(本当は、今をときめく?車載用センサ・・・と行きたいところなのですが、如何せんやはりこの分野、関係者で無いと情報が入手出来ない感じがします。ネットをちょっと検索したくらいでは撮像素子の情報はおろかカメラの情報の片鱗すら見つけられません・・・(--;)。どなたかもしネット上で何かおもしろそうな車載センサorカメラ情報が転がってましたら是非教えてくださいm(__)m。もちろんネット上でなくても極秘情報提供だったら尚ウェルカムですが^^;)
で、まず、
”産業用カメラ、マシンビジョン用カメラって何よ?”
ってところなのですが、私がここでイメージしているのは以下の様な用途のカメラたちです。
工場などの生産ラインで、パターンマッチングなどの画像処理技術を用いて対象物の
・位置決め
・計測
・状態検査
などを行うためのカメラ
また、それ以外でも、例えば
・食品検査
・交通監視システム
などの分野で使用されるカメラ
より具体的には、
半導体チップの
ダイボンディング、
ワイヤボンディングの位置決め
半導体製造ラインで流動しているウェハのアライメントマーク検出
電子部品実装の基板アライメントおよび部品検査、部品実装位置決め
検査装置関連では、
基板検査・X線検査
何かの製品のラベル検査
何かの製品の外観検査
ロボット用の視覚センサ (ロボットアーム先端に取り付け、対象物の形状、サイズ確認)
LCD・太陽パネル検査
などなどです。
更に、上記の用途の様なカメラに搭載されている撮像素子には、エリアセンサ(弊blogではおなじみのx,y方向に二次元アレイ状に画素が並んでいるタイプのセンサ)と、ラインセンサ(カメラとしては二次元画像を取り込めるが、センサ自体は基本1ラインしか画素が並んでおらず、カメラ自体をスキャンして画像取り込みを行うカメラ用のセンサ)が存在しますが、
今回ここで取り上げたいのはエリアセンサのみですので、そこはご留意下さい。
で、前置きが相変わらず長いですが、もう少し(^^;)
わたくし昨年から部署異動して仕事に余裕が出来ましたので、今まで行きたくても仕事の都合上行けていなかった平日開催のさまざまな展示会などに積極的に出向いていたのですが、その一環(?)で、
昨年12月初旬、パシフィコ横浜で行われた
”国際画像機器展”なるものにも初めて足を運んでいました。
展示会名自体は”画像機器展”と抽象的で、具体的に何があるのかわからない展示会名称だったのですが、実際出向いてみると、まさしく今回取り上げようとしている”産業用カメラ、マシンビジョン用カメラ関連の展示会”と言い切ってしまって語弊が無い感じの内容の展示会でした。
そこでブースを構えていた一企業である”
POINTGREY”という会社ブースで、
この様なカタログを渡されました。
これが中身を見てみると、私が興味を持つ内容が・・・
このPointGreyという会社がラインナップしている産業用カメラに積まれている撮像素子の仕様と、
更にこのPointGrey社が計測したと思われる各センサの特性値の一覧が記載されていたのです!
今までの、
民生ビデオラインナップ、
コンパクトデジカメラインナップ、
レンズ交換式カメララインナップ、
スマホカメララインナップは、所詮はカメラの撮像素子周りの仕様(画素数、フォーマットサイズ、etc・・・)をまとめたに過ぎませんでした。
それが、このPointGrey社のカタログには、上記に加えてセンサの特性値(ダイナミックレンジ、ダークランダムノイズ、etc・・・)まで一覧にまとめられているのです!
それも、各社が発表している数値では無く、この会社が自分たちで全てのセンサを横並び同一条件にて測定した(はずの)結果が。
これは言ってみればまあ
”DxOmark”みたいなもんです(だと思います)。
私の感覚を付け加えればDxOmarkよりも、より信じれる数字だと思います。
(DxOmarkは自分たちでセンサ評価してもそれを自社製品に使う訳ではありません。あくまで自分たちの測定の信頼性を掛けているだけです。加えてたまに特定メーカーの発売前のカメラの結果が先に載ることに個人的に不信感を抱いています。つまり市場からランダムに手に入れた個体の結果では無く、メーカーから供給を受けたと思われるカメラを評価しての結果が混じっていることが気になります。メーカーが事前に選別済みのチャンピオンデータのセンサを評価している疑いが拭いきれないからです・・・というか、そのケースの場合はまずかなりな確率でチャンピオンデータを叩き出すカメラの結果だと予想します。
対してこのPOINTGREY社の結果は、顧客のための情報開示の目的もあるのでしょうが、そもそもが”どこの会社のどのイメージセンサを用いて自社カメラを作ろうか?”という自社のカメラの特性を決める重要なパーツ選びに使われている測定結果だと思われます。
そういった点で、下手をすればライバル会社でさえ使用可能な重要で信頼性の高いデータだと感じます)
と、いう訳で、今回、POINTGREYという一社のカメラに採用された撮像素子のみが対象となりますが、そのカタログから拾ったデータ(?)を並べてみたいと思います。
尚、”その会社ってどうなの?かなりマニアックな偏ったデータにならないの?”というご懸念あるかもしれません。
保証できるものではもちろん無いですし、客観的なデータ(この業界でシェア○○%、シェア□位など)は無いですが、このジャンルに直接関わりの無い私が耳にしたことがある会社であるため、少なくともこのマシンビジョン業界ではメジャーな会社であると思われます。
では前置き以上でf(^^;)、やっと本題以下からです。
まず、元となったカタログに載っているデータ一覧を個人的好みで編集を加えたものを以下載せます。
※POINTGREY社のoriginalカタログには、全部で45種類のカメラが載っていました
が、カメラのマウント違いやインターフェース違いで、10台のカメラは搭載撮像素子が重複していました
弊blogではイメージャーに注目するという意図で、カメラの機種名(?)は省いて、撮像素子が異なる計35機種のデータについてのみリストアップしています
※最大フレームレート欄の数字については、そのカメラ(≒撮像素子)の最大解像度時のものです
注目の各センサの”特性値”については、次回エントリ時に持ち越して(^^;)、
今回はいつもの如く、以下からまずはセンサの仕様等について傾向を概観してみたいと思います。
↑POINTGREY社現役(産業用)カメラの採用撮像素子開発メーカー内訳
分母は全35種類の撮像素子になります。以下表と図も同様です。
①この世界でも(予想はしていましたが)ソニー圧倒的シェア
7割超です
この業界でも、カメラメーカーに如何にソニー製素子が評価されているかを、直接インタビュー等しなくても雄弁に物語っているデータと思います。
②スマホカメラ等の一般的カメラでよくお目見えする
OmniVision
Samsung
の2大メジャーメーカーはこの世界には進出していないようです
※正確には、少なくともPOINTGREY社のカメラには搭載されていません
その他は図と表の通り、
Aptina、SHARP、ON Semiconductor、e2V、CMOSIS が仲良く2種類ずつ程度素子採用されています。
(”
e2V”の名前は弊blogでは初登場かと思います。恐らく一般的な民生カメラ向けなどには進出していないと思いますが、例えばよくお世話になっている”
Image Sensors World”の”
Image Sensor Companies”の欄には普通に記載されている様なセンサメーカーです)
↑POINTGREY社現役(産業用)カメラの採用撮像素子のCCDとCMOSのセンサタイプ別内訳
↑POINTGREY社現役(産業用)カメラの採用撮像素子の、グローバルシャッタとローリングシャッタのシャッタタイプ別内訳
※CCDはその方式上全て”Globalシャッター”にジャンル分けしています
③CCDが全体の6割!CMOSタイプは残り4割
④グローバルシャッタ方式のセンサ採用率が全体の9割超で圧倒的!他のジャンルのカメラで圧倒的に多いローリングシャッタセンサはたったの9%程度しかない
今回、ここの上記
③と④の結果に、”産業用カメラ”、”マシンビジョン用カメラ”に求められる仕様が他のジャンルのカメラと異なるという事実が如実に現れているなと感じました。
おもしろいです(^^)
恐らく産業用カメラというのは冒頭の前置きで書いた様な用途で用いられることを前提としているため、
例えば検査工程で流れてくる製品の”形状やマークなどを認識”、または認識のみならず”形状自体が正常かチェックする”必要が出てくると思われます。
その際、グローバルシャッタ機能を持たないCMOSセンサ搭載カメラでは、一度ラインを止めて撮像する行為を繰り返さない限りは、多少なりともローリングシャッタにより”歪み”が出てしまいます。
そのせいで、誤検知や正誤判定不能な状態になってしまいやすくなるのでは目的に合致しないため、
グローバルシャッタ機能が搭載されたCMOSセンサか、
元来がその読み出し機構上グローバルシャッタとなるCCDセンサ
が圧倒的に好まれている理由であると思われます。
スマホ、民生ビデオ、CMOSセンサ搭載のコンパクトデジカメ、一眼レフカメラのジャンルでは、現在ラインナップされているカメラは基本的には皆グローバルシャッタ機能を持たないローリングシャッタのセンサが搭載されていると思います。
例外は、まだCCDが搭載されているコンパクトデジカメと、LEICAでCMOSIS製素子採用のカメラ、業務用ビデオカメラの一部の機種のみなのではないかなと。
それと比較すると、CCDが全体の6割。CMOSセンサにおいてもグローバルシャッタ機能付きのものがほとんどというのは、この業界用カメラのかなり特徴が出ている部分だと感じました(^^)
↑POINTGREY社現役(産業用)カメラの採用撮像素子の、光学フォーマットサイズ内訳
項目分けのサイズがこれでよかったのか微妙ですが(^^;)、ひとまず言えることは、
⑤1/3~2/3インチサイズで全体の77%
グラフで項目でまとめてしまいましたが、
基本的には、1/3インチ、1/2インチ、1/1.8インチ、1インチの4種の素子サイズが最も多い。
⑥1インチを超える素子サイズ搭載カメラは無い (PointGrey社には)
⑥は、カメラの採用マウントに理由がありそうです。
originalのカタログには記載がありますが(弊blogの一覧表には記載していませんが)、
PointGrey社のカメラの採用マウントは、CマウントかCSマウントのいずれかとなっています。
どうもこの
Cマウントとそのレンズ群というのが、どんなにイメージサークルをがんばったものでも1インチサイズが限界ということの様です。
ですので、このマウントを採用したカメラには1インチ以上の素子を搭載することは、コスト及び容積増を招くだけで実益が無いと思われるため、自然と1インチまでのサイズの素子でしかないということの様です。
↑POINTGREY社現役(産業用)カメラの採用撮像素子の、画素数内訳
⑦基本的には200万画素前後の画素数センサが4割超で主流
ただし、数十万画素から1000万画素強まで、かなり広い範囲でラインナップが揃っている
また、リストには記載していないが、センサ画角のアスペクト比(縦横比)も、カメラ≒センサによってかなりマチマチ
これは上の⑤と、以下画素ピッチやフレームレートの話とも密接に絡んでくると思うのですが、
産業用カメラは、エンドユーザー毎に
・解像度がどのくらい必要か?
・必要なフレームレートは?
・必要な感度は?
・必要な画角は?
などの用件により、画素数、フレームレート、画素ピッチ、光学フォーマットサイズが異なってくると思われます。
ビデオ(≒TV)の様に基本的にFHDという規格が決まっていて、すると解像度は200万少々で、フレームレートは60i。後は感度等諸特性と筐体の大きさなどのバランスで画素ピッチと素子サイズを決めよう・・・
一眼カメラであれば、35mmかAPS-Cという光学フォーマットサイズが決まっていて、じゃあ後はそれに合わせて画素数と画素ピッチを決めよう・・・
という流れにならず、エンドユーザーも趣味ではなくて仕事なので、(マウントシステムやカメラインターフェース仕様も含めて)最も優先順位の高い仕様から消去法でカメラを選んでいくしか無いと思われるため、
産業用カメラメーカーとしてはお客を取りこぼさない思想でいくと、このくらい様々な仕様のカメララインナップが必要になってくるのかもしれません。
POINTGREY社としては、マウントをCとCSに絞っている(?)ため採用撮像素子の制約としては(グローバルシャッタセンサであることが望ましいのと、)”1インチ以下の素子である”というものがあります。
が、逆に言えば”それだけしか”制約が無いため、後に出てきますが、
画素数、画素ピッチ、素子サイズ、フレームレートはかなり統一間無く、幅広く均等に分布しているという全体的な印象です。
また、センサアスペクト比の話も、趣味や伝統で”35mmのライカ判はアスペクト比3:2”とか決まっている訳ではないため、
”レンズ及びマウントのイメージサークルをなるべく有効に使う≒写せる範囲の情報はなるべく多く取り込んでおく”
という思想であるならアスペクト比1:1の正方フォーマットが最も理にかなっているため(実際そういう撮像素子搭載カメラもラインナップされていた)、アスペクト比もきっちり決まらずにマチマチになるのかな?などと思いました。
アスペクト比に関しては制約事項はフレームレートぐらい(正方に近くなった分上下の領域の読み出す必要のある画素が増えるという意味で)で、それもCMOSセンサ搭載カメラであれば、不要であればそこは読み出さないという設定も可能であるため(産業用カメラでは
”WOI”機能←p12参照はかなり重宝される機能な様子)、ますます気にならない仕様なのかなと。
↑POINTGREY社現役(産業用)カメラの採用撮像素子の、最大フレームレート内訳
※このフレームレートはそのセンサのmax解像度時の数字です
⑧下は7fpsから上は162fpsまで。しかもそれなりに均等に分布
この仕様(特性)に関しては、完全に”大は小を兼ねる”で、何故ならほとんどのカメラ≒センサが、恐らく”フレームレートを下げる”というファンクションは持っていると思われるため。
なので、この仕様に限っては用途に拠らず”カメラ≒センサの値段が同じであれば”迷わずフレームレートが速い方が良いカメラ≒センサ。
しかし、いくら規格が無いとはいえ、恐らく動画カメラとして使うことが多いと思われる分野で10fps以下のフレームレートでも商品性があるとは・・・(^^;)
まあ、昔一度書きましたが、監視カメラで超高解像度なもので2fpsというCCDカメラが存在しましたし、色々な目的があるんでしょうね(^^;)
逆に上はFHD相当の画素数センサでも100fps以上のものも軽くいたりして、その辺のセンサ(≒カメラ)は民生ビデオや一眼、コンパクトの動画機能とは一線を画すところ。ほんとピンキリです(^^;)
(もしくはそれぐらいのフレームレートのものは、民生ビデオ等とは異なって分解能が低かったりするのか!?)
↑POINTGREY社現役(産業用)カメラの採用撮像素子の、画素ピッチ内訳
⑨2um前半~最大10um□弱まで広く分布
最頻分布帯は3~4um□台 ←比率は違えど、このあたりは
一眼カメラと似た傾向
少なくともスマホ及びコンパクトデジカメ搭載カメラは、今1um□台の画素ピッチセンサ搭載カメラが大半でしょうから、そういう意味では産業用=仕事用・業務用という意味で、
カタログスペックではなく、実用上必要とされているスペック重視というラインナップに思えます。
さて、長々書いてきましたが、まだ途中で(^^;)
最も個人的に興味深かった、センサの特性値に関しては、今回は(珍しく)計画的に次回のエントリへ持ち越ししようと思います(^^;)
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