今年も6月には半導体系国際会議の”
VLISシンポジウム”が開催される予定で、(毎年ハワイと日本の京都の持ち回り開催ですが、)今年は京都開催の番になります。
同会議の位置づけや意義は、
こちらの福田さんという方の記事の冒頭を参照頂いて、つまりは
昨年”ソニーの湾曲センサ”の発表が正式に行われた会議であります(^^)。
素人目には、ワイハと京都の持ち回り開催という、バカンスと観光をエサに来場者を集めようとしてるんじゃないかという(笑)およそ真面目なイメージの感じられない(^^;)国際会議ですが、(もちろんそんなことは無いはずで・・・・・・と言いますか、アメリカの場合は各種メジャー展示会がラスベガスが多いというところからして、そういうのが普通の感覚なのかもですね^^;)
今年
2015年のプログラムが発表されました。
こちらはそのCircuits(回路)の方のプログラムになります。
冒頭の福田さんという方の記事は、プロセッサやメモリ関連にフィーチャーされていますが、弊blogは当然イメージャーに注目。
そしてパッと見で最も気になったOlympusの件を採り挙げて、話を膨らませてみようと思います(^^;)
以下が、発表タイトルとプログラムに僅かな量記載された、上記発表の概要になります。
[8回]
()内は私の直訳です。
「
A 3D Stacked CMOS Image Sensor with 16Mpixel Global-Shutter Mode and 2Mpixel 10000fps Mode Using 4 Million Interconnections」
(
16Mピクセルのグローバルシャッターモードと2Mピクセル&10000fpsモードを備えた、400万個の内部接続を用いた3次元積層CMOSイメージセンサ)
A 16Mpixel 3D stacked CMOS image sensor with pixel level interconnections using 4,008,960 micro bumps at a 7.6μm pitch, which set no layout restriction and causes no harm to sensor characteristics, was developed to achieve both a 16Mpixel global-shutter mode with a -180dB PLS and 2Mpixel 10000fps high speed image capturing mode.
(
7.6umピッチの計4008960万の
マイクロバンプを用いて、画素レベルで内部接続された
16M pixelの3D積層型CMOSイメージセンサ。
そのマイクロバンプはレイアウトの制約無く配置することが出来、そしてセンサー特性に弊害は無い。
上記の様なセンサを、以下の双方のモードを実現するために開発した。
・
-180dBのPLS(=Parasitic Light Sensitivity≒寄生感度?)の
1600万画素グローバルシャッタモード
・
200万画素で10000fps(!!??)の高速画像取得モード)
↑これ、明らかに
2年前のISSCCで、同じくオリンパスから発表された積層型グローバルシャッタセンサの画素数拡張版ですね。
当時は、(※以下右側の()内は、今回VLSIシンポジウムで発表するセンサの数字)
画素数:36万画素 (1600万画素)
マイクロバンプピッチ:8.6um (7.6um)
バンプでの内部接続数:90112 (4008960)
PLS(parasitic Light Sensitivity):-160dB (-180dB)
(バンプピッチからの)画素ピッチ:4.3um (3.8um)
乱暴に言うと、
”画素ピッチを0.5um縮めて、それを1600万画素にし、追加で200万画素で10000fpsモードを載せた”
そんな感じでしょうか。
今回のabstract(?)でわかる情報からでは、恐らく画素部の概要は
2年前のISSCCの時と変わらないのではないかと個人的に思います。
つまり
・
裏面照射型センサ
・
4画素でFD部が共有され、そのFD部をマイクロバンプで積層型のbottom基板側に接続
abstの”マイクロバンプのレイアウトに制約はなくて、かつセンサ特性に悪影響が無い”
という趣旨の文言の意味は、
恐らく上のリンク先の写真の様に、裏面照射型センサで、フォトダイオードの下側(光線入射してこない側)にマイクロバンプを配置して、bottom基板と導通を取るため、
”配置がフォトダイオードに制約を受けることも無ければ、フォトダイオードの面積を圧迫することも無い”と言いたいのだろうと予想します。
また、裏面照射型センサでは、(グローバルシャッタで必要な、)信号電荷を一時保存しておく容量の遮光が困難なことから、元来グローバルシャッタと相性が悪いとされています(?一般論かは?^^;)。
しかし、今回オリンパス発表のセンサでは、
積層型センサにして画素ごとに(遮光可能な)bottom基板と導通を取るようにしたお陰で、
bottom基板側に用意してある一時保存容量(Csh1~4)に、(裏面センサで遮光が難しい)top基板側からフォトダイオードの信号をすぐにbottom基板側の容量Cshへ送り込むことが可能な構成になっています。
そのため、(
恐らく今のところ実用化実績が無いと思われる)裏面照射型センサでのグローバルシャッタセンサにおいて、(-180dBという)良好な遮光性能?を合わせ持つことが可能となっている様に見えます。
惜しむらくは、前回に引き続き今回の試作においてもマイクロバンプでの導通が4画素に1つのままであるところ。
本来厳密な意味でのグローバルシャッタは、”全画素の”露光時間のタイミングが(始まりも終わりも)同一である必要があると思いますが、
この様にFDが4画素で共有されてしまうと、少なくともこの共有された4画素の露光時間のタイミングは同一には出来そうもありません。
ただ、CMOSISも(実際に搭載されたカメラが存在するのかは知りませんが)
この様に横2画素でFDを共有するCMOSイメージセンサでも”グローバルシャッタ”と称していますし、
私自身もこのオリンパスとCMOSISのセンサで撮られた写真や動画を見て、動体の歪みを見つけられる気がしないので、(教科書的にはともかく実用上は)グローバルシャッタと称することに異論はありません。
そして、やっとここからが本エントリで私が言いたかったことのメインとなるのですが(^^;)、
今回オリンパスが”画素ピッチを削った意味”についてです。
ここまでの流れとタイトルから、既に言いたいことを(その内容が正しいかどうかはともかく)理解して頂けた方も多いのでは?と思うのですが、
前回のこのオリンパスのエントリの最後で、以下の様に記載したのですが、
「
4.3umピッチでそのままフォーサーズサイズまで引き伸ばせば1200万画素少々ということで、最近のフォーサーズが1600万画素台が主流なので、グローバルシャッター機能を全面に押し出せば、ギリギリ商品性がある画素数のセンサになるように思います。」
正に今回の狙いはここにあるのではないかと。
つまり、
今回発表のオリンパスセンサの画素ピッチ=3.8um□かつ1600万画素で、4:3アスペクト比の撮像領域を有するセンサを製造すると、ちょうどフォーサーズ規格のセンササイズになるのです。
OM-D EM-1/EM-5mark2の記録画素数は
仕様によれば、4608×3456
これに今回の画素ピッチ3.8umをそれぞれに乗じると、17.51×13.13mm
フォーサーズ規格は、17.3×13.0mm
厳密には多少オーバーですが、恐らくイメージサークル的にはフォーサーズ用レンズは十分カバー出来る範囲ではないかと。
つまりつまり、
「”ギリギリの商品性”の(≒少なめの)画素数センサにグローバルシャッタの付加価値を載せる」
のでは無く、
「現状多くのフォーサーズカメラの画素数(16M)センサに、更にグローバルシャッタの付加価値をつけて勝負しよう」
という意図ではないかと思われ、今回画素ピッチを削ってフォーサーズサイズ&16Mのスペックのセンサにこだわったあたり、
オリンパスのフラグシップカメラOM-D E-M1の後継機に本気で搭載しようと考えているセンサスペックの様に私には感じられます。
(本来は、2年前の試作時から既に、フォーサーズセンササイズ&1600万画素を想定したかったのではないか?と思うのですが、その時にはマージンを持ったマイクロバンプの最小ピッチが8.6umまでしか作れず断念したのではないかと邪推します。今回、マイクロバンプピッチ7.6umが可能になったため、本来の狙い通りの画素ピッチで試作をしたと・・・・・・まあ本当の本当は3.8umピッチで1画素に1つマイクロバンプを配置して、FDを画素ごとに独立させたかったのだと思いますが^^;)
そして更にこのオリンパス発表センサが凄いのは、何か桁をひとつ間違えて印字されてしまったんじゃないか!?という
200万画素で10000fpsΣ(゜□゜)という脅威の読み出し速度
以前、(というかまだ発売されていませんが^^;)
キヤノンのEOS5Dsの読み出し速度が”画素数を考慮すると結構速い”という趣旨で、リンク先のエントリの後半の方で、”1秒間に読み出される画素数”という様な指標(?)を載せました。
上記に、今回のオリンパス発表センサと、その他主だったスピードマスターと思われるセンサの秒あたりの読み出し可能な画素数を付け加えたものが以下となります。
キヤノン 5Ds&5DsR
:50M × 5fps = 250M pix/s
キヤノン 1D X
:18M × 14fps = 252M pix/s
参考:4K2K30p:8M x 30fps = 249M pix/s
4K2K60p : 8M × 60fps = 498M pix/s
ニコン nikon1 J5 : 2M × 60fps = 1200M pix/s
NHK 1.3億画素センサ :133M × 60fps = 7980M pix/s
今回のOlympusセンサ: 2M × 10000fps = 20000M pix/s
もうキヤノンやニコンの誇るスピードマスター(?)なカメラたちが完全に引き立て役。
瞬間最大風速(?)だけで言うと正に桁違いの連写スピードということになります。
実製品にもし搭載されたとしても、恐らくバッファ搭載量の関係上1秒も連写は続けられないとは思いますが、それにしても・・・というか、逆に果たしてこの速さで何を撮れば良いかも・・・エンドユーザーとしては悩んでしまう連写速度ですね(^^;)
とりあえず、ミルククラウンにチャレンジしてみますか?(^^;)
いったいこの高速な読み出し速度をどうやって達成しているのか?
機会があったらまた考えてみたいと思います。
で、オリンパスのフォーサーズ機はE-M5mark2が発売されたばかり。
初代が出てからmark2が発売されるまでの間隔は約3年でした。
E-M1はオリンパスの現フラグシップですから、恐らくE-M5よりも代替わりの間隔が短くなることは無いでしょう。
また、こんなとんでも無いセンサが実用化出来たとして、下位機種に搭載したら開発&製造コストの元が取れない上にカメラの格として流石に下克上も甚だしいので、メーカー的にはその様なことはまず行わないでしょう・・・
と考えると、やはりあり得るなら次期フラグシップであるE-M1の後継機mark2への搭載ではないかと思います。
とすれば、E-M1の発売が’13年の10月ですから、うまくすれば来年'16年のphotokinaの目玉としてオリンパスがmark2を発表。年末クリスマス商戦くらいに発売・・・という流れではないでしょうか。
今年の年明けくらいにセンサがある程度目処が立ち、カメラの開発が開始され、今頃1st試作機の完成待ちというような・・・
妄想がどんどん勝手に膨らんでしまいますね(^^;)
更に気になるのは、オリンパスは自社でCMOSイメージセンサを作れる工場を持っていないはずですから、このセンサをいったいどこで作っているのか?ということ。
最近流行りの積層型センサの貼り合わせ方とは明らかに異なるこのマイクロバンプで3Dstackさせるという構成・・・
興味と謎(?)は深まるばかりです(^^)
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