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Imager マニア

デジカメ / デジタルビデオカメラ / スマホ用の撮像素子(イメージセンサ/imager/CMOSセンサ)について、マニアな情報や私見を徒然なるままに述べるBlogです(^^;)

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IISW2015のchipworks発表資料和訳 ~後編:これからは積層型(Stacked)センサ。そして現実績はソニー断トツ

先週先々週の続きで、IISWのチップワークス発表積層型センサ報告編です。
例によって、オレンジ色は私の補足や感想などです。

Ⅳ.Disruptive Technical Event:The Emergence Of The Stacked Chip CIS
(破壊的な?突発的な?技術的な出来事:積層型CMOSイメージセンサの台頭)

 ・stackedチップのCMOSイメージセンサを調査する動機は幾分変化に富んでいる
・しかし以下の様にまとめることが出来る
 機能の追加
 製造方法のフレキシブル性
 3D積層しているそれぞれのDie(=チップ)の最適化の促進

ソニーは2012年にコンシューマー向けのカメラシステム向けに、世界で初めて積層チップCMOSイメージセンサを発表した

拍手[2回]

・そしてその後、800万画素のISX014チップは2013年初頭のタブレット機器に搭載されていることがわかった
・その第一世代チップでは、共にソニー製造の
 90nm世代CMOSイメージセンサDie(=チップ)のパッドから
 65nm世代のISP(image signal proccessor)のパッドへ
 接続するためにTSV(Through Silicon Via:シリコン貫通ビア)を採用していた
・Die Stack(≒チップ積層)は、ISPチップ上に作りこまれた伝統的なシステムオンチップCMOSイメージセンサの機能などを(CISチップから)分離することが出来る
・すなわち、CIS(CMOS Image Sensor)チップには画素領域と、行駆動回路の最終段と、列並列ADCのコンパレータ(比較器)の部分のみが残る構成にすることが出来る

 ↑このチップワークスの解析は、あくまで'14年いっぱいまでの結果を報告しているのだと思うのですが、
その後今年のISSCCで列ADC全てを積層チップのbottom側(≒ISP die側)に移したと思われる記述があるのと、
加えてこの報告に後ほど出てくるソニーIMX214という撮像素子では実際にbottom基板側に、列ADCのコンパレータ部分をも移されていることがわかっています。
また、この後、別blogエントリを立てようと思いますが、ソニーのRX100MⅣ搭載撮像素子の列ADCもbottom側基板側に移されている可能性が濃厚な様に思います。
 
 また、前回エントリの内容に戻ってしまいますが、”画素分離のためのDTIを導入しているのはSamsungだけ”、”clear画素≒white画素を製品化しているのはOmniとAptinaだけ”という様な内容に受け取れるチップワークスのレポートになっていますが、
やはりその後ソニーのIMX278というのレポート(←このページの”For more ~”でDL)で、ソニーも裏面照射型センサPDの半分程度の深さまで、同様な技術及び目的と思われるDTIらしきものが導入されていて、また同時にRGBWのカラーフィルタ配列のセンサが製品化されていることがわかります(それぞれ下写真参照)。

↑チップワークスより。ソニーIMX278の断面と思われる写真。下側が裏面=光入射側
 PD形成部のSi層に画素単位で空隙の様なものが見られます。

↑チップワークスより。ソニーIMX278の画素部上面写真と思われるもの
AptinaのClarity+テクノロジーというのは、G画素無しのredとBlueが25%、Clear画素が残り50%という割合でしたが、ソニーとOmniは”G画素単体も必要”というスタンスの様で、
(Omniの割合は不明ですが、ソニーは上の写真からすると)、white画素50%(=半分)、G画素が25%(=1/4)、redとBlueが12.5%(=1/8)という色比率(?)となっている様です。
 いや~、しつこいようですが、個人的にはRGB画素が全体の半分しか無いなんて、色再現性が本当に心配です(^^;)


・注目なのは、デザインルールがmix(ここではCIS用のプロセスとISP用のロジックプロセスが混在していることを指していると思われます)なために、CIS die上のコンパレータブロックは画素ピッチと合わせて並べられているのに、65nmルールのISP die上に付随する列回路は、画素ピッチよりも25%狭い面積に収まっている

つまり、この↑bottom基板側の上部”counters”というコンパレータからつながる列回路のレイアウト幅が、下の写真↓のtop基板側の”comparators”のレイアウト幅(←ほぼチップ幅いっぱいいっぱい)よりも、25%狭いのは、双方の基板で用いられているプロセスルールが異なるからだ とチップワークスは分析しているのですね

↑このtop側基板の下側を見ると、”dummy structures"という領域がありますね。
つまりは平たく言うと”何も無い”ということだと思うのですが、これは本来理想的では無いですよね。
これはISX014の撮像領域が小さい割にbottomチップのISP機能が豊富(≒面積が大きい)だったために、bottom基板が65nm世代プロセス製造では撮像領域サイズに収まりきらなかったということなのでしょうね
まあこれを積層チップにせずに、センサと同一基板上に作りこむことを考えれば、それよりはこちらの方がはるかに良いと思いますが。
 また、ISPチップ側の”logic circuits”は妙な形の領域になっていますね。これは発熱部分を分散させたりする配慮上このような配置領域形状になっていたりするのでしょうか?

・ソニーの第二世代積層CISチップである1300万画素のIMX214は、同様に90/65nm(CIS/ISP)技術世代を用いて製造されている
・続けてFLAT technology(←これは何のことを言っているのかわかりません)が使われているが、小画素(≒狭画素)裏面照射型チップであることに気づく
・ソニーは、STIプロセスモジュールを完全に取り除くことによって、IMX214のウェハ製造フローを簡素化している
 ↑??写真を見るとTSV自体は存在したままの様ですが、この一文は何を言いたいのでしょう。私には理解できていません



・この第二世代積層プロセスでの重要な仕事は、列読み出しい回路を全てbottom基板側に移すことによって、CIS基板を単に画素だけのために使い、
周辺トランジスタISP基板へ押しやりCIS基板から追い出したことである
↑つまりこれは、こうすることで、ISPロジック用トランジスタに加えて、コンパレータなどのアナログ素子回路に用いるトランジスタ性能を気にする事無く、
top基板の使用プロセスを画素で用いるトランジスタやフォトダイオードに完全に特化したものに出来ることがメリットだと言っていると思われます

・2014年、ソニーはアップルiPhone6/6PlusのiSightカメラのISPチップ製造工場にTSMCを使うことによって、積層チップであればウェハベンダーの柔軟な選択が可能であることを証明してみせた
 ↑積層チップのメリットのひとつと言って、積層型センサ発表当初からソニー自身が訴えていたことを実践したということですね。TSMCがソニー用のチップ製造を行った実績があることを初めて知りました。
しかしISPチップをTSMCに作ってもらうという選択肢がありながら、それでもソニーは自社Fabの拡張にお金を投資していたり、ソニー製センサの供給不足が巷でうわさされたりしているのが不思議です

・これらのチップは、ソニーの90nmCISウェハと、TSMCの40nmISPウェハを組み合わせている
↑裏を返すと、ソニー単独では40nm世代プロセス開発&保持への投資は負担が大きかったということなのでしょうね

・サムスンとオムニビジョンは双方とも小画素で積層チップCISを既に試作完了しており、双方とも2015年中にはほぼ確実に採用されると思われる
 ↑こちらも裏を返すと、積層型センサに関しての実績は、ソニーの方がこの二社よりも頭二つほどリードしているという感じでしょうか。
GalaxyS5カメラセンサはサムスン製積層チップだと思っていたですが、誤りだったでしょうか?

・最近の積層センサ製品の発表に含まれるハイライトは、以下。
 2000万画素以上の解像度
 HDR
 像面位相差AF画素
・加えてOmniVisionは世界初の積層チッププロセスにおいての1.0um画素センサを発表している

・今後も継続して積層型CISの開発が、IDMとファウンダリーの間で積極的に行われるだろう
 そして、今後数年の間で急速に積層型チップの(カメラ機器への)採用が進むことが予測できる



 3回に分けてしまった、IISW2015のチップワークス発表内容の和訳も以上で終了となります。
やっぱり要点だけまとめないと、和訳はつたないのに文面だけ長くなって駄目ですねf(^^;)
今後は考えます。

 結局、今回2013~14年の最新事情という雰囲気のこのチップワークスのレポートで登場した企業は、
◆カラーフィルタ間の遮光(?ついたて?)とカラーフィルタの埋め込みに関して
 Aptina / SONY / Samsung

◆位相差AF(DualPixelCMOSAF)に関して (注目すべき例外として)
 Canon

◆Clear(≒white)画素を含むカラーフィルタ配列について
 Aptina / OmniVision
(このレポートにはありませんが、少なくともサンプル発表としては、現在までのところソニーとSamsungも行っています)

◆積層型センサに関して
 Sony
(おまけでSamsungとOmniVision。また、採用実績はわかりませんが、発表だけなら今年Aptinaも行っています)

 こうやって見ると、スマホ用の撮像素子を製造していないと思われるキヤノンを除いて、
少なくとも画素ピッチの小さいセンサを作っているソニー、Omni、Samsung、Aptinaの4社は、多少のタイムラグはあれど、どこも同じ方向に向かって(今のところ)走っているというのがよくわかります。
 また、このチップワークスのレポートと、以前から何度か紹介しているアルバート・タウンゼント先生(?)のIISW2015のレポートをあわせてみると、
やはり今回から新たにひとつのセッションとして設立された積層型イメージセンサが活況・・・というか今後しばらく注目分野であるということもよくわかりました。



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コメント

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雑多な感想で申し訳ありません

"Disruptive technical event"は"One risk is the potential for technology convergence leading to consolidation of overall market share, or for disruption within a sub-sector."を受けてのタイトルでしょう。「成否がシェアに劇的な影響を与える技術」というような意味だと思います。

ロジック回路の配置ですが、回路設計ソフトウェアを使うと、配線距離最適化のためロジック部とメモリー部が明確に領域分けされないと聞いたことがあります。

DTIを適用したBSIのPDは処理工程が増えているので、製造に時間がかかるのかもしれません。

FLAT technologyは公開されていますよ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009437926

Re:雑多な感想で申し訳ありません

しばらくコメントせずに、変な気を使わせてしまいまして申し訳ありませんm(_ _)m

>を受けてのタイトルでしょう。「成否がシェアに劇的な影響を与える技術」というような意味だと思います。
ありがとうございます。明らかにその訳の方が内容にあってますねf^_^;

>ロジック回路の配置ですが、回路設計ソフトウェアを使うと、配線距離最適化のためロジック部とメモリー部が明確に領域分けされないと聞いたことがあります。

そうなんですね、メモリも合わせて最適レイアウトされるんですね。
でも言われてみれば、そうしてくれないとSRAMとのdelayとかで所望の仕様を満たさないことになったらたまりませんもんね

>FLAT technologyは公開されていますよ。
>http://ci.nii.ac.jp/naid/110009437926

こちらもありがとうございます。
読ませてもらいます

  • imagerマニア
  • 2015/07/13(Mon.)

Galaxy S6のカメラ

「Galaxy S6」および「Galaxy S6 Edge」でメインカメラについてソニー製と自社製の2種の異なった(しかし仕様上はいずれも公称スペックを満たす)カメラモジュールを混在させていることが発覚しました。
<http://app-review.jp/news/261594>
だそうです。

Re:Galaxy S6のカメラ

>「Galaxy S6」および「Galaxy S6 Edge」でメインカメラについてソニー製と自社製の2種の異なった(しかし仕様上はいずれも公称スペックを満たす)カメラモジュールを混在させていることが発覚しました。

情報ありがとうございます。
液晶やバッテリー、コンデンサ等では二社調達の話は聞いたことはあったのですが、撮像素子で行うとは驚きました。
iphoneとかではやってないのじゃ?と思うのですが、まさかiPhoneにもsamsung製素子が入っていたりするのでしょうか?f^_^;

  • imagerマニア
  • 2015/07/13(Mon.)

つらつらと、、、

私も雑多な話で恐縮ですが、、、

ソニーが自社で生産能力を増強するという点について、経営的に見ればいくつか思いつきます。一番分かりやすいのは、やはりノウハウの流出が怖いということでしょうね。確かに、たとえば契約で縛りきれる話ではないだろうなと思いつつ、、、

▼ ソニー、CMOSセンサーで戦略転換
ハイエンド一辺倒から脱却、主戦場は新興国スマホに
http://www.sangyo-times.jp/article.aspx?ID=1046
―引用開始―
生産能力の拡張においては、当初ファンドリーなど外部委託も検討されていたようだ。しかし、山形テックがルネサス時代から培ってきた高い技術力、そして「CMOSセンサーのノウハウを海外に出したくない」(ソニーセミコンダクタの久留巣社長)という思いも働き、自社拠点の拡充という決断に至ったようだ。
―引用終了―

また、Clear(≒white)画素を含むカラーフィルタ配列についてですが、こんなページがソニーにあります。

▼ 新技術・新構造で、お客様とともに新しい映像体験を創造
これまでの課題を一挙に解決、積層型CMOS イメージセンサ
http://www.sony.co.jp/Products/SC-HP/cxpal/vol92/sideview/

ここに、こういうことが書いてあります。
―引用開始―
従来のRGB画素にW(白)画素を加えた「RGBWコーディング」機能を搭載することで、高感度化を実現し、室内や夜景などの暗いシーンでもノイズの少ない高画質な撮影が可能となります。
W画素を加えると、感度を上げられる利点がある反面、画質が低下するという課題がありましたが、今回、独自のデバイス技術と信号処理の開発により、画質を損ねることなく高感度化を実現しました。
―引用終了―

W画素を加えると画質は低下するとはっきりと書いてありますね。^^;

Re:つらつらと、、、

>ソニーが自社で生産能力を増強するという点について、経営的に見ればいくつか思いつきます。一番分かりやすいのは、やはりノウハウの流出が怖いということでしょうね。確かに、たとえば契約で縛りきれる話ではないだろうなと思いつつ、、、

 確かにおっしゃられる通り、契約で縛りきれる話ではないですよね。昔からこの手の話は・・・

しかしもう少なくとも積層センサのbottom基板(主にシグナルプロセッサー側)はTSMCに委託してしまっているんですよね、チップワークスの報告によると。
もう一社に出してしまったんであれば、後はたいした差では無いように傍目からは見えてしまうのですが・・・
それとも今後の需要を考えると、top基板側の画素領域のチップウェハを作るだけでもソニーの現状の工場では不足していて、増築が必要なのでしょうか?
そこまでのレベルであれば理解できなくも無いのですが・・・

何か、このままの調子でソニーのイメージセンサ関係で投資を進めるのは、今のシャープあたりの二の舞になりそうな感じがして心配になってしまっています(^^;)


W画素採用センサについてはこちらは(私の個人的な懸念?などは当然無関係に)勢いは止まりそうにありませんね(^^;)

  • imagerマニア
  • 2015/08/02(Sun.)

Re:Re:Galaxy S6のカメラ

個々の機種までは調べられませんが、フィーチャーフォンの時代にNokiaやEricsonは必ず2社からセンサーを調達していました。Samsungも同様だったはず。ただし正確にはカメラモジュールを2社から調達していたので、内部のセンサーは同じ場合もあったようです。

Galaxy S6はセンサーまで2社から調達しているのが確実です。iPhoneは少なくとも現行機種については、センサーが1社、カメラモジュールが2社のはず。

Re:Re:Re:Galaxy S6のカメラ

>hmbさん

毎回情報ありがとうございます。

>個々の機種までは調べられませんが、フィーチャーフォンの時代にNokiaやEricsonは必ず2社からセンサーを調達していました。
>iPhoneは少なくとも現行機種については、センサーが1社、カメラモジュールが2社のはず。

フィーチャーフォンの時代から、カメラモジュールの二社調達は普通にあった話だったのですね。
というか、私自身、今回の話があるまで、カメラモジュールとイメージセンサ単体を同じ扱いで気にせず考えていました。

でも面白いですね。
カメラモジュールが二社からで、イメージセンサが1社の場合、
カメラモジュール会社に対しては、モジュール化の価格競争と供給リスクヘッジの双方がセットメーカーにもたらされると思うのですが、イメージセンサ会社に対しては上記双方のメリットが出なくなりますね(^^;)。
それも覚悟の上で、全て一社から調達よりは、モジュール会社だけでも二重にしておいた方がリスク回避にはなるという判断なのだとは思いますが。

  • imagerマニア
  • 2015/08/02(Sun.)

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