしっぱなしになるというギミックが仕込まれており、
今年発表の本件ソニーセンサよりも正直アイデアというか攻めっぷりとしては上に感じてしまいます(^^;)
まあしかし、そんなことはISSCCの採択選考委員?の方は百も承知で今回のソニーセンサを選んでいる訳ですから、
ノーマル駆動時の画質がSamsungのセンサよりも全然素晴らしいスペックだったとか、
そもともSamsungセンサの方は、恐らく画素電源0.9V駆動ではまともな飽和電子数が稼げなかったでしょうから、モバイル、ウェアラブル用途と言っておきながら屋外では休眠モード時の動体検知が実際には使い物にならないとか、
←このSamsungのセンサが搭載されているというモバイルやウェアラブル機器を見聞きしないことからも、なんとなく今回のソニーセンサの方が実用度は高いのだろうなという気はするのですが・・・
・・・まあしかし、学会とはスペック競争な面も持ち合わせているのではと思う身としては、ちょっとこのSamsungセンサの前例は、今回のこちらの方のソニーセンサの方の凄さを若干霞めることになってしまってる気がするなぁと。
もうたいがい書きたいことは書いたのですが、元記事の途中のところまでしか書けていませんので、もしかしたら来週以降本件続けるかもしれません。
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