CIPAが今年の3月分までのデータを公表。
'17年一四半期終わって、なんとコンパクトデジカメもレンズ交換式カメラも双方揃って対前年度超え。
昨年のこの時期はまだ熊本の震災の影響が出る前ですから、純粋に一四半期で見ると昨年を上回ってますね。
そしてデジカメ各社の'16年度決算発表が始まり、現在のところ
キヤノン
ソニー
リコー
の3社が発表済み。
あとはオリンパスが週明け発表で、残りがGW明けた後の週に発表ですね。
(
富士フイルムはゴタゴタしている様ですが、決算発表日はまだ決まっていないですかね)
リコーはデジカメについては決算発表では触れず(←これは以前から)。
ソニーは好調そうに見えるのに、
それでも'16年度は(ソニー曰く)主に熊本の震災と為替の影響で減収減益。(←p.13)
ちなみに
ソニーの半導体(≒イメージセンサ)部門はモロに熊本の震災のダメージを受けたことと、カメラモジュール事業の不調により'16年度は意外なことに¥78億の赤字(゜0゜)(←p.15)。
しかし、今年度'17年度は急回復急成長して増収増益。¥1200億の黒字計画です。凄い(^^;)
どうも主にスマホ向けの(複眼化による?)大幅売上増を見込んでいる様子です。
デジカメ界(?)の王者キヤノンだけは会計年度が1月始まりなので、今回発表分は、今期の一四半期終了時の結果。
1Qで台数ベース対前年比、レンズ交換式カメラ:+6%、コンパクトデジカメ:-6%でトントン・・・(←p.12)
・・・ということは、つまり、冒頭CIPAの対前年比で好調な出荷台数推移はキヤノンが牽引している訳では無いということですね。
今期の予測も弱気で、
年初の決算から対前年比トータル-9%を変更せず。
これから残りの3四半期でコンパクトデジカメが再び落ちると踏んでいるのか、
レンズ交換式で、'16年発売のEOS5DⅣ、M5、80Dの売上分を、M6と今年発売予定のカメラでは埋めきれないと踏んでいるのか・・・
[5回]
ちなみに
ソニーも台数ベースでは、'16年度の420万台から、'17年度は380万台(←p.6)と、キヤノンと足並みを揃えて(?)大凡対前年比-9~-10%予測です。
しかし両社とも、金額ベースでは対前年比増収増益予測ですので、つまり乱暴に言えばカメラの価格が今年も(?)上がる・・・ということですねf(^^;)
この話の最後にちょっと気になったので、デジカメtop3社の決算結果からここ数年のカメラ(レンズ交換式及びコンパクトデジカメ合算)の販売台数推移を図にしてみました。
↑例によって、キヤノンは1月~12月締めの数字
ソニーとニコンはそれぞれの会社の公式発表数字より
※ニコンの'16年度数字は3Qの決算発表時のもの。'17年の計画は未発表のためプロット無し
キヤノンの数字は、”対前年度比±〇%”の公式発表数字より私の方で概算(←大きくは狂っていないと思います)
上図を見ると、'16年まで一直線に販売台数の減少が見られますが、
'17年計画の発表が既になされているキヤノンとソニーに関しては、
”'17年は減少はするものの、その下げ幅が緩やかになっている”
ことが見て取れますね。
これでGW明けのニコンの予測がどうなるのか?
また、上図ではわかりにくいですが、'14年~'16年の3年間、
キヤノンは大凡対前年2割減ペース
ニコン、ソニーは大凡同3割減ペース
これが首位の会社と2位以下の会社の微妙で、しかし大きな差か
しかし、
α9なんかを見てると今後はわからないという気もしますし、
ソニーは明らかに台数を追うことをやめている経営方針の様なので、もうデジカメの販売台数で会社間の優劣(?)を語るのは時代遅れなのでしょうかね(^^;)
さて、ここからは、
本年6月頭のVLSIシンポジウムの
プログラムから。
全体の概要については、
こちらの福田さんという方の記事にまとまっていますのでどうぞ(^^;)
私は例によってimager案件のみ以下抜粋。
↑Circuit(回路)シンポジウムのセッション19 ”Image Sensors”より。全4件
上記他、Technologyシンポジウムの方のセッション8 ”Sensing”に4件、計8件ほど(撮像素子とは限らない何らかの)センサー件が今回発表されるようです。
個人的に少し残念なのは、昨年などはTechnologyシンポジウムの方も”Image Sensors”のセッション名で、5件丸々イメージセンサ=撮像素子で発表が埋まっていたのですが、
今年は上記通り、Technologyシンポジウムの方はセンシングですので、撮像素子とは限らないものが多くなっています。
今年のプレナリ講演(招待講演)は、ロボット、自動運転などの話が出てくるくらいですので、
やはりトレンドは”人間に見せる画像”取得から、
”機械が処理するのに適したセンシングデータ”の取得
に移っていっているということなのかな と理解しました。
で、上表に戻りまして、
Circuitシンポジウムのimager件全4件の内
①3件が、日本の組織による発表
”圧倒的じゃないか我が軍は”状態継続
②そしてその日本組織発表の3件ともがグローバルシャッタ件
まだまだグローバルシャッタは注目技術、開発トレンド技術の様子です
③残り1件がフォトンカウント件
個別案件に移ると(同様のことを上表にも書きましたが)、
まず
1件目、ソニー(及びその関連会社)発表件
恐らく後に出てくる特徴などから、監視カメラなどの用途狙いのイメージセンサなのでは?と。
◆420万画素
◆280fps
◆
裏面照射型積層グローバルシャッタセンサ
◆読み出しノイズ:4.2e-
画素数及びノイズのスペック”だけを取り出してみると”正直凡庸。
しかし、フレームレートは速く(※ただしこれも画素数を考慮すると、VLSシンポジウムに取り上げられるほどのものでも無いという個人的心象)、
そして、遮光の難しいだろう裏面照射型センサにおいてグローバルシャッタセンサというのが一つ目をひくところ。
昨年もエジンバラ大学とSTMicroelectronicsが同様に裏面照射型グローバルシャッタセンサを発表していましたが、果たして実用化されているものなのかどうか。
ソニーの場合は(過去実績から)恐らく今後実際に発売するものと予想します。
abstを読むと、列ADCを並列で持つことにより(←これは最近のソニーのトレンド。恐らく積層センサのbottom側のスペースを活かして1列に対して複数のADCを搭載しているということでは?)、
ROI(Region Of Interest)機能及び顔認識機能を有し、
ROI機能(≒画面内の任意の一部分のみを読み出す機能)のお陰で、信号データの低帯域化とADCの低消費電力化が図られたとのこと。
正直上記だけでは大きな個人的に大きな魅力は感じれないので、
余程の信号データの低帯域化と低消費電力化が図られたのか?
また個人的には、abst中にある
”The conbination of an
active reset scheme and
frame correlated double sampling operation”
というのが、まだ見ぬ知らない駆動方法 or 回路なのか?
というのが気になるところです。
2件目。CEA-LETI (フランスの公的機関)他。
恐らくのところ、CT用のX線センサ
昨今のトレンドだと感じているphoton-Countingセンサ
試作品
なので、画素数は4×8画素
しかし、4×8画素でも、画素面積が756×800umということで、一般的にデジカメなどで使われるイメージセンサの画素ピッチよりは遥かに大きいもの。
800万カウント/秒が可能ということで、仮に1秒間露光が可能な撮影状態であれば、今のデジタル出力センサで言えば800万LSBの階調が取れるということ・・・という理解で合っていますよね?(^^;)
abstを読む限り、フォトンカウントセンサという点以外に、
”on-chip charge sharing, charge induction and pile-up corrections”
というあたりがどんな技術なのか?というのが気になると共に、味噌となる技術なのでは?とも。
3件目。静岡大学。お得意低ノイズ読み出しセンサ。
しかし今回はそれでいてグローバルシャッタセンサというのがポイントではないかと。
以前弊blogコメント欄で話題になった(?)fairchild社のsCMOSセンサ。
あのセンサもグローバルシャッタセンサで、0.8電子という驚異的な読み出しノイズでしたが、
今回静岡大学発表センサは、数字上はそれを上回る
◆0.61電子
実用化=製品化されているものと、学会発表レベルのものを同じ土俵で比較するのはフェアでは無い気がするので、後はこの静岡大学のセンサがどの程度実用的なレベルなのかが気になるところです。
そして恐らくその低ノイズのお陰で、
■ダイナミックレンジ:81dB
を確保
その他特徴などは以下。
■画素ピッチ:5.6um□
■画素数1200×900 (≒100万画素)
■使用プロセス:0.11umCMOSプロセス
■列ADC:folding integration サイクリックADC
■2段階電荷転送構造画素
上記列ADCの”folding integration サイクリックADC”ですが、
恐らく以前から同大学が発表しているもので、私は現状よく理解できていませんが、
この資料のp.17にあるような構成及び駆動で、超高分解能なADを実現している様子です。
4件目。ソニー及び東北大学。
超高飽和なグローバルシャッタセンサ
1回露光で22万4千電子の飽和電子を誇るグローバルシャッタセンサ
■画素ピッチ:3.875um□
■画素内に埋め込みストレージ(pinned storage)と横型オーバーフロー集積容量(LOFIC)を具備
■その結果、単位面積あたりの飽和電子数が14900e-に到達
埋め込みストレージのお陰でdark及び低照度で画像品質劣化無く、LOFICのお陰で大きな飽和信号を得ることを可能にした
冒頭の1回露光(=single exposure)という記載は、
昨年IEDM及び本年ISSCCにてキヤノンが発表した「”2回蓄積”するグローバルシャッタ方式とは違うよ」ということを明確にしたかったための記述か?
また上に出てくる”LOFIC”というのは、既に昨年の同じくVLSIシンポジウムで東北大学がTSMCと共にやはりグローバルシャッタセンサで発表済みの技術(≒構造)。
今年はタッグを組む相手をTSMCからソニーに変更したのは、
昨年のは主に積層型センサというところで製造プロセス的にTSMCの力を借り、
今回は埋め込みストレージ(pinned storage)というあたりの構造で、ソニーのプロセスかないしはパテント技術の力を借りたのか?
というところで、個人的にはどうやってこの莫大な飽和電子数を達成しているのか?
というところと、上記埋め込みストレージというものがどういう構造なのか?
というところが興味津々の案件です。
VLSIシンポジウムのテクノロジーシンポジウムの”Sensing”セッションについては、
機会があれば≒気が向けば(^^;) or 私が理解できそうであれば(^^;) また触れようと思います。
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