先々週、冒頭で「1週書いてないと、いろんな書きたいことが出てくる」みたいなコメントを書いて、その後トピックを羅列した中で、もういくつか気になっていたことが漏れていました。
既にご興味の方には既知情報だと思われますが、
・
ニコン 1350人の人員適正化による固定費削減
まあ世間一般的に平たく言うと”リストラ”というやつではないでしょうか。
内350名が、映像事業≒カメラ事業の人員ということの様です。
そして、今年度の第2四半期の決算は、どこの会社もカメラ事業は厳しかった様子。
ニコンも赤字では無くて黒字は黒字ですので、「今のうちから立て直しを」ということでしょうね。
コンパクトデジカメのフルラインナップ政策(?)の考え直しという様なニュアンスの記載も決算資料に見えるのも、今後の動向として個人的に興味深い点です。
また先週は、
来年二月のISSCCのプログラムの一部発表でしたが、今週は
全て公式発表されていますね。
ISSCCは毎度abst(要約)が公表されないため、発表内容をタイトルからしか類推することしか出来ないのですが(--;)、一度やはりイメージセンサ関係は、発表タイトルと組織とその国籍についてはまとめておきたいと考えています。
そしてもう一つ、
タムロン(Tamron)が超高感度&ワイドダイナミックレンジな撮像素子を開発!?
ImageSensorWorldさんに拠れば、
JST(科学技術振興機構)のサポートを受けての開発だとか。
”何故今タムロン(Tamron)が撮像素子を?”
というのと、実際に世に出回ることになるのかと併せて気になるところです。
さて、今週ですが、タイトルの通り、
↑
CMOSISの
8K30pグローバルシャッタセンサ (写真はデジカメwatchさんより) のスペックを眺めてみました というお話です。
[4回]
センサ名称:
CMV50000
どうもこのCMOSISという会社のセンサ命名則、
productページを眺めてみると、
数字の部分はそのセンサ画素数割る1000・・・つまり名称kpixという、画素数によって決めているみたいですね。
つまり、今回は48000000画素で、割る1000すると48000。で、更に1000の位で四捨五入するという・・・
ユーザー目線で見ると、画素数に関しては非常にわかりやすいものの、もし同じ画素数のセンサを作ってしまったらどうするんでしょうね?f(^^;)
頭のCMはCMOSISの略(?かな?)として、”V”は何を意味するのでしょう?
以下スペックは、
製品ページ右側のpdfに載っていたデータなどになります。
①有効画素数:7920x6004
②画素ピッチ:4.6um□
③光学フォーマット:35mm (36.43 x 27.62 mm) アスペクト比4:3
④グローバルシャッタ機能搭載
⑤フレームレート:30fps @フルレゾリューション時
⑥出力インターフェース:22LVDS @830Mbps ←1チャンネルあたり
⑦感度:5 V/lux.s @ 550 nm波長光≒Green光において
⑧コンバージョンゲイン:確認中
⑨飽和電子数:14000 e- (ビニングすると 58000 e-
⑩Darkノイズ:8.5 e-
⑪ダイナミックレンジ:64dB
⑫maxSN比:41.4dB (binning: 47.6dB)
⑬
Parasitic light sensitivity: 1/20000
⑭ダイナミックレンジ拡張機能:あり odd/even read out
⑮暗電流:確認中
⑯固定パタンノイズ:6.5DNrms
⑰カラー:モノクロ / カラー双方あり
⑱消費電力:3.05W
⑲動作保証温度:-30℃~70℃
⑳パッケージ:141ピン BGAセラミックパッケージ
以下、上記についてそれぞれについて思うところなどを得意のパターンで徒然(だらだら?^^;)書いていきたいと思います・・・
①の有効画素数は、8Kと言いながら横8000画素ありませんが、これは実は
UHD規格がFHDの1920の4倍で7680列ですので、
横7920列あればUHD規格的には十分”8K”を名乗れますね。
ただ、
DCI(シネマ系の規格)ではまだ8K規格は恐らく策定されていないものの、現行の4Kが横4096列であることを考えると8192列がDCI8Kになることが予想され、それには”若干不足”とういことになりそうです。
②画素ピッチ:4.6um□
これを、現状のレンズ交換式カメラ搭載撮像素子に置き換えると、
計算上ソニー製のフルサイズ42Mpix機(ソニーα7RⅡ、α99Ⅱ)よりもやや大きく、そして、同じくソニー製フルサイズ36Mpix機(ソニーα7R、ニコンD810、ペンタックスK-1)よりもやや小さい・・・
そういう画素ピッチになりそうです。
APS-Cサイズだと、一番近いのは、ひと時一世を風靡した1600万画素センサの画素ピッチが一番近い(それよりも今回のCMOSISセンサの方が画素ピッチは多少小さい)感じでしょうか。
③光学フォーマットサイズですが、35mmのイメージサークルには収まるようですが、レンズ交換式カメラの35mmフォーマットのアスペクト比の3:2に対して、このCMOSISセンサは4:3。
このあたりからして、またpdfの”CMV50000 PRODUCT FLYER”の方の冒頭タイトル(?)が、”High Speed Global Shutter Machine Vision Sensor”となっていることからも、
CMOSIS自身もこのセンサを”レンズ交換式カメラに載せてもらう”という気がほとんど無いということが伺われます。
④グローバルシャッタ機能
CMOSISは昔から得意ですね。
恐らく今回のものも、
こんな感じや
こんな感じでで表面照射型センサで画素部でのCDS可能な、がしがしトランジスタ数を詰め込んだ感じのタイプではないでしょうか。
⑤8Kでの30fps
4Kだと60fpsまでいけるみたいですね。
前回エントリでも書きましたが、製品レベル、もしくはサンプル出荷可能レベルの8K動画用センサというと、私の知る限り、NHK系(静岡大学、Forza、ブルックマンテクノロジ)、及びREDのHELIUM8Kセンサに次いで3番目ではないでしょうか。
現状だと下手に8Kで60fpsあっても使う側が使い切れない様に思いますので、(上述先行メーカーのセンサと違い)汎用センサとして売り出すということであれば、ハイエンド製品の画素数とフレームレートとしては良い落としどころだと個人的に感じます。
⑥22LVDS出力 1チャンネルあたり830Mbps
上記数字は、例えばソニーが今年のVLSIシンポジウムで発表した、恐らく同社のHDC-4800という放送局用カメラに搭載されたと思われる、”4K480fps”のスペックを誇るセンサだと、
◆SLVS-ECで16チャンネル出力 1チャンネルあたり4.752Gbps
また、例えば民生用途としては、'15年6月に発表されている、スマホ向けと思われるONSemiconductor製の1/2.5インチ2500万画素センサが、
◆MIPI 8Lane @1Lane=1.2Gbps or HISPI 16Lane @1Lane=1.0Gbps
また、同じく'15年6月頃発表の民生用途でミラーレス搭載のSamsung製APS-C2800万画素裏面照射型センサが(図面から)、
◆sub-LVDS 16チャンネルトータルで8Gbps以上
・・・ということは計算上1チャンネルあたり、500Mbps超
という感じなので、まず出力インターフェース的には、やはり汎用品として汎用性を持たせるために極オーソドックスなLVDSを選択し、
そのせいか、1チャンネルあたりの信号出力レート自体は今時としては高速とは言い難く、ごく普通なものとなってしまい、
結果として画素数が多い関係上、チャンネル数が今時にしては(?)結構多めな22チャンネルとなってしまったという構図の様に見えますね。
カメラシステムを組む側の人間としては、チャンネル数が多いと色々と取り回しが面倒な気がしますが、これも8K動画センサという超ハイスペックセンサを使うなら仕方無いという風に割り切れる感じなのでしょうか。
⑦感度の5V/lux・sec
意味のあるコメントは出来ないのですが、相変わらず各社の発表でこの項目の数字が私にはピンときません。
デジタル信号出力センサの感度で”5V”っていうのはどういう意味なのでしょうか?
出力はデジタル信号な訳ですから、単位入射光量に対する”最終出力”という意味で無いことは明らかです。
ということはセンサ内のどこかのアナログ信号時点で定義されているという風に思っていますが、
じゃあコンバージョンゲインのことなのか?と思うと、そういう項目欄はまた別にあって、そしてそちらは”TBC”(確認中)になっているという・・・
コンバージョンゲインがはっきりしないのに”感度”っていう数字は明確になるなんてことがあるのかなぁ・・・?
どなたかこの”感度”(sensitivity)のざっくり定義がわかる方がいらしたら教えてください。
⑨飽和電子数(Full Well Capasity):14000e-
これは画素ピッチ4.6um□と聞いてパッと想像する値と比較すると、”少ないな”という風に個人的には思ってしまいますね。
上述画素ピッチ3.6um□のSamsungのミラーレス用撮像素子がtypcal値で公証3万e-な訳ですから、
画素面積比で凡そ1.6倍の面積を持つCMOSIS製のこのセンサが飽和では逆に半分以下というのは本来はいただけません。
これが(少なくともこのCMOSIS製の)グローバルシャッタ方式の弊害なんでしょうね。
画素に対するフォトダイオードの開口率がこんな感じで低かったり、
等価回路図を見ると、画素部のソースフォロワが2段になっていて、その分ソースフォロワ側に一つ分多く電圧振幅分の電圧を確保しておかなければならないため、
フォトダイオードから電子を読み出すための電圧を削らなければならなかったりという様な事情があるものと推測します。
(↑私独特の表現過ぎて意味不明でしょうか?^^;)
⑩Darkノイズ:8.5 e-
⑱消費電力:3.05W
飽和電子数と並んで、上記darkノイズと消費電力の値が、
「ああ、やっぱりマシンビジョン用であって普通のフルサイズデジタルカメラに載せる用のセンサじゃないんだな」
と個人的に感じてしまうところです。
※ただ、消費電力の方に限っては、この48Mpix30fpsという超多画素高速読み出しセンサであることを考えると仕方が無いというか、とてもよく抑えられているとは思っています
が、矛盾するようなことを書きますが、3.05Wは十分凄いと思うのですが、更に上には上がいて、
この5月のNHKの技研公開で公開されていた静岡大学、TSMCと共同の8K240fpsセンサは、”2/3インチと小型ではありますが≒その分有利ではありますが”、240fpsでありながら
同様に3Wということで、
このNHKのセンサは、やはり列ADがサイクリック型と逐次比較型のあいのこシステムがやはり多大な消費電力の低減に貢献してるってことなんですかねー。あとはTSMCの微細プロセスと。
CMOSISのCMOSイメージセンサは、少なくとも2013年当時は、列ADC方式は最もポピュラーなスロープ型ADを使っていました。
恐らく今回のもこの方式なのじゃないかと予想します。
この辺と使用プロセスの違いなどがNHKセンサとの消費電力の違いを産む一因なんじゃないかなと。
darkノイズの方は測定時のアナログゲイン情報などが揃っていないため、
一概に各社の公表数値のみで判断するのは危険ですが、
あえてこの数字だけで判断すれば、今回のCMOSISのセンサの数字は今時としては悪いと思います。
比較対象として、例えば以下の様な感じです。
◆前出Samsung28MpixAPS-Cミラーレス用裏面照射型センサ:1.8e- @24dB
◆前出NHK(静岡大学、TSMC)8K240fps2/3インチセンサ :3.6e- @12dB
⑪ダイナミックレンジ:64dB
上記ダークノイズと飽和電子数が共にあまり良く無い値のため、
20log(S/N)で定義されていると思われるダイナミックレンジの値も結果としてふるいません。
20log(14000e-/8.5e-)を計算すると、丁度上記の値。
同じ定義で計算されていると思われる他のセンサの値は参考までに以下の様な感じ
◆前出Samsung28MpixAPS-Cミラーレス用裏面照射型センサ:77dB
◆前出NHK(静岡大学、TSMC)8K240fps2/3インチセンサ :76.3dB
※dBは、6dB値が異なると倍違うので、
今回のCMOSIS製センサは上記センサよりも概ねダイナミックレンジは1/4の値ということになりますね。
⑫maxSN比:41.4dB (binning: 47.6dB)
マシンビジョン用センサのスペックで、何故この”maxSN比”という値が重要(≒各社マシンビジョン用センサのカタログに値が載る)なのか、個人的に理解できません。
以前、pointgrey社が各社センサの測定を行った結果をエントリした際に意見(?)を述べましたが、
まっとうなセンサを作ってさえいれば必ず飽和出力時にどのセンサもmaxSN比になると思いますので、
結果、飽和電子数が画素ピッチの割に大きく無いこのセンサの値は、あまり良い値ではありません。
ただ、マシンビジョン用のカメラとしてはボチボチな値の様子です。
⑬Parasitic light sensitivity: 1/20000
↑これはグローバルシャッタセンサのスペック表でよく見られるものですね。
特性項目名が難しいので、砕けて言えば
”次フレームで入射している光量の何分の一が現在読み出し待ちしている自フレームの出力に悪影響を与えてしまいますか?”
という特性項目だと私は理解しています。
つまり”値が小さいほど良い特性”な訳ですが、
残念ながらこの特性値も、学会で発表される様な最近のイメージセンサと比べると良く無いと感じます。
例えば前出ソニー4K480fpsセンサ:-99.6dB
また、実用化はまだだと思いますが、オリンパスの積層グローバルシャッタセンサに至っては-180dBです(゜Д゜)
ちなみに1/20000をdB表記に変換すると≒-86dBになります。
⑭ダイナミックレンジ拡張機能:あり odd/even read out
これは、ダイナミックレンジ方式の名称から類推するに、恐らく2行ごとに露光量を別々に制御して合成する、この方式を採用しているものではないかと思います。
⑲動作保証温度:-30℃~70℃
特にコメントすることではないのですが、民生用、マシンビジョン用では多くの場合十分なんだろうと思いますし、実際CMOSIS自体もマシンビジョン用と言っているのですからそれで問題無いのですが、
例えば今Hotな車載用途センサを考えた場合には、下限はともかく上限が70℃だと車載用センサには使えなさそう≒採用されることは無さそうですね。
参考:車載用センサの信頼性温度について
⑳パッケージ:141ピン BGAセラミックパッケージ
これは非常にピン数が少なくて、恐らくシステム構築側の立場の人からは歓迎される仕様だと感じました。さすが汎用品として売るセンサだなと。
比較対象として、
◆私が知りうる限り、イメージセンサとして過去最大のパッケージピン数を誇る(?)NHK & Forza製1.3億画素60fps動画用センサ:1125ピン
◆前出ソニー製super35mmサイズ放送局カメラ用4K480fpsセンサ:864ピン
冒頭のこのCMOSIS製センサのセンサ写真を見ると、センサチップ上にあるパッド自体は間違い無く141ピンをはるか上回る量存在します。
ということは、恐らくこのCMOSIS社製のセンサは、電源/GNDといった”電気的に共通にすることが可能なパッド電位”のものについては、センサパッケージ内で同一配線にしてパッケージ外に出しているということになりますね。
本当に今回徒然書いてしまいました。自分でも読み返す気にあまりなりません(^^;)
なんとなく悪口の様になってしまっている気がしてきましたが、
私自身はフォローでは無く、8K30fpsの汎用センサがこんなにも早く出てくるとは思っていなかったので、本当に凄いことだと感じています。
だからblogエントリした次第です。
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