一年は早いですね。今年もこの週末行ってまいりました”
NHK放送技術研究所公開”、略して”技研公開”。
今年は何か他の年よりも気合が入っていたのか、例年では見たことの無かった毛筆風の”技研”の文字↑が、誇らしげに玄関横天井にデカデカと掲げられていました。
[2回]
↑用賀にある、NHK放送技術研究所入り口がイベントに合わせてドレスアップ
用意されているパンフや垂れ幕も、今年はこのデザインで統一
今年のテーマ(?キャッチフレーズ?)は
”~究極のテレビへ、カウントダウン!~”。
ひとつ上の写真のデザインは、このテーマをイメージしたものの様です。
ちなみに過去、私が足を運んだ時の技研公開のテーマはそれぞれ以下。
'14年:”
~ココロ動かすテクノロジー~”
'13年:”
~期待、見たい、感じたい~”
'12年:”
~わくわくが、あふれだす。~”
正直、過去のものはいずれも
パッと読んでも全くテーマ性というか意味を感じない(^^;)ものだったのですが、今年は本当に2016年の試験放送、2018年の実用放送開始に向けて、世間の8Kへの理解と認知度アップに”(極端に言うと)必死、躍起、危機意識を感じている”という風に私には感じられました(^^;)
上記テーマと危機意識(?)が反映されたのか、
今年のブース展示は基本的には
”2020年のオリンピック放送に直接間接に関係しそうな技術テーマを優先して選ぼう”
という空気が感じられるラインナップになっていた様に思います。
(除:インテグラル立体TV関連)
ただ、imagerマニアにとっては上記テーマと意識が裏目に出た感があり、率直に言うと”カメラ・撮像素子関連は外れ年”(正確に言うと、
内容は抜きにして例年と比較して、カメラや撮像素子関連の展示数が少なかった年)という感がありました。
具体的には、
・ここ数年連続でブースないしはポスター展示されていた、
いわゆる”有機三層撮像素子”展示がなかった (←去年ちょっと辛辣なことを言い過ぎたでしょうか?^^;)
・昨年鮮烈に発表され、個人的にはその画素数に度肝を抜かれ、しかし
詳細は一切明かされなかった1.3億画素センサが、今年は何もなかったかの様に姿形も見せなかった・・・
答えを先に言うと、展示員の方に質問して返ってきた回答を信じる限り、当然
研究やカメラ化を断念したという訳では無く、”カメラ化も出来てそこから映像信号も出力された”ということだそうです。それなのに今年アピールしない意図が私には全く理解できません??-_-b
・新しい8Kカメラ発表がなかった (←上記1.3億画素センサ搭載カメラが発表される可能性が高いかと思っていたのですが・・・こちらは「既に8K放送に必要な実用的なカメラは揃ってるよ!」って意思表示なのかもしれませんが・・・)
それでもまず無理矢理にですが、直接カメラ自体が主役の展示ブースを取り上げると、以下二つ。
↑ 右側の8×8=64のレンズ群の裏に8×8=64のカメラアレーが存在する”
インテグラル立体テレビ”撮影用カメラ
詳細は割愛しますが、NHKがスーパーハイビジョン(≒8K)の次に2030年頃に実用化を狙っている、ラフに言うと”グラスレス3D”テレビ映像撮影用のカメラ試作機です。
一つのカメラがFHD撮像素子搭載だそうで、合わせると
その有効画素数は
15360 × 8640 ≒ 1.3画素
ベイヤ単板だと丁度フルスペック8Kの画素数になりますが、展示員の方に聞くと
「
これは目指すべき最終形態では無い。現存している単板撮像素子では画素数が不足しているから仕方無く複数のカメラを使っているが、このカメラを放送現場で使うのは現実的では無い。複数カメラで撮影すると”多くの角度からの映像が得られる”という副産物はあったが、最終的には画素数さえあれば、複数角度から映像を撮る必要は無い」
ということでしたので、過渡期の産物な様ですし、
技術的にもこのカメラは単に複数カメラを並べただけと言えばだけですので、面白みはあまり無いかなと個人的には思いました。
ちなみに私の理解ではこのインテグラル立体テレビの撮影像側の原理は、ライトフィールドカメラとほぼ同じでは?と思っており、
今回のインテグラル立体テレビのカメラアレーの前のレンズアレーの内の一つのレンズに対応するセンサの画素数は20×20=400画素ということで、昨年までとこの数字は変わっていないようでした。
Q.「
レンズ一つに何画素センサ画素数を割り当てられれば理想のカメラになるのですか?」私
A.「今研究段階中でわかっていません。映像の奥行き表現に関わってくるところでして、家の中の映像よりもサッカーのフィールドの様なところを撮る時により多くの画素数が必要になってきます。わかっていることは現状の400画素では足りないということです」
とのことでした。
という訳で、上記やりとりをさせて頂いて直感したのは、”インテグラル立体テレビが実現した暁には、(絵が立体にはなるものの)その表示画素数(絵の解像度)は8Kよりも劣る規格になるんだな”というものです。
というのも、仮に8Kのインテグラル立体テレビだとレンズアレーは約3300万個。その一つ一つに最低でも400画素を割り当てるためには、単板撮像素子だと133億画素必要。
で、「400画素でもまだまだ不足」ということなのだから・・・
「いや~、さすがにこれは2030年でも現実的なシステムサイズでは無理な画素数でしょう(^^;)」と。
やはりNHKは考えていることが大きく、そして遥か未来を見据えてつき進んでいるようです。
余談:今年、見た目ではこのインテグラル立体テレビブースが一番人気↓でした
”画素数足りないから解像度落ちる規格になる”という上記私の考えを覆すためにも(?)取り組まれているのが今年二つ目のカメラシステム。
↑16台のカメラをグルッと被写体の周りに配置して、カメラマン(が”デプス情報”も入力することにより)一人で撮影することを想定した”
多視点ロボットカメラ”
このカメラシステムは、NHKのフィギュアスケート放送で”選手のジャンプをグルッとリプレイで回した映像を見せる”という用途で一部既に実戦投入実績のあるものだとかで、”2020年の東京オリンピックの時には十分実用になっている予定”という風にアピールされていました。
現状、「どうしても
多視点映像を補正して作るのに30秒のディレイが発生してしまう」とのことで、今後もリプレイ用途しか想定していないそうです。
そして会場ではアピール全くされていませんでしたが、上記リンク先pdfに記載されている様に、
”インテグラル立体テレビの撮像システムとして応用
多視点ロボットカメラで撮影した多視点映像から、インテグラル立体像を生成できます”
とのことで、
解像度を落とさずに8Kからインテグラル立体テレビに2030年に移行するには、(あくまで単板撮像素子カメラ一台でこなすのと比較して、相対的には)こちらのシステムで運用する方法の方が可能性があるかな と感じました。
来週こそは、会場の雰囲気もまた書いてしまうと思いますが(^^;)imagerの話にしたいと思います。
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