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Imager マニア

デジカメ / デジタルビデオカメラ / スマホ用の撮像素子(イメージセンサ/imager/CMOSセンサ)について、マニアな情報や私見を徒然なるままに述べるBlogです(^^;)

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Read noise 1electron 以下のセンサーたち その5:E・R・フォッサム ~ノイズのために最早新規デバイスを開発・提案しました

先週に引き続き、デジカメ各社の'16年度の1Q(第一四半期)の決算発表が行われていますね・・・
・・・というより、今週はリオ(ブラジル)オリンピックの開幕でしょうか・・・私は開会式も含めてまだ何も見ていませんが(^^;)・・・そして試合開始7時間弱前に現地入りしたナイジェリアに負けた日本サッカーについては屈辱的というか大変残念な気持ちです(--;)

 この一週間で発表されたデジカメ各社の決算については、ニコンオリンパスのに好感ですね。
以前にも書きましたが、デジカメの出荷台数について、レンズ交換式と固定式(≒コンパクトデジカメ)の内訳を公式に発表しているのは、上記2社のみです。

それを見ると、'16年度(4月~'17年3月)の年間見通しは、それぞれ
 ニコン:335万台 @レンズ交換式 / 335万台 @コンパクトデジカメ (リンク先資料p.16)
 オリンパス:46万台 @レンズ交換式 / 41万台 @コンパクトデジカメ (リンク先資料p.09)

上記を見て気づいたのは、オリンパスにおいては遂にコンパクトデジカメとミラーレスの出荷台数が逆転し、ニコンにおいては年初の見通し台数からコンパクトデジカメを下方修正、レンズ交換式を上方修正することにより、双方の出荷台数を同数としています。
市場全体では無く一部の企業だけとはいえ、レンズ交換式カメラの台数がコンパクトカメラの台数を上回るのは、デジタルカメラの歴史始まって以来初めてのことだと思われます。
(キヤノンにおいても、日刊工業新聞記事によれば、コンデジとレンズ交換式の台数は、約半分ずつということになっています)



 さて、今週の本題は、以前行っていた”readノイズ1e-以下シリーズ”の締めとしたいと思います。かなり時間が経ってしまいましたが・・・(^^;)

A Pump-Gate Jot Device With High Conversion Gain for a Quanta Image Sensor
Quanta Image Sensor Jot With Sub 0.3e- r.m.s. Read Noise and Photon Counting Capability

拍手[1回]

↑業界の重鎮、エリック・フォッサム先生(IEEEのフェロー)のグループの上記2本から僭越ながら超かいつまんで(^^;)
主には前者のPump~の方の”デバイス構造及び画素電荷転送方法がおもしろいなー”と思って。
後者のPaperは、実際の試作センサの特性を紹介するために。


【超概要】
シングルフォトンカウンティングを実現するための低FD容量&高コンバージョンゲインの画素デバイス構造を提案する
上Figure.1の様な奇妙な(^^;)構造のデバイスを用いて、飽和は小さい(200e-程度)が、転送スピードが速く、狭画素ピッチセンサにも対応可能な、0.3e-のreadノイズなセンサを作った

※試作はTSMCの65nmのBSI(裏面照射型センサ)プロセス使用
※試作したセンサは、1.4um□、1.0um□画素ピッチの二つ

【補足 or 前提】
構造、各部の呼称や、電荷転送方法が普通のセンサと異なっているため、上図について以下補足
 ・まず飽和電子数が200e-と小さいのは、このセンサがシングルフォトンカウント想定で”飽和は不要”という思想の元に設計されているため
 ・上図で、光の入射は下側からのBSI構造
  ↑なので、フォトダイオードの真上に転送ゲート(TG)が存在しても光を阻害する等の問題は無し
 ・SW(n):通常の電子蓄積のフォトダイオード部相当 Strage Wellの略
 ・最終的に電荷を読み出すために転送したいFD部は、右上のオレンジ色のところ
 ・SWに溜まった蓄積電荷をFD部へ転送するのに、
  SWから転送ゲート(TG)直下のPWと呼称されているP-領域へ一度転送した後、
  PWからFD部へと転送するという2段階転送を行う


【内容】

↑このセンサ画素部の平面レイアウト図 (1.4um□画素ピッチの方)

恐らく、
 ・メタルの表示無し
 ・赤色がpoly(Si)部≒MOSゲート部
 ・RST:リセットMOS フォトダイオードとFD部リセット用
 ・RS:画素選択(Row Select)MOS
 ・SF:画素ソースフォロワMOS (CMOSセンサにはつきものの、いわゆる画素内アンプ)


 以前までの”readノイズ1electron未満シリーズ”の4つのpaperに共通していた、”FD容量を小さくする”という施策は、このフォッサム先生グループのイメージセンサでも同様な様子。

FD部(≒上図FD n+dose部)が転送ゲート(同TG)と重なっていないことにより、
転送ゲートとFD部の重なり容量(Cgs)を無くし (←これは静岡大学と同じ思想ですね)
またそもそもFD部の面積を小さくし、拡散容量自体も小さくなるようにレイアウトしています


↑電荷転送時の各理想的なポテンシャル図 (薄ピンクが光入射による光信号電荷)
 A:電荷蓄積時 (≒露光時)
 B:TG(転送ゲート)=ON時
 C:TG(転送ゲート)=OFF時

 Aの状態では、n型のSW部に電子蓄積されますが、
この時、転送ゲート直下にはPBとPWというp型部が存在するため、転送ゲート直下は電子にとってはポテンシャルが高く、ゲート直下には電子は溜まらないというのが一つ目のポイントの様子。
(このことによって、蓄積電荷がダイレクトにFD部にリークしていくことが無いと思われます)

 Bの状態で、TG(転送ゲート)がonされると、
転送ゲート直下は転送ゲートの電界の影響を大きく受けるため、
PBとPWという二つのp型部のポテンシャルがSW部よりも低い方に引き下げられ、
SWに溜まっていた電子がPW部に転送される。
 ↑PBとPWでは、PWの方が転送ゲートにより近く、転送ゲートの電界の影響をより強く受けることとPBの方がp型濃度が高いことにより、PWの方がよりポテンシャルが低くなるため、PW部の方に電子は転送される

 Cの状態で、TG(転送ゲート)がoffされると、PWに溜まっていた電荷がゲートoff時のポテンシャル上昇(?)で上に引き上げられ、ポテンシャルの最も低い最終目的地(?)のFD部に転送される。
 ここで2つ目のポイントと思われるのは、
PBとPWでは、PBの方がP型濃度が高いことにより、
PW部の電子は、TG=off時に、PB部のポテンシャル障壁によって、SW部に逆流せずにFD部に流れる様なポテンシャル設計になっている様子なこと。

 尚、SWのn型部を完全に空乏化するために必要な電圧は0.7V程度。
200e-程度しか電子を貯められない(貯める必要が無い)ため、あまり大きな電圧を必要としていない(≒あまりn型の濃度は高く無い)様子です。

 また、何故通常の転送方式のフォトダイオードでは無く、わざわざ労してこの様な特殊な構造のデバイスを作ったのかが今一つはっきりと書かれていない気がするのですが、
恐らくですが、最終的にギガピクセルオーダーの撮像素子を作る想定で、
そのため、画素ピッチの小さい(例えば0.5um□とか)センサを作るために、
この平面レイアウト効率の高い、
ある意味縦型転送構造とも言うべき素子を開発したのでは?と予想します。


PWとPB部の微妙な不純物濃度制御などは、かなり転送特性に影響を与えそうなので、どの程度量産性があるものなのか?というのは少々疑問が残るところではありますが、
 どちらにしても、おもしろいデバイス構造及び転送方法なので、個人的に興味を惹かれました(^^)



↑参考までに、
 左図:不純物のドーピングプロファイル 一番左が上面図、左の右が断面図
    黄色と赤がn型(赤の方がより濃い) / 水色系がp型で、青が濃い方が濃度も高い
 右図:転送時のポテンシャルプロファイル 右の中の左:TG=on時、一番右:TG=off時
    赤>黄>緑>青の順で電圧が高い ≒電子にとってのポテンシャルが低い



↑ダメ押しで、シミュレーションによる、TG=on時とoff時の各部のポテンシャル図
 赤玉が蓄積電荷のイメージ
この図と一番最初の断面イメージ図を合わせて見てもらうのが一番イメージつきやすい気がしました。
やはりポイントは、一度TG=onでPWに転送された電子が、TG=off時に高いところに引き上げられた後にFD部に転送されていることだと感じます。
これによって、画素部に必要な電圧を超有効に使っている感があります。



↑試作結果では無く、試作前のシミュレーションによる、各試作チップのFD容量の内訳

一番左が、同じプロセスで作った場合の埋め込みフォトダイオードの裏面照射型センサの場合。
それがトータル1.5fF程度。
今回このエントリで紹介した試作チップのものが、左から2番目のもので、0.6~0.7fF
つまり、(恐らく縦方向への転送方式は関係無いと思いますが、)この構造にすることによって、半分弱のFD容量の大きさにすることが出来ているということの様です(結果、readノイズの低減に寄与していると)。

 ちなみに、今回紹介はしていませんが、試作した中で最もFD容量が小さかったのは、上図右から2番目のもので、
 FD容量:約0.4fF
 コンバージョンゲイン:380uV/e-
ということの様です。

比較用に数字を挙げておくと、以前紹介した静岡大学のものが、(プロセスは180nmプロセスと、世代の異なるプロセス使用であるので直接比較するのはフェアではありませんが、)
 FD容量:0.66fF
 コンバージョンゲイン:220uV/e-
となっていました。



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Fossum 教授の総説

フォトンカウントセンサーに関する Fossum 教授の総説を Image Sensor World がリンクしていますね。
http://image-sensors-world.blogspot.jp/2016/08/every-photon-counts.html
FD の電荷変動グラフを見ると、1光子差が分かるような厳密なフォトンカウントはまだ難しそうですね。

Re:Fossum 教授の総説

>hi-lowさん

コメント返信が2週ずれになってしまっていますがご容赦を
やっと、今週末追いつきました(^^;)

>FD の電荷変動グラフを見ると、1光子差が分かるような厳密なフォトンカウントはまだ難しそうですね。

その様ですね。
どう読むべきか、”いずれの画素でも0.15e-程度のノイズ量になったらば、いずれの画素においてもsingle-フォトンカウント可能になる”と読むべきでしょうか?
”補正?もしくはノイズが大きなjotデータは用いない”等の処置をすれば、”多くの画素が0.15e-程度のノイズになればOK”と。
そして、今回の試作センサで、最も良かった”Golden jot”で0.22e-のノイズ量だったと。

まあ0.22e-のノイズと言っても、恐らく良くて常温の結果でしょうから、高温では暗電流か暗電流ショットノイズかが邪魔してしまうと思うので、やはりどちらにしてもうまく行っても、もうしばらく先の技術なんだろうと思います。
ただ、成就するかどうかはともかく、こういうやや浮世離れした(?)未来の技術を知れるのは個人的に楽しいなとf(^^;)

  • imagerマニア
  • 2016/08/28(Sun.)

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