日本のデジカメ各社、今年の1Q(第1四半期)の決算結果が出始めまたね。
CIPAの統計を見ると、5月にデジカメの出荷台数の減少が見られ、4月の熊本の震災の影響が見え隠れしている気がします。
(ソニーは、「8月にはフル稼働に戻る」と発表していますが)
タイミングの良い震災など無いと思うのですが、'16年は各社デジカメの販売台数のある程度の下げ止まりを期待していた年だと思いますので、デジカメ界(?)の上記観点からも間が悪い震災だったなと、個人的に感じます。
今のところ1Qの決算発表が終わったのが、キヤノン、ソニー、パナソニック、富士フイルムの4社かなと思うのですが、
[2回]
まずキヤノン(キヤノンは米国会計年度を採用?しているため、キヤノンのみ2Q決算)は、
対前年同期比、レンズ交換式:-1%、レンズ一体系:-30%
通期の今年の見込みを、同-1%、-39%としています。
(※いずれも台数ベース。リンク先資料のp.12,13)
年初の見通し(p.14)が、同-7%、-24%でしたので、
レンズ交換式は思っていたよりはここまで好調で、しかしレンズ一体系はもう完全敗北(?)宣言。”目標達成を半期で断念した”という構図でしょうか。
これが全て熊本の震災のせいなのか、それ以外の要因も多分にあるものなのか・・・気になります。
ソニーは、カメラとは直接関係ありませんが、つい最近、会計上撮像素子部門と同じカテゴリーだった
電池事業を村田製作所へ譲渡。
昨年度は確か電池事業で数百億規模の赤字を出していたはずなので、成長注力事業であるはずの撮像素子部門の重しを取り除いたという構図でしょうか。
そして幸いなのが、熊本の震災の影響が5月に見込んでいたものよりも7月時点では、カメラと半導体(≒撮像素子)部門合わせて¥310億ほど(金銭的には)軽微な方向への見込みに改善(?)しています(
決算資料p.5)。
そしてp.8を見ると、対前年同期比を見るとデジカメは金額ベースで減少するものの(←こちらはソニーだけでなく、各社同様。
ただし170万台⇒80万台と台数ベースでは半減!)、通期の見通しは年初見込みよりも売り上げ&利益とも上方修正。
やはり5月の年度始めの時点では、経営者心理(立場?)としては、熊本の震災の影響を厳しめに見込んでいたということでしょうか。
反対に心配になるのが、全社としても利益牽引事業に位置付けられている撮像素子部門(ソニーとしては今期より?正確には”半導体”カテゴリーで、基本イメージセンサとカメラモジュール事業がジャンル分けされている部門)の1Q結果が、
イメージセンサのみでも対前年同期比売上高72%へ減少。
通期予測も年初予測よりも約¥300億減少して、ほぼ昨年度並と成長は無し。
半導体部門全体の通期予測で¥640億の赤字(いずれもp.10記載結果)。
と、意外なことに(?)会社として力を抜いた(?)はずのカメラ事業は恐らくα7シリーズや高額なレンズ群が牽引して好調なるも、逆に力を入れているはずの撮像素子部門が今ひとつ振るわずの結果な様子。
パナソニックと富士フイルムの決算発表からは、相変わらず私には読み取れるものが少ないのですが、
パナソニックは、熊本震災の影響受けるも、デジカメ事業は対前年度並を維持(
決算資料p.10)
撮像素子に関しては、最近学会発表等精力的にこなしているという個人的印象ですが、
決算発表資料には個別では触れられておらず。
ただし、力を入れている様子の”オートモーティブ&インダストリアル”事業の売り上げに撮像素子がどの程度貢献しているのかしていないのか、個人的には興味のあるところです。
富士フイルムの”イメージング”事業は引き続きチェキが堅調or好調の様子。
個人的にチェキ(≒銀塩カメラ)動向にはほとんど興味がありませんのでパスするとして、
一応デジカメも高級機路線を強化したことで、為替の影響を込みにしても、前年同期比減収なれど増益(+¥8億=+17.5%)になったのだとか(
決算資料p.4)。
ただ1Qで見ると、全社の売り上げが¥5500億程度あるのに対して、デジカメ分と思われるイメージング事業の中の”電子映像”分野の売り上げが¥159億です(同p.12)ので、
全体の売上の3%に満たない程度。
やはり富士フイルムにとって、全社としてはデジカメ事業というのは比重の小さい事業なんだなぁというのを再度実感しました。
いや、だから富士のカメラに力が入っていないとは思いませんし、もしかしたらその方が良くも悪くも全社に与える影響が小さくて、カメラ事業をむしろ継続しやすくなる環境なのかもしれないと思ったりもしますがf(^^;)
さて、ここから
先週の続きに戻って、Samsungのフラグシップスマホ、GalaxyS7搭載のサムスン製素子の話に。
元は
EETimesの記事です。
↑Samsung製S5K2L1SX型番のイメージセンサの表面
TSV(Through Silicon Via ≒ top基板とbottom基板を電気的に導通させるための穴)部分拡大写真
先週も書きましたが、
同じGalaxyS7というスマホ用の撮像素子でも、仕様が統一されているだけで、Samsung製素子とソニー製素子の細部は全く別物。
ソニー製素子は先週や
以前のエントリで記載通り、top基板とbottom基板の電気的導通は、Cu-Cuの直接接続でした。
ちなみにEETimesの記事によると、上の写真の一つのTSVの大きさは
5um × 8um
なのだとか。
↑Samsung製素子のTSV部分の断面
SEM写真
この断面写真と注釈(?)を見て分かった一つのこととして
◆SamsungのTSVの少なくとも側壁はTiN(チタンナイトライド)である
ということ。
中のモコモコしているところは、また別の物質な気配ですが、そこは何も書いてくれていませんね。
また、ソニー製センサのASIC基板(bottom基板)のプロセスはメタル8層プロセスでしたが、
ここでもソニーとSamsungの違い(もしかしたらソニーの方はbottom基板はソニー自社プロセスでは無い可能性が高そうですが・・・)が出て、
サムスンの方は、メタル7層のCu(銅)配線プロセスの様です。
また、おもしろいな~と思うのは、
何故だかイメージセンサDie(ダイ=チップ)からのTSVを、ASIC基板で受ける箇所が、
上の写真の2か所とも、意図してだと思うのですが、
”2つの”銅配線レイヤで分けて受けている(≒2つの別銅配線と接触させている)ことです。
これは何か意味があるのでしょうか?
電気的には一つの大きな銅配線と接続されれば同じことなはずなので、意味があるとすればプロセス製造上の都合だと思うのですが・・・
ちなみに、EETimesの記事は、このSamsungのTSVを用いた積層センサの接続について、
”TSVを用いたことによって、このための広大な(チップ)面積を必要としている。
思うに(in my opinion)、ソニーの接続方法の方がBetter Solutionだ”
と述べています。
私も全く同感です。
やはり、
ソニーの銅配線と絶縁膜の同時直接接続(?)の方が、進んだ積層プロセスな様に思います。
↑AppleのiPhone6s搭載 ソニー製IMX240撮像素子のTSV箇所断面
最後に、EETimesはソニー製撮像素子の将来の積層構造についての予測に言及しています。
なんでも、上の写真の
iPhone6S搭載ソニー製撮像素子のTSVはCu(銅)で埋められており、かつイメージセンサDie(≒チップ)の上端はCMPプロセスでわざわざ平坦にされていると。
そこからの予測で、
将来ソニーはこの上にDRAMやNANDチップを銅部分で直接Die-to-Die(ウェハ単位では無くチップ単位での)積層して一体化するのじゃないか?
という様な内容です。
おもしろい発想だな個人的に思うのですが、
つい最近ソニーが学会で発表したセンサは、DRAMやNANDチップではありませんでしたが、周辺回路チップをイメージセンサ側に(恐らくDie-to-Dieで)積層していますが、
そこでは少なくともイメージセンサ側のチップ積層方法は”マイクロバンプ”と呼ばれる接続方法でした。
う~ん、どうなんでしょう?
EETimesの言いたいことが100%理解出来ていない気もしますが、
TSVの頭に別チップを載せる積層ということは、EETimesの考えているソニーの将来の積層チップというのは、
この一番右の様な、3層ウェハ積層の進化版の様なイメージなのでしょうか?
このTSVの平らな頭に、(面積が十分大きければ)既に発表済みのマイクロバンプ接続で良ければ、ソニーなら実現できる現実的なプロセスな気も確かにしますね。
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