やっと
チップワークスが、iPhone6sのカメラ搭載撮像素子の解析結果を発表してくれました。
本来は
このページで会社のメールアドレスを記載しないと、解析結果のpdfにたどり着けない仕組みになっていますが、
ありがたいことに
imagesensorworldさんのサイトでクリックすると、オリジナルpdfの在り処に飛べるようにしてくれてますね(^^;)
↑今回、66ページの大作レポートなのですが、ただし!イメージセンサに関してのレポートページは事実上、上の写真1ページのみです!(T^T)
メインカメラ、サブカメラ合わせてです。そして解説の類は一切ありませんでしたorz・・・
[1回]
これは”レポートすることは大して無い”というチップワークスのメッセージなのか、それとももう世の中的にスマホのイメージセンサへの興味の失墜(≒解析需要が無い)を意味するのでしょうか・・・
さて、気を取り直すとして、以下、
以前iPhone6s/plusに関する仕様を私なりにまとめたものを再掲です。
①新色ローズゴールド登場②液晶サイズとラインナップ構成とも6/6Plusの時同様引き継がれた③リア(≒メイン)カメラの画素数が遂に800万画素から1200万画素へ、フロント(≒サブ)カメラの画素数は120万画素から500万画素へ大幅up④リアカメラの画素ピッチは1.22um□ (フロントカメラは非公表)⑤4K動画撮影&記録可能 (30p)⑥LivePhotos機能。スワイプした時や押し込んだ時に写真を撮った前後1秒間の動画も記録されていてそれがちょこっと動く機能⑦3Dtouch機能搭載⑧カメラが手振れ補正ユニット込みなのは今回も”Plus”の方だけ。 そしてその手振れ補正が、6の時は静止画時のみ有効だったのが、今回は動画時にも有効になることに。⑨FaceTimeカメラのフラッシュ代わりに、液晶画面を瞬間的に3倍明るく光らせることで代用する機能追加⑩(今回最も意外なことに)筐体サイズが縦横厚さすべてわずかに大きくなり、そして重量が増加した⑪カメラ開放f値2.2は6の時と変わらず。リアカメラの撮像領域サイズも、(画素ピッチと画素数から簡単に計算すると)概略変わらず。
上記を踏まえ(?)、ここからが今回の本題ですが、掲載された冒頭写真等から今回新たにわかったことを抽出すると、以下の様になるかと思います。
1) メインカメラ(=iSightカメラ)、サブカメラ(=FaceTimeカメラ)共に、iPhone6から引き続きソニー製撮像素子を採用
これは個人的に予想通りで、順当と言えば順当な感じではないでしょうか。
ただ、
A9チップがTSMC製とSamsung製の2種類があったという事実があったのでもしや?という思いがあったのと、今回の解析はiPhone6のみの結果ですので、厳密にはiPhone6sPlusの方も確認してみなければ断定出来ないというのはありますが、
まずはこの結果をもって撮像素子の方はソニー一社供給と見て良いのではないでしょうか。
2) Appleの発表通り↓、(冒頭写真の②より)
メインカメラの方にはDTI (≒Deep Trench Isolation:ここでは主に光学的及び電気的な混色防止目的)構造を導入
↑冒頭写真②。iSightカメラ搭載素子断面。DTI部
もしかしたら、サブカメラの方にも採用されているのかもしれませんが、チップワークスのレポートでは触れられていません
また、②写真を見ると、
DTIはフォトダイオードの光入射側(≒写真の下側)から丁度半分程度の深さまでで終わっています。
少なくとも
Samsungなどは、以前はフォトダイオードの深さ方向全てをDTIで分離していた頃がありましたが、
GalaxyS5搭載素子ではやはり今回のソニー製素子同様フォトダイオードの概略半分程度の深さでDTIを終わりにしています。
↑最近は各社(両社?)”フォトダイオードの深さ方向全てに渡ってDTIを形成する特性上の意味は無い”という見解が主流ということなのでしょうか。
また、あくまで写真からの目分量での話ですが、
このソニー製撮像素子のフォトダイオードの深さは、画素ピッチの2.5倍程度はありそうですから、画素ピッチの1.22umを元にすると、
凡そ3umちょっとありそうでしょうか。
余談になってしまいますが、
1年前のSamsung製素子(≒NX1搭載:画素ピッチ3.6um□)との比較になってしまいますが、このSamsungの素子のフォトダイオード深さは3umまでは無く、2.5um前後程度に見えます。ひとつ上のリンクのGalaxyS5搭載Samsung製撮像素子のフォトダイオードの深さも同様に目分量ですがやはり2.5um程度。
理屈はPDが深い方がより波長の長い光に対する感度アップが見込めるはずですが、このあたりはソニーとSamsungで、多少Bestと考えるPD深さが異なりそうです。
また、同じ②の断面写真から、
メインカメラ素子のtop基板(≒センサ基板)側のメタルの層数は4層の様に見えます。
3) サブカメラの方の、独特なカラーフィルタ配置↓は”6”に続き”6s”においても健在
↑冒頭レポート写真の⑥
これは
昨年”6”の時に色々推測しましたが、主に以下二点の理由により、
”HDR機能のための構造”という風にimagerマニア的には結論しています。
・動画時のHDR機能がサブカメラの方にしかなかった
・そっくりな特許がソニーから出ていた
4) メインカメラ、及びサブカメラの画素ピッチは以下
メインカメラ:1.22um ←Apple発表通り
サブカメラ :1.12um ※ただし、上記3)の様に特殊配置のため、
カラーフィルタピッチは倍の2.24um ←Appleは未公表
5) ”6”同様、
”6s”でも、メインカメラ及びサブカメラ共に、積層裏面照射型構造のセンサを採用
↑冒頭写真の表より
6) メインカメラ及びサブカメラとも、レンズ開放F値はf=2.2
↑共に
Apple公表済み
7) メインカメラの積層型センサは、”6”同様"6s"も、
上下及び左右の片側のみの計3辺において(恐らくTSVによって)top基板とbottom基板が導通されている
↑この写真の向きで言うと、上下と右端に3列くらい並んでいる様に見えるシルバーの様な色のところが恐らくTSV(シリコン貫通Via)箇所
8) 像面位相差AFは、サブカメラ素子には無く、メインカメラ搭載素子の方のみで、
その配置は、”6”同様”6s”も離散配置型
↑黄色い枠は私が後から追加したもので、
像面位相差AF画素配置の最小繰り返し(?)単位で、
16×8=128画素中に、像面位相差AF画素が4画素
4÷128=3.125%
仮に全画素に渡ってこの配置周期が繰り返されているとした場合、3.125%の割合で(恐らく写真解像度に寄与しない)像面位相差AF画素が存在することになります。
同じ離散配置型でも、”6”搭載素子に対して、”6s”の方は、丁度倍の位相差AF画素割合に増えていますね。
ちょうど6で配列が互い違いになって隙間が空いていた箇所にも位相差画素が配置された感じです。
これは、撮像よりもAF能力の方がトータルのiPhoneカメラとしての性能にとって重要という判断なのか、それとも画像処理での位相差画素の補正能力が年々向上していることを意味しているのか、単に画素数がアップしたので位相差画素が増えても目立ちにくくなっているということなのか・・・
いずれにしても、個人的には精神衛生上好ましく無い方向へ舵を切られている気がします(^^;)
また、対になっていると思われる位相差画素の上下方向の距離≒画素数が、6では5画素離れていたのですが、6sでは3画素に縮まっています。これもAFアルゴリズム&AF精度上、”こちらの方が良い”と、この一年間で変化した箇所なのでしょうか?
画素ピッチも小さくなっているため、実際の位相差AF画素同士の差は画素数以上に縮まっているはずなのですが。
やはり像面位相差AFに関しては
各社各様のままですので、ここはまだまだ進化の余地、検討の余地があるということなのだと私は捉えました。
9) (微妙)今回、公表された8)の写真の解像度が悪いため、もしくはこのiPhone6s搭載ソニー製撮像素子のPDの可視光の吸収率が高いためか、上面から見た写真の色味がはっきりしません。
もしかしたらベイヤ配列ではなくなっている??
赤画素があるのは間違い無いように見えるのですが、残りの色が微妙です。
4画素で一組のベイヤ的な繰り返し周期のカラーフィルタ配列であることは間違い無い様に見えますが、何か赤の対角に存在するはずのブルーがエンジの様な色に見え、ベイヤ配列でグリーン画素があるべき箇所にブルー画素があるように見えてなりません。
↑まあただし、未だこんな赤、エンジ、ブルーのフィルタ配列で色再現させる試みの話は聞いたことがありませんので、(見え方だけの問題で、実際には)順当にベイヤ配列カラーフィルタなのだとは思うのですが、少し気になりました(^^;)
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